諸事情あって、久しぶりの映画鑑賞。
『IT』と言えば、スティーブン・キングの最高傑作にして、アメリカでTVドラマ化された際にはピエロ恐怖症を生み、赤い風船にトラウマを発症したひとびとを量産した最恐の物語。
という知識はあったが、原作も読んでいないし、最初の映像化も見ていないので、これが初見。
結果としては、素晴らしかった。R15なのがもったいないくらいの、13歳、14歳の少年少女が見るべき、勇気と友情と成長の感動物語。ホラーなのに、見終わった後でこんなにさわやかなのは珍しい。
もちろん、いきなりスプラッタだし、腹も切られるし、腕も折れる。びっくり系の演出も多く、心臓が弱い人は見ない方がいい。かといって、最恐ピエロのペニーワイズは怖いというより気持ちが悪いだけだし、“それ”が見えても、ぜんぜん終わんないし、不良たちの方がよっぽど怖い。
これはかなり意図的にやっているのだと思うけれど、ペニーワイズは子供たちにとって一番怖いものとしてやってくる。それは壁に掛けられた絵だったり、突然やってきた生理だったり、死んだ弟のいない家だったりする。そして、その恐怖を共有できる仲間にしか、“それ”は見ることができない。
それでも、彼らは己の恐怖に立ち向かい、乗り越え、成長する。まるで、シリアスな『グーニーズ』みたいなものだ。
陰気ドモリ、過保護病弱、宗教息子、饒舌ゲーオタ、転校生デブ、貧民、DV被害少女など、スクールカーストの底辺にいる“Losers' Club”の面々が、「Welcome to the Losers' Club!」の叫びとともにペニーワイズを袋叩きにするシーンは思いのほか痛快だった。
しかし、“それ”は少年時代特有の幻想、集団幻覚、もしくは、記憶の改変と解釈することもできるように、用意周到に演出されていると思う。それ故に、あのシーンは、下水道に暮らすホームレスを少年たちが集団リンチするというシーンにも解釈できるというのが個人的にはポイントが高かった。それこそが、ホラーってもんでしょう。
で、これは第一章に過ぎなく、ラストシーンで誓いを立てたLosers' Clubのメンバーが大人になって再開してからが本番らしい。本当に怖いのはこれからなのだろう。きっと。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます