ヤマザキマザック美術館で開催中の「尾州徳川の花相撲」関連の講演会へ行ってきました。会場は美術館隣のビルの会議室ですが、ゆったりしていて机もあって80名。当日は補助椅子も入れて120名くらいの皆さんが聴きにみえました。
講師を勤められた方は、北岡明彦氏(豊田市森林課副主幹 とよた森林学校主任講師)で、この地方の自然保護団体ではちょっと名の知れた方です。肩書きから推察するとお役人みたいな人が現れると思いきゃ、明るい空色のバンダナを頭に巻いた粋な格好で登壇されました。
講演の中で記憶に残っているものは次のとおりです。
① 尾張は日本の植物の縮図である。国内では5~7千種の植物があるが、この地方には約1500種程度あると考えられる。海抜0m~千m程度までの種類が分布している。また、これは英国中の種類数より多い。
② 尾張には江戸時代から植物学が盛んで、水谷豊文、伊藤圭介ら本草学の大家がいた。彼らはシーボルトとも交流があり、このルートで海外にも情報が伝わった。彼らはシーボルトの弟子という見方もあるが、むしろ共同研究者であると考えている。なぜならシーボルトは日本国内を自由に歩き回ることは禁じられており、彼が通行を許された海道筋は植物は多くは無かったから、彼が直接情報(標本)を集めることは不可能であった。
③ 明治以降は学問の中心が東京に移り、尾張は空白地帯となった。
④ 尾張ゆかりの植物は、なんと云っても徳川家の紋にもなっている葵である。紋は三つ葉葵であるがこれは実在しない。下賀茂神社の御神紋になった双葉葵をもとに縁起の良い三つ葉にデザインしたものであろう。
⑤ 愛知県には3種類のカンアオイが分布している。フタバカンアオイ、ヒメカンアオイ、スズカカンアオイである。フタバカンアオイは三河に少し分布するのみである。
⑥ ヒメカンアオイは矢作川の東に多く分布しており、西側には矢作川に近いところに若干あるのみである。スズカカンアオイは西に分布しており、東側にはまったく無い。
⑦ カンアオイの種子は蟻が運んで拡散するので(アリ散布型種子)、矢作川が形成される前の分布をそのまま保っていると思われ、地球の歴史と関係あることを如術に語っている。
⑧ スズカカンアオイは三重県の藤原岳で発見されこの名前が付いたが、今は藤原には無い。東海地方の固有種である。
等々大変興味ある話を伺うことができました。
講演会後、美術館へ寄りカンアオイの展示のところへもう一度行ってみました。詳細は手持ち撮影では、はっきりはしませんので、葵の紋を目印に展覧会場でご覧になって下さい。
今回の展覧会は撮影OKのところが多くありました。エミールガレの作品と彼が見たかもしれない古文書と並べた展示もあります。