> 『知識人の戦争協力と、国学(神ながらの道)』
> 日本の戦前の一般的な知識人においては『実生活』と頭の中の外来(おおむね西欧)の『思想』とは一致しておらず離れていて、基本的に無関係に近い薄い間柄だった。
そうですね。実生活は現実の内容です。思想は非現実 (考え) の内容です。
現実の内容は頭の外にある。それは見ることができる。見ればわかる。考える必要はない。正解は一つしかない。これは楽ちんである。
非現実・考えの内容は頭の中にある。これは見ることができない。ただの話である。話の内容を知るには、文法に従って文章を逐一理解しなくてはならない。これは骨の折れる仕事である。だから、日本人は通常理解をしない。その代わりに忖度 (推察) をしている。
理解と忖度は似て非なるものであるが故に要注意である。忖度は聞き手・読者の勝手な解釈による内容であって、話し手・筆者には何の責任もない。だからその内容に食い違いがあっても議論にならない。
この場合、現実直視は文章を理解することである。それが無ければ、聞き手・読者の内容は、空想・妄想の類になる。現実直視になっていないことを忖度の主に告げると、’だって、私は本当にそう思ったのであるから、仕方がないではないか’ と猛反発をする。だから、現実無視は直らない。盲目の判断は避けられない。
>そのため思想は、危機的な場合には、実生活の側からの要求に簡単に屈服してしまう。
空想・妄想は屈服すべきですね。
>その実生活とは、直接には小集団の内側の束縛(いわゆる絆?)を意味していたし、間接には一切の価値を超越し科学的な分析の対象であることをやめた国家・日本の精神的束縛(国家の絆?)を内容とするものであった。
日本語には、階称・言葉遣いというものがある。だから、上と見るか・下と見るかの世俗的上下判断は欠かせない。上下判断を繰り返していれば、序列判断にも到達する。家庭の中でも社会の中でも序列的束縛は有効である。序列制度はわが国の国体である。
> 実生活と離れた知識人の思想は、実生活に対して超越的な価値概念も、真理概念も作り出すには至らなかった。
空想・妄想は真理概念を作り出しませんね。お陰様で、わが国は漫画・アニメの大国になりました。
> 先進的な外来思想は頭だけで理解されていたので、心情や生活感覚とは無縁の二本立て構造だったので当時の民族の伝統的文化とは切り離され、当時の知識人と一般大衆とを切りはなしていた。
そうですね。外来思想は、暗記物の種本となりましたね。この種本を基にして日本人は序列順位の争いに利用した。
私は ‘哲学とは何ですか’ と日本人のインテリから何度となくしつもんを受けた。’哲学とは考え’ のことである。各人に哲学は必要である。Everyone needs a philosophy. この要望に応えて、英米には高等教育がある。
非現実 (考え) の内容は、時制のある文章になる。時制のある文章は、それぞれに独立した非現実の三世界 (過去・現在・未来) に分れて内容になる。これは、世界観 (world view) と呼ばれるものである。
子供の頃は、各人の世界観は白紙の状態である。が、人生経験を積んでゆく過程で、その白紙の部分を自分自身の考えで少しづつ埋めて行くようになる。かくして、人間は ‘考える人’ になる。思春期になると言語能力が飛躍的に発達を遂げるので、この時期が高等教育の開始時期となる。だから、彼らの高等教育の目的は、自己の哲学を作る技術を習得する為にある。これに成功すれば、学生は学士 (bachelor) となり、修士 (master) となり、その果ては博士 (doctor) となる。これは知的作業であるから大変な仕事であって校内で遊んでなどいられない。自己の世界観に従って自己の意見を述べられたら一人前である。自己の世界観を基準にして現実の内容を批判すれば、その人は批判精神 (critical thinking) の持ち主となる。
日本語の文法には時制がなく、日本人には世界観がない。だから、マスコミの編集者にも批判精神が無く、常に為政者の発言を垂れ流している。マスコミはどんぐりの背比べになっていて、わが国には有力紙は存在しない。
わが国においては、インテリであっても哲学を敬遠する。政治に関する考えは政治哲学になる。無哲学の政治家は信頼を得るのが難しい。わが国の大学に在学しても非現実 (考え) の内容を文章にすることができずに遊んでばかりいたに違いない。これは、日本語のなせる業であろう。わが国においては高等教育まで自国の言語で成し遂げられる得意になる人もいるが、その内情は誤解に基づく安堵感でしかない。だから、日本語脳の持ち主は、英米に留学しても挫折することになる。
日本の大学卒業生は在学中に暗記した西洋人の哲学を受け売りして暮らしを立てることになるのだが、このような知識が自分自身にもしっくりと来ないのは当然といえば当然のことである。全ては借り物の世界だからである。
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