正書法(맞춤법)はとても複雑で,韓国語の先生でさえも完璧にマスターすることは難しい代物です。
正書法は1988年に制定されてから今まで,何回かの改正を経ています。
内容は①総則 ②字母 ③頭音法則など音に関すること ④体言と助詞,語幹と語尾,接尾辞や接頭辞など形態に関すること ⑤分かち書き ⑥その他 の6つの章と57項目,そして付録で形成されています。
各項目が数学公式のように理路整然と整理されているのでなく,例外だらけで,さらに例外の例外までがあり,実用的ではありません。
しかし正書法は,正確なコミュニケーションのための基本的な約束です。正書法に則った文はそうでない文に比べて,品格があるように見えるのは事実です。正書法を一つ間違えると,恥をかいたり冷やかされたりすることになります。
ネット上の掲示物やコメントでも,公文書や企画書でも,謝罪文や釈明書でも,さらには小説や実用書などでも,正書法をきちんと守った文には信頼感があります。
さて今回は「ハングル正書法」の中で一番やっかいな「分かち書き(띄어쓰기)」についてみていきましょう。この分かち書き自体,띄어쓰기だったか,띄어∨쓰기だったか分からなくなってしまった方も多いと思います(正解は띄어쓰기です)。
最近は新聞も雑誌もほとんどハングル表記ですから,文章の意味を正確に伝えるためには띄어쓰기が必要です。つまり띄어쓰기の目的は,ハングルだけで書かれた文章を間違えずに読むことにあります。
ちょっと次の文を見てみましょう。
・아기다리고기다리던소풍.
どうですか。このように書かれたら何の意味だかわからないですよね。아기다리 고기다리 던소풍……アギダリ,ゴギダリ,ドンソプン? いやいや,そうじゃなくて아기 다리 고기 다리 더소 풍では?
正解は아∨기다리고∨기다리던∨소풍です。「あぁ待ちに待った遠足」という意味です。きちんと分かち書きをすると,意味がはっきりします。
さて,もう1つ,分かち書きについて学ぶ有名な文章があります。みなさん知ってますか。
・아버지가방에들어가셨다.
띄어쓰기を間違えると変な文章になってしまいます。‘아버지∨가방에∨들어가셨다.’と書くとお父さんが「カバンに入って」しまいます。 ‘아버지가∨방에∨들어가셨다.’と書かなければなりません。
だいぶ昔のことになりますが,アポロ8号が月に着陸したとき,韓国のある新聞の見出しが띄어쓰기のミスでとんでもない意味になってしまい,物義を醸したそうです(「誤字의世界」朴甲千 著 杏林出版社より)。
‘아폴로, 착륙후보지 발견’というのが,本来新聞に載るべき文章でした。意味は「アポロ,着陸候補地発見」です。しかし早刷りには‘아폴로, 착륙후 보지 발견’と言う見出しが大きく躍っていたそうです。
「阿蘇国際マラソン」も「青梅国際女子マラソン」も,実況担当のアナウンサーの息の切り方でニヤニヤものになってしまいます。もし日本語がひらがなやカタカナだけの表記だったらと思うと,ぞっとしますね。
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