池袋の最終フェア本もこれで読み納め。
どれも興味深く、新たな視点を得ることができました。書店員の底力も感じました。
プラテーロとは、ロバに与えられた名前。スペイン語の銀、プラータから。プラテーロは、お月様の色をしている。
作者のヒメネスが、プラテーロとともに歩みながら、プラテーロに語りかける言葉でこの本はできています。
今まで読んだどの本とも違った。
もちろん、どの本も違うはずなのですが。
日常のことしか書いていないから読みやすいはずなのに、なかなかどうしてすんなりとは読めない。
詩人特有の言い回しや比喩が、すとんと身に落ちないもどかしさも覚えた。
通勤途中に読むには向いていないのかもしれない。
もどかしさは、ロバが身近にいないせいかもしれない。
印象に残っているのは、ヒメネスが童話を嫌っていたということ。
多くの動物たちが語り始めるのを好んでいなかった。
なぜなら、動物には動物の言葉があると信じていたから。
人間が動物に勝手に語らせることは動物に失礼だとわかっていた。
わかっていながら、プラテーロに語りかけずにはいられなかった。
言葉はわからずとも、言葉とともにある心の動き、愛情は伝わっていた。
私は通勤途中に、相変わらず猫とミルクを分け合っていますが、あの静かな幸福感って何なのでしょう。
人間以外の生き物と確かに共存している感覚。互いが互いを必要とし、認めている関係。
魂が呼吸した時間を、一つ一つ言葉にしていった本と言えばいいでしょうか。
たぶん、一度読んだだけでは、この本のよさはわからない。
今日の一日が、かけがえのない一日だと気づくのに、何十年もかかるのと同じように。
J.R.ヒメネス著/伊藤武好、伊藤百合子訳/長新太絵/理論社/2011
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