ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

Blues Deluxe / Various Artists

2019年05月09日 | ブルーズ

Blues Deluxe / Various Artists (1996)

ずっと前に中古店の棚にあったLPサイズ大で分厚い大きなボックスを手に取って、どんな内容だろうと気になっていたブルーズの10枚組ボックスセット。ボックス外側には内容が明記されておらず購入を見送っていた。後から調べても内容がなかなか分からなかったのは一般流通品ではなく通販専用の商品だからのようだ(ちなみに当時の値段は¥1,980×15回払いだとか)。ずっと忘れていたが、ある日オークションに出品されているのを見つけ、入札しておいたら安価で落札出来た。箱を開けるとテーマ別に分けられたCDが10枚、それにとても詳しい解説書が付いている。監修・選曲は憂歌団の内田勘太郎氏だ(中の写真が若い)。 

通販だと侮るなかれ(いや通販だから出来た?)レーベルを超えた凄い内容で、CDはそれぞれに専用ジャケットと歌詞(対訳付)が付いて、レーベル面には有名レーベルのレコードレーベルがデザインされているなど、手が込んでいる。膨大な量の音源は有名アーティストだと何曲か収録されており、ブルーズとひと言で言ってもその音楽スタイルは多岐に渡る。ちなみにテーマごとに収録されているアーティストは以下の通り。

01.<CHICAGO BOUND> ブルース・バンドの黄金時代

  • Muddy Waters
  • Little Walter
  • Jimmy Rogers
  • Chuck Berry

02.<DOWN AND OUT> ディープ・サウスの咆哮

  • Howlin' Wolf
  • Sonny Boy Williamson
  • John Brim
  • Elmore James

03.<AFTER HOURS HOP> ブギからシャッフルへ

  • T-Bone Walker
  • Amos Milburn
  • Charles Brown
  • Pee Wee Crayton
  • Smily Lewis
  • Fats Domino
  • Dave Bartholomew

04.<TALKING VOICE> カントリーブルースの遺産

  • Robert Pete Williams
  • Fully Lewis
  • Snooks Eaglin
  • Baby Tate
  • Sidney Maiden
  • Lonnie Johnson
  • Blind Gary Daves

05.<STOMPIN' AND JUMPIN> 西海岸ブルースバラエティ

  • Frankie Lee Sims
  • Clifton CHenier
  • Joe Liggins
  • Roy Milton
  • Percy Mayfield
  • Dan And Dewey
  • Guitar Slim
  • Roosevelt Sykes
  • Mercy Dee

06.<WESTSIDE SHUFFLE> シカゴサウンドリヴュー

  • Sleepy John Estes
  • Big Joe Williams
  • Sunnyland Slim
  • JB Lenoir
  • Otis Rush
  • Jimmy Johnson
  • Eddy Clearwater
  • Robert Jr. Lockwood
  • Carey Bell
  • Junior Wells
  • Bonnie Lee
  • Magic Sam

077.<WILD BEAT TOUCH BOOGIE> テキサスギタリスト列伝

  • Ike Turner
  • Johnny Guitar Watson
  • Lowell Fulson
  • Smokey Hogg
  • Hadda Brooks

08.<GREAT TRACKS> ブルースの巨人たち

  • Elmore James
  • John Lee Hooker
  • Lightnin' Hopkins
  • BB King

09.<LIVING LEGEND> 甦る伝説のブルース

  • Mississippi John Hurt
  • Skip James
  • Robert Pete Williams
  • Bukka White
  • Reverend Pearly Brown
  • Son House
  • Mississippi Fres McDowell
  • Jesse Fuller
  • Big Bill Broonzy

10.<GOOD TIMES> モダンブルースの夜明け

  • Gatemouth Brown
  • Louis Jordan
  • Junior Parker
  • Big Mama Thornton
  • Bobby Bland
  • Johnny Ace

いや凄いナ、コレ。ブルースインターアクションズの製作なので内容はお墨付きだが、これだけバラエティに富んでいて、しっかりとした情報(←これ重要)に加えてヴォリュームもあるブルーズの編集盤は他に見当たらない。加えてLPサイズ140ページの解説書にはブルーズの用語集から、名盤紹介、影響を受けた日本のアーティストへのインタビュー、独自のエッセイ、内田氏らによる全曲解説、アーティストの来日履歴などと、ブルーズの土地と文化から遠く離れた日本で編纂されたとは思えない程の微に入り細に穿つ詳しい内容。日本人のブルーズ好きは有名で、シカゴなどのブルーズ・クラブは黒人と日本人ばかりなんて聞いたこともあるが、それにしてもこれだけの内容の製品は本国アメリカでもなかなかお目にかかれないだろう。痛快なのは各曲の日本語訳。この一部に口語の大阪弁や九州弁を当てはめているものがあるのだが、これが何とも面白い。例えば有名なマディ(Muddy Waters)の「Hoochie Cooche Man」は、

占い師のおばちゃんがお袋にこうゆうた/わしが生まれる間際にや/「この子、男の子やわ/手ぇつけられへんようなるよ/かわいい女の子/キャーキャー言わせるわ/どないなってんねんて/世界中大騒ぎや」/わしや/みんな、わしやでぇ/わしが噂のフーチクーチー・マンや/みんな知ってるやろ

同じくマディの「Got My Mojo Workin'」は、

例のおまじない使ってんけど/なんでや、効けへんわ/わし、使ったのに/全然効けへんやんけ/モノにしたくてたまらへんのに/どうしたらええんやろか

~なんていう調子。大抵ブルーズの日本語訳詞では「~なのさ」とか「~しておくれよ」なんていうちょっと気取った清志郎が言いそうな言葉が使われていることがほとんどだが、この泥臭い感じがいかにもハマっている。もちろん例えばシカゴのマディに大阪弁(訛り)は妥当か?とか、言葉遣いはこれでいいのか?なんて議論の余地はあるだろうが、比喩や隠喩の多いブルーズの歌詞がこれほどすんなりと日本人の頭に入ってくる試みは快挙と言っていい。こういう手があったか…。ちなみに訳詞を担当しているのは個人ではなくグループ(マックスカンパニー)のよう。

製作にどれだけの期間を要したのか知らないが、通販オンリーだったというのがもったいないくらいの素晴らしい内容。CDの紙ジャケットの世界を見ても分かるように、こういうマニアックな追及の仕方は日本人のお家芸だが、アジアの片隅で言語を異にする日本人がこれだけブルーズの理解を深めていると知ったら本場のブルーズメンもびっくりするだろう。

オークションにて購入(¥3,058)

  • 製作:ブルースインターアクションズ
  • 発行:日本音楽教育センター
  • 選曲・監修:憂歌団 内田勘太郎
  • ブルース完全解説書(140ページ)付き

 

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いと忠 @名古屋市中区・丸の内

2019年05月09日 | 名古屋(中区)

オフィスビルの立ち並ぶ名古屋の丸の内地区。サラリーマンが多いので喫茶店も多いが、最近はチェーン店、あるいはコンサル仕込みの店舗が増えて、いわゆる個人店は少なくなってきている。歴史のある店となると尚更。こちら「珈琲館・いと忠」はビルの間に建つその渋い店構えで異彩を放っていた。創業がいつ頃かは知らないが、店名や佇まいで”昭和”だろうと想像がつく。店に入るとベロアのソファー、シャンデリア、暖炉を模したインテリア、黒い柱に漆喰のヨーロッパ調と、時を経たクラシックな空間には迫力がある。カウンターの中には女将さん、給仕は女性が1人。食べ物はトーストとサンドイッチぐらいしかない純喫茶。窓際の席に腰を下ろし「レギュラーコーヒー」をお願いした。店のあれこれを見回しながら出来上がりを待つ。

店内には骨董品の大型スピーカーからピアノ協奏曲が流れていた。窓の横の通路が中庭風になっているのも趣があり、窓の錠は真鍮の捻締り式(うちも昔はこれだったなァ)。煙草の販売をしているところや、看板の「サンドウヰッチ」の表記が時代を感じさせる。もちろん黒電話が健在。なぜか金剛力士像やこけしが置いてあって統一感に欠けるのも昭和的(笑)。

しばらくして洒落たカップとソーサーでコーヒーが運ばれた。口当たりはすっきりとしていて穏やかな苦味のある味。見飽きることがない店内の佇まいを愛でながら、ゆっくりとコーヒーを啜った。途中で勝手知ったるといった感じの背広の老紳士が入って来て「今日はちょっと暖かいね。」かなんか言いながら、”いつもの”を注文する風景。コンセプトありきで急造したような店では感じられないどっしりとした空気を味わった。次は”サンドウヰッチ”も付けてみようっと。(勘定は¥350)

 

 

珈琲館 いと忠

愛知県名古屋市中区錦1-6-35

 

( 名古屋 なごや 丸の内 まるのうち 伏見 ふしみ いとちゅう コーヒー 喫茶 純喫茶 サンドウイッチ サンドイッチ マントルピース )

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