癌進行のあまりの早さと 数種類の癌(未分化癌・粘液癌等)の中に超悪性のスキルス胃癌(印環細胞癌)が入っている事などで
今年の夏は まず越せないだろうと思っていました。
ですので前回の「友人へのメール」を更新した頃は かなり 切羽詰まっていて
我武者らに死を覚悟し 葬儀屋を決め 遺影を選び
死後の連絡先と 残された作品の扱い等を相方に頼んだりして それはもう 悲壮な状態でした。
ところが どうせ気休めだろうと高をくくっていた
抗がん剤(TS-1とドセタキセルの組み合わせ)が想像以上に効果を上げて
現在は拍子抜けする程 小康状態を保っています。
腹膜内の癌細胞数を表す 腫瘍マーカー(CA19-9)も1700から150まで減りました。
(正常値は37以下)
同じく CEA は4(正常値は5以下)
吐き気等の 副作用が少なかったせいか 食欲も少しづつ戻って 体重も1~2kg増え
この分でいくと年内は持つのではないか あるいは来年の桜も見られるのでは と 欲を出すまでになりました。
しかし 私の癌はそんなに甘くはないようです.....
事実 先日中間検査の後に担当医から 完治はないでしょうと 正直すぎる言葉を貰いました……
(この先生 初回の面談での会話から すべてを話そうと決めたようで 何でも話してくれます。
私も気に入っていますし 信頼しています)
で この小康状態がチャンス この間に作品をできるだけ創ろうと決心し 今までに2点完成させました。
体力がまだ完全に回復していないので 小品ですが
今回はこの作品を見ていただこうと思います。
まず1点目
相方が家の近くで摘んできた名前も判らない野の花を一輪挿しに挿したものです。
「野の花」絵サイズ 156×126mm 紙サイズ 210×180mm ED 50部
この作品には和歌を付けてみました。
病得て 常には見過ごす野の花が 目にも新たに 見ゆるこの頃
2作目は これも我が家の近くに咲いていた「月見草」です。
この花 暗くなると咲き始めて 朝明るくなると枯れてしまいます。
一晩だけの命です。
次の晩は別の花達が咲き競います。
その儚さと可憐さに惹かれました。
「月見草」 絵サイズ 146×114mm 紙サイズ 210×180mm ED 50部
こちらの作品には俳句を添えました。
振り向けば ひと夜の夢か 月見草
まぁ 辞世の句と 気取ってみました。
何も考えず 脅えず 制作に没頭し 和歌や俳句を捻るのが 今の私にとって 一番の薬のようです。
上記以外にも 小品1点と 大判1点の構想ができているので
これらを 何とか完成まで持って行きたいと思っています。
致命的な転移が始まらないよう祈るのみです。
コメントありがとうございます。
今回紹介した2点は 確かに気負いとか
意気込みとか まったくないまま制作しました。素直に今の気分が出た作品になったと自分でも思います。
この心境はやはり病気のせいですかね。
制作できる楽しみをしみじみ感じるのは
幸せと思って
また 励みたいと思います。
「野の花」いいですね。作品と啓さんとの間にあったいろいろなものが無くなって,シンプルな回路になったように感じました。
次の作品も楽しみにしています。