経営コンサルタントへの道

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

2019-06-25 12:03:00 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社』

(小室淑恵 著 毎日新聞出版)

■      「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を(はじめに)

 紹介本は「働き方改革」という題名で、「働き方改革コンサルタント」である著者が、自身のコンサルタント体験を記した本です。

 4月に働き方改革法の施行が始まったことから、「働き方改革」というテーマが社会的に盛り上がっており、紹介本もその一環と言えます。しかし、著者がこの紹介本を通しての主張は、『重要な経営課題は経営改革・意識改革であり、「働き方改革」のテーマが盛り上がる前も、熱が冷めた後も、常に企業経営に必須の課題』だと述べています。

 そのことを主張するために、著者は『「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を』と述べているのです。その様な意味で、紹介本は「働き方改革」についての実践論を通して、企業経営における経営改革・意識改革の必要性と、方法論を展開しているのです。つまり、「働き方改革」という狭い領域ではなく、幅広くそして新しい時代に何をすべきかと言う事を、紹介本の改革手法並びに具体的な企業の事例から読み取り、企業経営の大きなヒントにして欲しいと、著者は思っているのです。

 それでは次項で、具体的企業の事例の中から、企業経営にヒントになる事例を、ご紹介しましょう。

■      事例が示す「働き方改革」は「経営改革」

【企業文化、ブランド、業績、社員の幸せ感などに好結果の出た中小企業M・O社】

 M・O社は2015年に三重県が推進する「ワーク・ライフ・バランス推進サポート事業(コンサルタント派遣事業)」に手を挙げた従業員58名の調剤薬局です。大阪、名古屋から1時間の三重県松坂市に本社を置く、人材・採用面で大都市圏に優位を奪われる難しい処に立地しています。

 M・O社が「推進サポート事業」を契機に、コンサルタントのサポートを得ながら、従業員4名のトライアル店舗で「推進サポート事業」の趣旨に沿った改革を始めました。4名全員でゴールイメージを決める『カエル会議(カエルには、‟仕事のやり方を「変える」“‟早く「帰る」”‟人生を「変える」”の三つの意味。著者提案の会議。)』に参加し、会議室もホワイトボードもない処方室で、分包機を机代わりにA3用紙にメンバーの意見を書き込み、立ったままで自由な意見交換をし、「全員の有給休暇100%取得」をゴールにしました。

 このゴールを実現するため、マニュアルとスキルマップを作成します。ここで面白いのは、社歴の浅い新入社員にマニュアルを作らせたのです。それは、若手が、仕事を覚え、信頼して任されることから、やる気が芽生える効果を、目論んだのでした。スキルマップを作ることで、誰が休んでも問題ないために、各自どんなスキルを補充すべきかの見える化が図られ、「全員有給休暇100%」に向けて体制が着々と出来ていったのです。

 実際に「有給休暇100%取得」が実現できた結果、トライアル店舗ではどんな変化が起こったのでしょう。有休取得率は前年比352%、医薬品売上は前年比230%となりました。このトライアル店舗の改革を経営トップが認め、「社員がプライベートを大切にし、社員の幸せを第一に考えよう」とのメッセージを全社に発信したのです。

 この取組みが全社に広がり実施されました。その結果、結婚数は2倍、出産数は2.5倍、出産による退職者ゼロとなったのです。この結果は、地域社会にも知れ渡り、2017年の新卒採用では、エントリー数が前年の33名から、約5倍の168名に増加しました。

 小さく始めた地道な「働き方改革」を機に、企業体質・文化、社員の意識、地域社会の評価など全ての点で大きな変革を果たしたのです。

【『時間外削減・生産性UPが収入減に繋がる』熱意ダウン現象を解消したM・P社】

 M・P社は首都圏や全国中核都市の大型オフィスビルや商業施設の運営・管理や工事・修繕を行う従業員1072名の会社です。物件担当をユニットとした4つのトライアルチームで取り組みをスタートさせました。著者の提案する『朝メール・夜メール(「段取りで8割が決まる」の原理を達成させるためのツール)』『カエル会議(前出)』を実施し、トライアンドエラーを重ね、チーム間のばらつきも経験しながら、最終的には、チームメンバー間の「仕事の‟見える化”‟効率化” ‟共有化と助け合い”」を通じ、時間外削減の知見を得て、その知見を全社に広げ、目標年の2016年には、計画通りの業績を達成した上で、取組みスタート時比16%の時間外削減と残業時間代8,000万円の削減の結果を出すに至りました。

 私がこの事例を採り上げたのは、残業時間が削減され、生産性が向上しても、収入・所得が減ってしまうという「熱意ダウン現象」を解決した点にあります。表面的には経営者が判断・決定したことですが、その背景にある経営者の判断を促す仕組みに注目して下さい。

 それは、著者の提案に基づき、「トップと現場がざっくばらんに意見交換する場」を設けた事でした。ここで出て来た現場の意見は『時間外を削減し生産効率を上げても、収入・所得が減少する、「熱意ダウン現象」の指摘』でした。この意見を受け入れたトップは、捻出された残業代8,000万円全額を、賞与を通じ還元したのです。さらに、新たな表彰制度を設け、熱意を持って、一定の残業時間削減と有給休暇消化を果たした部署に、賞与時に、一人当たり6万円を支給することにしたのです。これにより、時間外削減・生産性向上に取組む熱意をサポートしたのです。

【ほかにも多くの好事例】

 字数の関係上、事例紹介は二つに止めますが、他にも企業経営にヒントになる事例が掲載されています。是非紹介本を手に取り、読み取って頂ければ幸いです。

■      「働き方改革」は「経営革新」のチャンス(むすび)

 「働き方改革」というテーマは、全社・全社員に共通した課題として、誰でも参加出来るコンテンツを持っています。「人口減少・高齢化・人出不足」に前向きに対応していく「チャンス」として活用できる好テーマです。

 このテーマは、「チーム」という組織に力点を置き、従来の経営改革からパラダイムシフトした改革手法として、メンバー相互間の知の結合を図り、シナジーアップし、さらには、他の経営課題にも繋げていく事で、大きな成果を出す事が出来ます。取り組んでみませんか。

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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