けい先生のつぼにくる話

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痔の痛みに桂枝芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

2010-11-08 07:26:00 | 東洋医学全般
米人の学生に東洋医学を教えている時に、彼らの教科書の内容にないことを言うと「それちがうんじゃないでかぁ?」と言われることがあります。彼らは大変優秀でよく勉強をしているのですが、残念なことに東洋的な考えや哲学的なことをすっ飛ばして、「この薬はこの病に効くのだ!」とその薬効を限定して使用する傾向にあるからです。

もちろん彼らが「外人である」ということだからかもしれませんが、東洋医学のよいところは、「物事を限定して考えない」というところにあります。もちろん彼らは近い将来、外人の大先生方が作った漢方医学と鍼灸医学の国家試験を受けるということで、そのような勉強の仕方を限定されているということもあるでしょう。

「この漢方薬だから、この病気、このツボだからこの症状に効く」と限定をしてしまうと「カゼだからルル、頭痛だからノーシン」と同じになってしまい、東洋医学本来の創造的な展開ができなくなります。

さて、本日は桂枝芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)の使い方です。これは本来「腹痛、渋り腹」の薬として使われています。これは必ず病名を決めてから処方をする医師の使い方としてはそのとおりであります。

しかし、漢方医学的な解釈では、脾虚陰虚熱証と言う状態です。東洋的な意味合いでの脾臓はあえて「脾」とだけ書いて消化器系のコントロールタワーとされています。少し内容を狭めると胃や小腸の制御とも言えるかもしれません。

自然界にいきる人体にも陰陽の別があり、脾が虚して、陰的なもの(ここでは寒熱の寒、冷たい気といえます。)が虚してしまった状態です。そうするとそのペア関係にある陽的なもの(ここでは寒熱の熱、熱気といえます。)が勢力を得てしまって、その熱気が消化器系に入って病を起こした状態です。

ですので、この陰陽の片方である、陰が虚して起きた熱(虚熱といいます。)のために消化器系に出ている症状には何にでも使える可能性があると考えて処方をすることになります。
この方剤は、その発生した虚熱を抜くのではなく、この弱くなった「陰」のほうを補うようなメカニズムになっています。陰の状態が元に戻ろうとすることによって、虚熱が存在する理由そのものを弱めてしまうのです。


ですので、下痢にも使えるし、便秘にも使えることがあります。その延長として腹痛、渋り腹、急性腸炎などにも適応することがあります。また、こうして腹部で発生した熱が体全体に発熱を起こすこともあるので、同じ状態の体ならこの方剤を使うことが可能です。

また、この漢方方剤は痔が急に悪化して痛むときの特効薬でもあります。
先ほど「病名を限定しないのが東洋医学だ!」などと大見得を切りましたが、ある種の病気に特効薬的に作用させることができるのも漢方医学の面白いところです。

まあ、こういった矛盾を楽しんでいただければと思います。。。。。

漢方アメリカOnlineもよろしくお願い申し上げます。

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