カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

日本仏教は大乗仏教の形骸か完成か ー 仏教概論(4)

2022-10-28 14:51:05 | 神学


Ⅲ 修行生活と教団

 第3章は「修行生活と教団」と題されているが、教団論ではない。修行という出家の生活様式の話である。在家の話ではない。出家の話だ。サンガ(僧伽)は出家した修行者の集団、いわば共同体だ。

 修行についての考え方の変化が仏教の日本化を進め、現代日本の葬式仏教という特有の仏教の形態を生み出しのではないか、というのが私の仮説だ。インドでも中国でも仏教は衰退したと言われる。現代日本の仏教を葬式仏教と呼んでよいのなら、葬式仏教は形骸化した大乗仏教なのだろうか。それとも、大乗仏教は日本でこそ葬式仏教という形で一つの完成形に辿り着いたと言えるのだろうか(1)。

 修行(spiritual experience)とは何らかの宗教体験を通して自分の信仰を強めることだと考えるのなら、どの宗教にも修行のようなものは有るのだろう。だが、修行をどの程度重視するかは宗教によって異なるのではないか。

 救いや成仏は絶対者からの一方的に与えられる恩恵・恩寵であり、人間側の努力や修行は役に立たないという考え方もある。一部のプロテスタントや浄土真宗に見られる考え方だ。他方、救いや成仏には人間の側の努力や修行が必要だという考え方もある。ほとんどの宗教はそういう意味での修行の必要性は認めているだろう。

 修行には身体の修行が精神の修行につながるという考え方があるようだ。体を鍛えることが心を鍛えることになるという考え方だ。仏教ではこの考え方は「三学」と呼ばれるらしい。「戒定慧」説だ。修行とはこの三学を修めることを意味するようだ。戒定慧のには五つあって、その中でも、不淫・不飲酒は厳しい条件だ。要は、結婚するな(家族を持つな)、酒を飲むな、だ。日本仏教はこの不淫を破る(破戒)ことで定着してきたようだ。なぜ出家者(僧侶)は妻帯しても良いのか(2)。

 いろいろ議論があるようだが、結局は小乗仏教が言っていた「空」とか「識」とかいう抽象的な教義では出家した者の集まりであるサンガ(僧伽)を守れなくなったのではないか。空や識という抽象論を捨て、現実の存在をそのまま認め、受け入れてく。現実主義の立場に立つ。仏教では「諸法実相」と言うようだ。「本地垂迹説」の成立などその具体例だろう。こうして日本の大乗仏教は抽象論から現実論へ移行する。寺院はサンガの性格を失っていく。修行者(比丘/比丘尼)の形態も変わる。出家・在家の区別が曖昧になってくる(3)。仏教の日本化にはこう言う背景があるのではないか。

 これらは私の思いつきでしかないが、日本の仏教は、初期仏教の「覚り」論(真理論)を捨て、新たな出家論と修行論を作り始める。自分一人だけ救われればよい、成仏できればよい、ではなく、みんな一緒に救われましょう、浄土に行きましょう、と考えるようになる。いわば個人主義の放棄だ。日本の大乗仏教、特に密教にはこういう思想があるように思えるが、どうだろうか。

 テーマの教団については、今回の学び合いの会では、サンガ(僧伽)は建物か集団かという意味で、キリスト教の教会との比較が少し議論されただけだった。初期の出家はホームレスだった。食べ物は恵んでもらっていたのだろう。キリスト教の初期の修道者たちもホームレスだったのだろう。でも仏教のように農作業を禁じられてはいなかったようだ。また、サンガは出家修道者だけの集まりだが、教会は司祭と信徒の集まり(いわば出家と在家の集まり)だ。ではサンガはどのような歴史的展開を遂げたのだろうか。次回の議論になる。

【サンガ】

 


1 葬式仏教論では神仏混淆とか檀家制度とか廃仏毀釈とか議論されるがそれは別の議論となる。同時に今日の葬式仏教論では、都市化や高齢化の進展の中で葬式仏教すら成り立たない寺院の問題も議論されているという。コロナ禍の中で葬儀の形態は大きく変わろうとしているようだ。
2 この問いは逆になぜ出家者は、聖職者は、妻帯してはならないのか、という問いでもある。もちろん一部の浄土真宗のように妻帯を許さない宗派もあるようだ。キリスト教でもイスラム教でも事情は同じようだ。カトリックは妻帯を許さない。プロテスタントには許すところもあるという。
3 授戒の意味も曖昧になってくる。私度僧とか行者(あんじゃ)が登場し、受け入れられてくる。

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