「チャイコフスキーコンクール」
その名の通り、この世界のピアノコンクールでも、僕たちクラシック門外漢でもその名前くらは知っている、この有名コンクールの舞台裏を描いた本です。
また、そもそもピアノコンクールとはどんなもので、どんな人が出場し、その後はどうゆう道を歩むのか、といった、その道のプロだからこそ知りえる、考えうる問題を、
大変に理論的で、かつ読みやすい文章で綴った、大変に楽しい一冊でした。
ロックとクラシックと、畑は違いますが、それでもやはり同じピアノ、同じ音楽。
共通点も多々あるもので、頷くことも多く、思わず電車を降りて、ホームのベンチに腰かけて切の良いところまで読みたくなってしまうほど、のめり込めました。
ピアニスト中村紘子さんの1991年の著作なわけですが、中村さんが47歳、つまりは今の僕と同じ年の時に書かれたものなのですね。
中村さんには、かつて、僕が若い時に個人的に(まことに勝手に)思うことがあって、
実はこのようにご著書を手に取ることになるとは夢にも思わなかったのですが、
とにかく文章のリズムの良さが素晴らしく、長いセンテンスでも一気に読ませる力は、もしかしたら、ピアノの演奏と同じなのかもしれませんが、
それはさておき、語彙の豊富さは勿論のこと、適度な安心感を与えるお気に入りの言葉(だと思う)の繰り返しの妙もあり、
全体として、文筆家の方の文章としか思えないものでした。
ジャズピアニスト山下洋輔さんの本も大変に面白いのですが(中村さんの本も、山下さんの本も、全部を読んだわけではございませんが)、
山下さんの本は、ジャズピアニストの文章であることが、なんとなくわかるような気がしたりもりするのですが(ジャズの人の文章は、やはり大好きな菊池成孔さんなどもそうなのですが、やはりジャズ的リズムがあるように思いますが、いかがでしょうか)、中村さんの文章は、もし音楽の事を書いていなければ、音楽家のそれとはわからないように思うのです。
つまりは、音楽家的なひねくれよりも、文章の美しさの方が勝っているとでもいいましょうか。
内容的には、これだけ音楽の事を書いているのに「ははあ、やっぱり音楽家だなあ」と思うよりも先に、「よくこうやって、(100%良い意味で)普通に纏められるなあ」と感心することの方が多かったです。
もしかしたら、放蕩な方ではなく、我慢強い方なのかもしれませんねえ。
・・・いえ、勿論、あれだけのピアニストですから、とんでもない部分をお持ちでない訳もなく、
いたって普通、などというわけは、ゆめゆめ、ないのですけれども。
ちなみに、僕が一番好きな文章家は、向田邦子さんなのですが、
世代は向田さんよりも一世代、中村さんの方が下になるはずなのですが、ちょっと、思い出すところがあったりもしたのですよね。
昭和の良き匂いが、したのでしょうかね。
先日、本屋さんで1万円分ほど、本を購入しました。
そのほとんどが、いわゆる音楽の実用書系(理論書やテキストの類い)なのですが、一冊、読み物系の本を買いました。これがまた楽しみなのです。
また、今、並行して読んでいるエッセイも、これは音楽とはまったく関係がないのですが、だからこそ、楽しいです
本は、いいですね。
バッグにそのまま入れて持って歩くので、ボロボロになってしまうのですが、
頭の中では、ずっとピカピカしてくれていってくれることでしょう。
僕がボロボロになるまでは、ですが(笑)。
ではー。