その、例のCPのお話の続きなのですケンども。
調べましたら、CPの弦そのものは、まだ手に入るのだそうです。
考えてみれば、世界中で普及したエレクトリック・ピアノ(=電機ピアノ。“エレクトロニック”・ピアノ・・・ではなくく、あくまで“エレクトリック”。しつこいね(笑))の金字塔的な機種なわけですし、
現に、今の日本でも八神やさんや小田さんや小林さんもお使いになっていらっしゃるわけですし、
まったくメンテナンスができないということはないのですよね。
ヤマハでも、CPの弦そのものは、まだ作っているという情報がありました。
(ちなみに、CPの弦というのは、専用に開発された特殊なものなのです。
ピアノ屋さんで普通に売っている弦を買ってきても、ダメなんですよね・・・。)
ただね、CP本体となると・・・、もうこれは本当に笑い話のようですが、
つい数年前にヤマハの若い社員さんに「CP80の件で伺いたいことがあるのですが」と訊ねたら、
「・・・CP80?それは弊社の製品でしょうか?」と訊き返された、という話があります。
そのくらい、昔のものになってしまっているんですよね(勿論、その若い社員さんの勉強度合いにもよりますけれども(笑))。
また、現行品として、CP1、CP5、CP50といった機種が、
このCP80シリーズの復刻(のイメージを伴って・・・かな)として2009年に発売されておりますが、
これらは、あくまでもエレクトロニック・ピアノ(電子ピアノ)でして、弦は張ってありませんし、ハンマーアクションもありませんので、
昔のCPとは、まったく別物と考えてよいでしょう。
往年のCPからサンプリング(いってみれば“録音”)された音色は搭載されていますが、これは“音色のうちの一つ”としてです。
売りとしては、YAMAHAの“今の電子ピアノ”の音であって、あのCPの音ではないんですよね。
もっとも、“あのCPの音”をメインに持ってきても、それは、売れはしないでしょうから、誰もそんなことはしないと思います。
“あのCPの音”は、あの(古くて大きくて重たい)CPから出るからいいのであって、なぜなら、そこにはちゃんと調律師さんの手によって調律された弦が張ってあって、
その生の音を一音一音ピックアップで拾って、アンプで増幅して・・・というプロセスを踏んで、
はじめて、あのCPの音として成立するのだと思いますし、
そもそも、ちょっと特殊な音がしますので(気になる方はYoutubeなどでどうぞー)、まあ、今となっては一般向けではないんですよね。
昔は“ピアノの代替品”のような位置にいたのですが、今となっては、もはや電子ピアノにその座は奪われてしまっていると思います。
・・・でも。
やはり、小林さんも仰られているように、「弦が張ってあること」の意味は大きいんですよ。
複雑な構造を持ったハンマーで、弦を叩くアクション、そして、木製の鍵盤を伝わって伝わってくる打弦した際の振動。
低い弦なら、ブルブルといった、しっかりと重たい、周期の広い幅の振動が伝わってきますし、
高音域なら、軽やかな速い振動が伝わってきます。
電子ピアノでは、こうはいきません。
ただし、スピーカーが内臓されたCP300などでは、振動が伝わってきます。
この振動が気持ちよく、プレイにも影響するために、大きなステージであっても、内臓スピーカーをオンにしておくことすらあるのです。
その音自体は、自分にも客席にも聞こえませんが、でも、スピーカーが鳴ることで、ボディが振動し、それを指が感じることが、大切なんですよね(ただ、2つ、ないし数個程度の内臓スピーカーの振動は、一本一本が振動する生の弦の振動とは違いますが)。
微妙な話なのですが、これがとっても大切なんですよ。
当然、生ピアノにはそれがあります。アップライトでも、グランドでも。
生ピアノの気持ちよさって、音色だけじゃなくて、こういう体感的な部分も大きいと思うんですよ。
素晴らしいセンサーか何かがあって、たとえば同じ音が鳴るとしても、描かれた鍵盤を弾いたって、やっぱりあまり面白くはないわけです。
ということで、CPなのです。
手放すわけには、いかないのですよ。
でも上にも書きましたが、今、CPの音を再現、復刻したとしても、
それだけでは、ちょっと特殊すぎるのと(CPの音ってすぐわかるんですよ)、
あと、勿論これは往年の懐かしい音ではあるのですが、
この先、使っていくにあたり、せっかくだし・・・なにかこう・・・、
と考えまして(←何かしたいのね(笑))、
知り合いの調律師の方に、こう相談してみたのです。
「あのう・・・、CPに、CP専用の弦じゃない弦・・・たとえば、グランドの弦とかって張れないものなんですか?規格が違うとは思うのですが・・・」
すると。
「・・・それ、やれます。」
「えっ!!」
訊いた僕がビックリでした。まさかでしたから。
実は、過去に、その調律師さんのいらっしゃる会社で、実験的に、それをやったことがあったのだそうです。
もう、30年ほど前のことだそうでした。
「それって・・・どんな感じでしたか?どんな音でした?」
と訊きますと、
「そうですね、CPよりアタックは柔らかく、響きはブライトになりましたね」
CPの特徴の一つに、アタック(音の立ち上がりの速度)があります。
CPは、物凄くアタックが速いのです。
弾くと、「コツン!コツン!」っていう感じが、ピアノの音そのものが鳴るよりも先に感じられるようなイメージでしょうか。
実際は同時なのでしょうけれども、とにかく、アタックが速い。
それが時に、速すぎるくらい・・・だったりもするんです。
(それゆえ、CPでしかできない奏法や、CPだからこそ生まれたフレーズなんかも沢山あるのですが。)
また、CPの音色って、本来はモコモコしてるんです。そのままだと、モワーンとした感じ。
ですので、本体や外部のイコライザーなどで補正してやって、中域のモワーンを取って、
あの高音域がカリッとした音にして使うのがCPの一般的な使い方でした(エフェクターのコーラスなんかをかけるのも流行りましたねー)。
ともかく、そのグランドの弦を張ったCPは、アタック感がまろやかになり、音色はブライトになる・・・
「うわ!それは興味があります!・・・まさか、そのCP・・・もう無いですよね・・・」
「あー、そうですねえ。もう、何年も見てないですねえ・・・。ちょっと待って下さいね、確認します」
待つこと数分。
「川村さん、ありました。もう20年くらい出てないので、調律もしてませんが、まだ倉庫にありました。」
「・・・それって、弾かせて頂いてもいいですか?」
「あ、大丈夫ですよ。いつ頃いらっしゃいますか?」
「今すぐ行きます!」
ということで、その会社に向かったわけです。
誰も弾いていない、20年間倉庫に眠りっぱなしだったという、
その名も
「CP スタジオモデル」
さて、どんな音がするのでしょうか・・・・。
実はトップの写真が、それなんですよ。
長くなりましたので、
続きは、またー。
ではー。