相次ぐ「自殺」という名の無差別テロ

一時期、通行人が多い道に面したビルから飛び降り自殺を図って通行人を巻き添えにするという事例が続けて起きたことはあったけれど、これはそれ以上に、「毒ガス」を作ってまき散らすわけだから、これを「無差別テロ」と呼ばずして、何を「無差別テロ」と呼べばいいというのだろう。

都心高級ホテルで異臭＝男性が硫化水素自殺か(時事通信) - goo ニュース

２５日午後１時ごろ、東京都千代田区有楽町の高級ホテル「ザ・ペニンシュラ東京」の一室で、異臭がすると１１０番があった。東京消防庁などによると、室内にいた男性（４７）が病院に搬送され、間もなく死亡。部屋から硫化水素の反応が検出された。

　警視庁丸の内署は男性が自殺したとみて、動機を調べている。

　同消防庁やホテルによると、従業員が１０階で異臭に気付きマネジャーに連絡。部屋を開けたところ、男性が浴室であおむけに倒れていた。メモが見つかり、「硫化水素による自殺のため、入室に当たっては注意してください」と書かれていた。巻き込まれてけがをした人はいないという。　

ペニンシュラホテルもとんだ迷惑を被ったもので、この部屋はおろか、１フロア丸々、もしかすると、このフロアの上下に隣接するフロアも丸ごと閉鎖しなければならない事例だろう。ゲストだってこんな事件が起きた後にこのホテルに泊まるのは気が引けるだろうし、風評被害も相当なもので、この男性に損害賠償を請求したっておかしくはないと思える。

最近この手法で自殺を図る人が相次ぎ、先だって高知県香南市では女子中学生が市営住宅の風呂場で自殺、市営住宅を含む周囲の住宅の住民９０人近くが体調不良を訴えるなど巻き添えを食らったのは、２３日夜のこと。
今日付、つまり昨日金曜日発行の東スポの一面では、元グラビアアイドルが同じ手法で自殺を図ったと大々的に報じているなど、その勢いはとどまることを知らず、ついには薬剤師会が声明を発表する事態に。

鉄道自殺は、人々のその日一日の生活に多大な影響を与え、人通りの多い路上への飛び降り自殺は、遭遇した人はまず間違いなく何らかの形で「もらっちゃう」。
それに加えて硫化水素とは…。
ガスだから、目張りされて「ガス発生中」なんて書いていようが、誰だってそんなものを見れば開けてなんとか救出に向かおうとするのが当たり前で、目に見えない物質だけにより厄介。ドアを開ければ自分はおろか周囲の命すら危うい。そうした閉鎖的な環境を作るから、死ぬ方は一人で死ねると思っているのだろうが、巻き込まれた方はどの手法に限らずたまったものではない。ともすれば、自分一人が死ねばいいところを、見知らぬ他人をも巻き込んで、自殺を図ったつもりが殺人者に立場が豹変することだって大いにあり得るわけである。しかも、やった本人は、他人を巻き込むという意識は少しは働くのだろうが、己が殺人者になろうとも、きれいさっぱりこの世からおさらばできれば、存在がその時点で「無」になるのだから、己自身が罪に問われようと、存在すら「無」になるのであるから、本人からすればまるっきり知ったことではないのだろう。「無」は即ちゼロだから、ゼロに何を掛けてもゼロであるのと、理論は全く変わらない。
死んでいく方は、綺麗に死ねればあとは委細知ったことではないのだろうが、巻き添えを食らう方は、ともすればそのガスで一生を棒に振ることだってあるわけではないか。

こんな無差別テロが、まかり通っていいはずがないと思うのだが…。