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毒を持つカエルはなぜ自分の毒で死なないのか

2021-09-13 10:25:12 | 自然
自然界には猛毒を持つ動物はかなり多く、テトロドトキシンをもつフグなどはその典型と言えます。

本来自分の身を守るために毒を持っているのですが、その毒をうまく処理してフグを食べてしまう人間の方が一枚上手なのかもしれません。

ここではバトラコトキシン(BTX)という毒を持つヤドクガエルの話です。なおこの毒はスグロモリモズという小鳥も持っており、羽に触れただけで手に火が付いたような感覚になるようです。こういった小鳥が毒を持つというのは珍しいかもしれません。

BTXは少しでも摂取すると麻痺や死に至ることもあり、この毒が神経や脳、筋肉の細胞にある「ナトリウムチャンネル」の機能を停止させるためです。

このヤドクガエルが自分の毒のBTXで死なないのは、これに耐えられるナトリウムチャンネルを進化によって獲得したというのが有力な説でした。コブラの毒に耐えるマングースなど、この方法で毒を寄せ付けない動物の実例もあります。

しかしこの説を覆す論文がカリフォルニア大学の研究グループから発表されました。この論文はヤドクガエルがダメージをもたらす前に、致死性の毒をスポンジのように吸い取るタンパク質、「毒素スポンジ」を持つ可能性があるというものです。

なおヤドクガエルも自分で毒を生成することはなく。獲物の甲虫から毒を得ていると考えられるようです。研究グループは実験環境で、ヤドクガエルのナトリウムチャンネルの遺伝子を再現し、さまざまな種の生き物に挿入してからBTXにさらしてみました。

その結果これらの細胞はBTXに勝つことはできず、ヤドクガエルのナトリウムチャンネル自体はBTXの耐性を持たないことが分かりました。しかしさまざまな種の生きたカエルにBTXを注入すると、毒を持つカエルだけが生き延びました。

そこで研究グループは、ヤドクガエルにも毒を吸収する毒素スポンジがあると推定しています。研究グループは2019年、別の毒素であるサキシトシン(STX)からウシガエルを守る毒素スポンジを発見しています。

まだヤドクガエルの毒素スポンジは見つかっていませんが、この発見を目指しているようです。こういった自然界の毒素は歴史的に、特定のタンパク質にまとを絞り、その機能を明らかにするうえで重要な役割を果たし、さらに医薬品設計の基礎にもなっています。

例えばウシガエルの束に含まれる成分は、抗ガン作用を持つことが実験によって示されています。またテトロドトキシンは新しい麻酔薬の原料として注目されています。

現在毒を吸収する毒素スポンジというタンパク質については、詳細は分かっていませんが、毒から身体を守るシステムとして応用も期待されているようです。


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