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若いマウスの「ふん」の移植で、老いた脳が若返る

2021-09-09 10:25:30 | 健康・医療
生物が長く生きていると、どうしても避けられないのが老化という現象です。

近年老化研究は非常に盛んになり、そのいくつかをこのブログでも紹介していますが、玉石混交といった状態かもしれません。

アイルランドの大学の研究チームが、若いマウスの糞に含まれる腸内細菌叢が老いたマスの脳の認知機能や免疫機能を回復することを報告しました。

過去の研究でヒトの腸内に住む無数の微生物が、免疫や脳、組織、器官、細胞など体を構成するあらゆる要素にいかに影響するかが明らかになっています。

腸と脳は脳腸相関と呼ばれる双方向的な関連により、自律神経系や内分泌系、免疫系などを通じて互いに作用しあい宿主の健康状態を左右します。腸内細菌叢の組成は加齢に伴って変化し、その多様性も低下することが分かっています。

腸内細菌の加齢プロセスによって、脳を含む全身の炎症反応が増加します。つまり老化と炎症反応を制御する免疫プロセスには、密接なかかわりがあるようです。そこで研究チームは、腸内細菌と脳の免疫細胞であるミクログリアとの関連に着目しました。

実験では生後3〜4か月の若いマウスの糞から腸内細菌叢を採取し、それを生後19カ月から30カ月の高齢のマウスの腸に移植しました。この時コントロール群として、他の高齢のマウスから別の高齢マウスへも腸内細菌叢を移植しています。

その後マウスの記憶力や不安感、学習能力などを測定する一連の認知テストを実施しました。テストの結果、若いマウスの腸内細菌叢を移植された高齢マウスは、コントロール群よりも認知テストの結果が良くなりました。

また学習や記憶をつかさどる脳の部位である「海馬」を調べたところ、脳の認知機能や免疫機能の向上と関連している遺伝子の活動パターンや代謝の変化が見られたとしています。

研究チームは、若い腸内細菌叢の代謝活動が血液脳関門を通過し、老化した脳を若返らせる分子を生み出したのではないかと考察しています。実際老いたマウスの脳の海馬にみられた化学物質およびミクログリアの状態が、糞の移植後に若いマウスのそれに近づいていることが認められています。

今回の知見は加齢による認知機能低下を抑える手段として、腸内細菌叢の組成や多様性を最適に保つことの重要性を教えてくれました。ただ微生物の難しいところは、あくまでも菌の相互作用であり、よく言われる善玉菌を増やせばよいということではないようです。

また微生物の多くは、人工培地で増殖しないこともあり、ビフィズス菌などを除いて腸内細菌叢を人工的に作ることは難しいようです。結局善玉菌を増やすといわれている食事で対応するぐらいしかないのかもしれません。


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