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iPS細胞 最近の進展

2017-10-19 10:46:28 | 健康・医療
このところiPS細胞による医療や医薬開発などの具体的応用に成功したニュースが発表されています。

まず慶應義塾大学の研究グループが、iPS細胞から、品質が均一の大量の心筋細胞を作ることに成功したと発表しています。これは収縮機能が低下した心筋に移植し、回復を図ることが期待され、来年度にも人への応用を目指すようです。

研究グループは、酸素や二酸化炭素を通す特殊なプレートでiPS細胞を培養し、一度に約10億個の心筋細胞を作成でき、細胞の代謝が促進されたためとしています。心筋細胞に変化できなかった細胞のエネルギー源であるブドウ糖とアミノ酸を培養液から除去し、乳酸を加えることで均質な心筋細胞を作ることができました。

従来の方法ではiPS細胞から心筋細胞に変化しきれなかった細胞を取り除きながら大量培養することは難しく、変化できなかった細胞はガン化の恐れもあったようです。

また大阪大学のチームは、iPS細胞から作製した重症心臓病患者治療用の心筋シートの事業化を目指すと発表しています。また心筋シートは、患者に移植する臨床研究を来年度にも始める計画のようです。

このように実用化に向けて進んでいるのですが、すでに行われた網膜移植では何千万円という費用がかかっているようで、心筋シートもどの程度のコストがかかるのかが問題かもしれません。

次が京都大学などの研究グループの発表で、やはりヒトのiPS細胞を使って肺の中にある肺胞の細胞を効率よく作ることに成功しました。

肺胞は、肺にある小さな袋状の組織で、数億個がブドウの房のようになり酸素を取り込むなど呼吸に欠かせない役割を持っています。今回iPS細胞から肺胞の細胞になる一歩手前の細胞の段階で、特殊なタンパク質や化合物を加えて約1週間培養するなど工夫した結果、半分が肺胞の細胞に変化しました。

肺炎を起こす副作用のある薬をこの細胞に与えたところ、実際に細胞に異常が起こることを確認できたようです。この肺胞は、肺胞の細胞が減ることで起きる肺気腫などの病気の治療に応用できる可能性もあるとしていますが、当面は肺に対する薬の有効性や副作用を体外で試す方向に使用するとしています。

このようにiPS細胞から色々な組織を作ることによって、実際の患者の治療の用途や細胞を使った創薬研究への応用が進んでいるようです。この進展はiPS細胞を作るという基礎研究から、予想以上の速さで色々な方面に応用が進んでいるようです。

私はこういった方法の費用や時間という観点から、再生医療として患者に移植するより、細胞を使った薬剤の探索といった創薬研究への応用を期待しています。この細胞自身を使った探索ができれば、より早く有用な薬が見つかるような気がしています。


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