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最小ゲノムの生物を発見

2017-12-15 10:51:34 | 自然
これまで培養可能な最も小さい自立生命はマイコプラズマと思われた来ました。ゲノムの大きさは約60万塩基で(ちなみに人は30億塩基)500近い遺伝子が存在します。

17年前、マイコプラズマの遺伝子を片端からノックアウトし、自立生命の維持に必要な遺伝子は300近くまで減らせることを報告しています。300種類のタンパク質の組み合わせで自立生命が可能であり、人工生命が21世紀中に可能になるのではと期待を持たせる論文でした。

しかし今回発見された微生物は、カメノコハムシの消化管に共生している細菌の一種は、なんと最初から27万塩基のゲノムしかないという論文がエモリー大学の研究グループから発表されました。

植物を主食にしている昆虫は、固い細胞壁を壊すために様々な細菌と共生していることが多くなっています。カメノコハムシも同じで、消化管で植物を分解している共生細菌を調べるうちに、スタメラと呼ばれる細菌が存在して植物のペクチンを分解していることが分かりました。

このカメノコハムシとスタメラの共生は米国、日本、ドイツなどから採取したカメノコハムシでも確認され、ほぼ世界共通のようです。この共生関係を子孫に伝える仕組みを調べるうちに、驚くべき巧妙な仕組みがあることが分かってきました。

ペクチンは昆虫の消化管内に存在していることから。当然スタメラは消化管に存在しています、しかし次の世代は卵として産み落とされるため次の世代に伝わらないことになります。この問題を解決するためにカメノコハムシはメスの生殖器官にもスタメラを維持し、卵の周りのカプセルに閉じこめられ、次世代の消化管に住み着くことになるわけです。

そして最も驚くのが、DNA配列から明らかになったゲノムの大きさです。なんと27万塩基しかなく、遺伝子も251個しか特定できませんでした。植物の細胞壁のペクチンを分解する酵素はしっかり存在しますが、独立生命の維持に関わる遺伝子の多くを捨ててしまって、昆虫から得られる栄養分でまかなっています。

卵の中でスタメラが維持できるということは、卵からも必要な栄養分を供給していることになります。昆虫から何が栄養として供給されているかが突き止められれば、世界最小のゲノムを持つ生物の培養が可能になるかもしれません。そして培養が可能になれば、251種類の分子を分離して、もう一度人工的に組み立ててみようとする試みなされると思われます。

これがいわゆる人工生命に当たるかは微妙なところですし、251種類というのもかなり多いものですのでかなり難しい研究になりますが、こういった小さな生命から再構築するというのは面白い進展がありそうな気もします。

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