アベノミクスの誤算~円高進行で景気減速? 銀行の国債放出で高まる暴落の懸念
ビジネスジャーナル
2013年08月11日14時00分
コメント 2
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参議院選で自民党が大勝し、アベノミクスは国民の信任を得たという報道がなされています。この状況こそ、危険な状況だと言わざるを得ません。
多くの国民は、アベノミクスの不安定さと国際情勢の危険な動きを知らないまま投票所へ向かいました。選挙に勝ったことで政府・自民党の政策が正しいという結論が出たわけではありません。逆に、国民の判断が間違っていたことを思い知らされる事態が起こる可能性もあるのです。国際情勢は多くの爆弾を抱えながら推移しています。日本も間違いなくその流れの中にあります。
今回も、日本国内と海外の経済情勢に注目して、誰も気づいていない「危険な話」をいたしましょう。
●円高により、アベノミクスは“店じまい”になる 政府は認めようとしませんが、アベノミクスは「円安株高政策」です。口先介入で円安を誘導したことにより、日本政府は外国からの非難にさらされ、1ドルに対し100円を超える円安誘導は難しくなりました。そのため、一度円高に傾けば、一気に円を買う動きが高まる可能性が出てきました。
現実に、為替がドル安ユーロ安になると、安全を求めてお金が「円」に戻る動きがあります。円にも不安要素がありますが、海外と比べるとまだ安全と思われているため、このようなことが起こるのです。
今後のトレンドは「円高」であり、チャートの分析では83円という説もあるほどです。円高になれば株安となり、「円安株高政策」であるアベノミクスは“店じまい”となるでしょう。
また、今年4月4日の日銀・黒田総裁の「異次元緩和」の発表から、金利は上昇を続けています。住宅ローンや個人の借入金利の基本となる「長期プライムレート」の金利も大きく上がりました。このまま続けば、間違いなく景気は冷え込んでいきます。
日銀は事実上、金利を低く抑え続けることが不可能になっています。そのため、国や地方自治体が保有する国債に、莫大な損失「含み損」が出ることになります。さらに、金融機関や生命保険会社が保有する資産も、損害を受けることにもなります。
最近は日本の金利も外国と歩調を合わせて、一気に上昇する局面が大変多いのです。
●国内金融機関も国債を見捨て始めた
地方銀行の代表である横浜銀行の寺澤辰麿頭取は、某社のインタビューで、黒田総裁の「異次元緩和」発表前後に5年より長い満期の国債は全部売り払ったと語りました。今後も満期の長い国債の購入は慎重にすると言っています。
日本政府がこれまで野放図に国債を発行できたのは、日本の金融機関が文句を言わずに買い取っていたからです。しかし、これに反旗を翻すかのように国債を叩き売る日本の金融機関が出てきたのです。まさに革命のようなことが現実に起こっているわけです。
国債を保有する外国人も、日本国債を売る時期を虎視眈々と待っています。ジョージ・ソロスも例外ではありません。
国債はいつ暴落してもおかしくない状況ですが、政府にはほとんど危機感がありません。政府に危機感がない時が最も危険な時です。サブプライム危機やリーマンショックの時も、兆候は見えていたにもかかわらず、政府には全く危機感がありませんでした。
●アメリカ、中国が引き起こすXデー
それから、海外の危険な状況も知っておかなくてはなりません。
アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)バーナンキ議長が金融緩和縮小の発言をしたことなどにより、アメリカの投資家は世界中からお金を引き揚げています。その結果、中国、インドネシア、インド、タイ、フィリピン、ブラジル、南アメリカなどの新興国の株価や通貨が下落し、多くの国が資金繰りに困っています。これはリーマンショックや1997~98年のアジア・ロシア危機の状況にそっくりです。いつ破綻が起きてもおかしくないのです。
特に中国では、銀行間の莫大な債務不履行が表面化し、今後、経済の大混乱の引き金になりかねません。経済の大混乱は、必ず政治の混乱を引き起こすことになり、日本にも大きな影響を与えるでしょう。
アメリカ国内でも大変な事態が進行中です。
バーナンキ議長は、アメリカ当局がコントロールできない金融市場「影の金融システム」が広がっていると発言しました。ひとつは中国が抱える巨大闇金融のことですが、もうひとつは自分の国の中に抱える闇の部分です。すなわち巨大ファンドによる巨額の損失が生まれているようなのです。さらにバーナンキ議長は、今後資金調達困難な銀行が出てくると発言しています。大変な金融危機が水面下で進行しており、それが一般市民には知らされていないのです。
この金融危機には、ヨーロッパや日本も巻き込まれていく可能性が大いにあります。
参議院選の勝利により、アベノミクスの信任を得たと勘違いする政治家が増えましたが、この状況こそ危険です。世界で数多くの隠れた破綻が進行中で、国内においてもアベノミクスの足元を揺るがす事態が進んでいます。私たちはそれを忘れてはいけません。
いつの時代も、危機感を失った政治家が増えた時に、大変な事態が起こっているのですから。
(文=藤原直哉/経済アナリスト、シンクタンク藤原事務所会長)
●藤原直哉(ふじわら・なおや)
経済アナリスト。シンクタンク藤原事務所会長。特定非営利活動法人日本再生プログラム推進フォーラム理事長。1960年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁経済研究所、ソロモン・ブラザーズなどを経て独立。著書に『大震災を跳ね返せ! 日本大転換革命』(あうん)等多数。ウィズダム・スクールで『藤原直哉の最新世界経済予測』を配信中。
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◎危ない橋はこれからわたりはじめるところ、9月から危機がはじまる。これが表面にでないことこそ危ない。
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2013年08月11日14時00分
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参議院選で自民党が大勝し、アベノミクスは国民の信任を得たという報道がなされています。この状況こそ、危険な状況だと言わざるを得ません。
多くの国民は、アベノミクスの不安定さと国際情勢の危険な動きを知らないまま投票所へ向かいました。選挙に勝ったことで政府・自民党の政策が正しいという結論が出たわけではありません。逆に、国民の判断が間違っていたことを思い知らされる事態が起こる可能性もあるのです。国際情勢は多くの爆弾を抱えながら推移しています。日本も間違いなくその流れの中にあります。
今回も、日本国内と海外の経済情勢に注目して、誰も気づいていない「危険な話」をいたしましょう。
●円高により、アベノミクスは“店じまい”になる 政府は認めようとしませんが、アベノミクスは「円安株高政策」です。口先介入で円安を誘導したことにより、日本政府は外国からの非難にさらされ、1ドルに対し100円を超える円安誘導は難しくなりました。そのため、一度円高に傾けば、一気に円を買う動きが高まる可能性が出てきました。
現実に、為替がドル安ユーロ安になると、安全を求めてお金が「円」に戻る動きがあります。円にも不安要素がありますが、海外と比べるとまだ安全と思われているため、このようなことが起こるのです。
今後のトレンドは「円高」であり、チャートの分析では83円という説もあるほどです。円高になれば株安となり、「円安株高政策」であるアベノミクスは“店じまい”となるでしょう。
また、今年4月4日の日銀・黒田総裁の「異次元緩和」の発表から、金利は上昇を続けています。住宅ローンや個人の借入金利の基本となる「長期プライムレート」の金利も大きく上がりました。このまま続けば、間違いなく景気は冷え込んでいきます。
日銀は事実上、金利を低く抑え続けることが不可能になっています。そのため、国や地方自治体が保有する国債に、莫大な損失「含み損」が出ることになります。さらに、金融機関や生命保険会社が保有する資産も、損害を受けることにもなります。
最近は日本の金利も外国と歩調を合わせて、一気に上昇する局面が大変多いのです。
●国内金融機関も国債を見捨て始めた
地方銀行の代表である横浜銀行の寺澤辰麿頭取は、某社のインタビューで、黒田総裁の「異次元緩和」発表前後に5年より長い満期の国債は全部売り払ったと語りました。今後も満期の長い国債の購入は慎重にすると言っています。
日本政府がこれまで野放図に国債を発行できたのは、日本の金融機関が文句を言わずに買い取っていたからです。しかし、これに反旗を翻すかのように国債を叩き売る日本の金融機関が出てきたのです。まさに革命のようなことが現実に起こっているわけです。
国債を保有する外国人も、日本国債を売る時期を虎視眈々と待っています。ジョージ・ソロスも例外ではありません。
国債はいつ暴落してもおかしくない状況ですが、政府にはほとんど危機感がありません。政府に危機感がない時が最も危険な時です。サブプライム危機やリーマンショックの時も、兆候は見えていたにもかかわらず、政府には全く危機感がありませんでした。
●アメリカ、中国が引き起こすXデー
それから、海外の危険な状況も知っておかなくてはなりません。
アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)バーナンキ議長が金融緩和縮小の発言をしたことなどにより、アメリカの投資家は世界中からお金を引き揚げています。その結果、中国、インドネシア、インド、タイ、フィリピン、ブラジル、南アメリカなどの新興国の株価や通貨が下落し、多くの国が資金繰りに困っています。これはリーマンショックや1997~98年のアジア・ロシア危機の状況にそっくりです。いつ破綻が起きてもおかしくないのです。
特に中国では、銀行間の莫大な債務不履行が表面化し、今後、経済の大混乱の引き金になりかねません。経済の大混乱は、必ず政治の混乱を引き起こすことになり、日本にも大きな影響を与えるでしょう。
アメリカ国内でも大変な事態が進行中です。
バーナンキ議長は、アメリカ当局がコントロールできない金融市場「影の金融システム」が広がっていると発言しました。ひとつは中国が抱える巨大闇金融のことですが、もうひとつは自分の国の中に抱える闇の部分です。すなわち巨大ファンドによる巨額の損失が生まれているようなのです。さらにバーナンキ議長は、今後資金調達困難な銀行が出てくると発言しています。大変な金融危機が水面下で進行しており、それが一般市民には知らされていないのです。
この金融危機には、ヨーロッパや日本も巻き込まれていく可能性が大いにあります。
参議院選の勝利により、アベノミクスの信任を得たと勘違いする政治家が増えましたが、この状況こそ危険です。世界で数多くの隠れた破綻が進行中で、国内においてもアベノミクスの足元を揺るがす事態が進んでいます。私たちはそれを忘れてはいけません。
いつの時代も、危機感を失った政治家が増えた時に、大変な事態が起こっているのですから。
(文=藤原直哉/経済アナリスト、シンクタンク藤原事務所会長)
●藤原直哉(ふじわら・なおや)
経済アナリスト。シンクタンク藤原事務所会長。特定非営利活動法人日本再生プログラム推進フォーラム理事長。1960年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁経済研究所、ソロモン・ブラザーズなどを経て独立。著書に『大震災を跳ね返せ! 日本大転換革命』(あうん)等多数。ウィズダム・スクールで『藤原直哉の最新世界経済予測』を配信中。
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