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四人の妻 その2

ある日、宰相は 王の命令で
遠国に赴任する事になりました。



そこで 第一夫人に 

「今度、王に 翠という国の統治を任された。

 おまえも出発の準備をしておきなさい」

と話したところ、彼女は

「どうして私まで そんな遠い国に行かなくちゃならないの。

 絶対いやよ」

と けんもほろろでした。



宰相は怒って 第二夫人の部屋へ行き

「おまえを連れて行く事にした」

と言いました。

しかし、彼女も

「あなたがいなくなるのは寂しいけれど、
 私はこの国がすきなのよ。

 この部屋の窓から あなたをお見送りしますわ」

と言いました。



仕方なく、宰相は 第三夫人の部屋にむかいました。

「おまえは 一緒に行ってくれるな」

第三夫人は 悲しそうに涙をこぼしながら

「一緒に生きたいのは やまやまですが、
 私はあなたの お父様や お母様や 
 子供達の面倒をみなければなりません。

 出発の日には 城門まで お送りしますわ」

と言いました。



がっかりした宰相は、側にいた第四夫人に

「おまえも 一緒に行ってはくれないのだろうなぁ」

と言うと、

「私はあたなを心から愛しています。

 是非 お供させてください」

と答えてくれました。



かくして 宰相は 第四夫人と共に
任地に赴いたという事です。



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ここでいう「紅の国」とは この世の事、
「翠の国」とは 死後の世界の事です。



そして、第一夫人は 皆さんの身体です。

生きている時は 欲望の赴くままの所業を繰り返す私達ですが、
死んだら火葬され、肉体は消えてしまいます。



第二夫人は 皆さんの財産。

生きている時に 懸命にお金儲けに励んでも、
財産は あの世にまで 持って行けません。



第三夫人は 皆さんの家族や親戚や友達。

皆さんの死を悲しんではくれても、
一緒に死んではくれません。



では、第四夫人は?

彼女は 皆さんの心の真ん中にある 真理。

つまり<真心>で、
実は その真心を 私達は仏様と呼んでいるのです。

仏様は、この世で 皆さんが どんな事をしても、
いつも優しく寄り添ってくれています。



皆さんが死んでしまっても、
きっと天国でも極楽でも、
エルドラドでも アルカディアでも、
皆さんの信じる理想郷まで 導いてくれる事でしょう。






だから、今日の結論は、
皆さんがいつも 一番大切にしていなければならないのは
皆さんご自身の<真心>だという事です。

ご主人や思い出、まぁ、へそくりも含めて、
それを大事に思うのは、誰でもない、皆さんご自身だという事に
気付いてください。





天台宗では ≪心・仏・衆生・是三無差別≫
     (しん・ぶつ・しゅじょう、ぜさんむしゃべつ)

という言葉をよく使います。

そして、大切にしています。



「仏」というのは、<真理>、<悟り>の事です。



「衆生」というのは、<生きとし生けるもの>。

皆さんもその中の人間の一人です。



<悟りの仏様>と <迷いの私達>に 差別がない、
一緒なんだ、というは、
<仏様の心>と <皆さんの心>が結ばれているから。

同じだからなのです。





どうか皆さん、 
ご自分の<真心>を
いじめないで、
大切にしてください。



今日は、ここまで!


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