弁証法とは、対話をモデルとした思考方法で、対立物を統一する技術である。これが複合論の核心である。
わたしは複合論を「あれとこれと」と特徴づけている。これは、ヘーゲル弁証法の「あれもこれも」とキルケゴールの弁証法の[あれかこれか]の「間」に位置づけているものである。
先日、『ひらがな思考術』(関沢英彦著 ポプラ社 2005年)を読む機会があった。「ひらがなで考えてみないか」と勧めている本である。「あれとこれと」に続けて、新しい弁証法の理論(複合論)を「ひらがな」で表現してみようと思った。
複合論は、共時的な構造と通時的な構造をもっている。どちらも、複素数をモデルにして、アルファベットで表現している。
弁証法の共時的な構造とは、対話をモデルとした思考方法を表現したものである。「二個の主体」「媒介性と相補性」など中埜肇が対話の特徴としてあげた要素をアルファベットと矢印で表示し、選ばれたふたつの「論理的なもの」の自己表出と指示表出(中央にある bi + a と c + di)から、混成モメント(両側の a + di と c + bi) が形成される構造を表現している。
c | ← | bi | + | a | → | di |
+ | ↑ | ↓ | + | |||
bi | ← | c | + | di | → | a |
弁証法の共時的構造は、ひらがなで、「ひらいて、むすんで」とあらわすことができる。
他方、通時的な構造とは、認識における対立物の統一を表したものである。選択・混成・統一という三段階を表している。いわゆる正反合の図式に対置している構造である。A =a+bi と A' =c+di を、複素数の掛け算をモデルにして、B=x+yi として複合する過程を表現している。
1(選択) | A =a+bi |
A' =c+di | |
2(混成) | A×A' =(a+bi)×(c+di) |
≒(a+di)×(c+bi) | |
3(統一) | =(ac-bd)+(ab+cd)i |
=x+yi | |
=B |
弁証法の通時的構造は、「ふたつを、ひとつに」とあらわすことができる。
複合論をひらがなで表現すれば、次のようになる。
あれとこれと、
ひらいて、むすんで、
ふたつを、ひとつに、
つなぐわざ。
ひらがな弁証法。もういちど、口ずさんでみよう。
ひらがな弁証法
あれとこれと、
ひらいて、むすんで、
ふたつを、ひとつに、
つなぐわざ。