「弁証法試論」の補論 14として、「1905年における光の粒子性と波動性について」をまとめた。
目次は次のようになっている。
はじめに
1 光量子の運動学 vs 電磁場=エーテルの運動学
2 エーテル概念の変化
3 下向的分析と上向的総合
4 光量子論と特殊相対性理論の関係
5 世紀交代期における光
6 アプリオリな綜合
7 1905年における光の粒子性と波動性
8 もうひとつの「光速度一定の原理」の意味
相対性理論の成立をめぐる武谷三男と広重徹の論争の止揚をめざす試みである。
1905年の時点で、光に粒子と波の二重性を見ることができる。光量子と光速度一定の原理を結びつけることによって、光を粒子と波に二重化できるのである。この光像はアインシュタインが意識的に描こうとしたものではない。アインシュタインが無意識のうちに捉えていたものである。この像は、相対論成立をめぐる武谷三男の見解と広重徹の見解を止揚する試みのなかから生まれてきたものである。光量子と対(ペア)の光速度一定の原理は「運動学」の基礎ではなく、存在の二重性(粒子性と波動性)の基礎という意味をもっている。