5 1/√(με)とes/emの関係
あとがき
5 1/√(με)とes/emの関係
マクスウェルが1/√(εμ)の速さを推論するとき、参考にしたのはes/emの比だった。それは速さの次元をもっていたからである。そして、1/√(εμ)とes/emは比例定数k1k2 k3を媒介して関連していたからである。
1/√(εμ)は[k11/2k21/2k3-1LT-1 ]である。他方、es/emは[k1-1/2k2-1/2k3LT-1]である。
1/√(εμ)は速さの次元をもち、大きさk11/2k21/2k3-1である。es/emは速さの次元をもち、大きさk1-1/2k2-1/2k3である。
1/√(εμ)とes/emは同じ速さの次元をもつ。しかし、大きさは同じではない。1/√(εμ)の大きさはes/emの逆数em/esと同じになるのである。マクスウェルはes/emの比を参考にしたが、速さの次元と大きさを切り離して参考にしたのである。
木幡重雄はQ/Qm=cと考え(Q/Qmはes/emのことである)、次のように述べている。「この比の値は、本論文では種々の電流の単位で考察されているが、現代的単位に換算した結果はc=3.11×108 m/secとなる。当時の実験装置を考慮すると、このように光速に近い値が得られたということに感心せざるを得ない。」あるいは「WeberとKohlrauschは、同じ電気量を静電単位で測定した値esと電磁単位で測定した値emとの比を求め、その値が光速になることを知った。」
これはまちがっている。Q/Qmの値は1/cである。しかし、Q/Qm=1/cとすると、こんどは次元が合わなくなる。ちなみにcの文字は、ラテン語celeritas(speedの意味)に由来するという。
1/√(εμ)=es/em=c これは速さの次元としての等式である。
1/√(εμ)=em/es=c これは速さの大きさとしての等式である。
マクスウェルは1875年の「エーテル」という記事の中で、電磁波の伝搬速度について次のように述べている。
(引用はじめ)
この速度の計算のためのデータは、電磁気単位系を静電単位系と比較するために行なわれた種々の実験によって提供されている。
The data for making the calculation are furnished by the experiments made in order to compare the electromagnetic with the electrostatic system of units.
(引用おわり)
ここでは電磁気単位系(the electromagnetic system of units) が「比べる量」で、静電単位系(the electrostatic system of units)が「もとになる量」(基準)であることが明白である。マクスウェルはem/es=cとみていることがわかる。
1/√(εμ)=cを導くとき、マクスウェルは静電単位と電磁単位の比(es/em)をいわば止揚したのである。止めたのは大きさである。揚げたのは次元である。
マクスウェルは変位電流を仮定し、電気力線と磁力線を真空中に描いた。εとμ は複合され、電磁波として真空中を伝播する。電磁波は、同じように真空中を伝播する光と関連づけられる。1/√(εμ)=vは1/√(εμ)=cとなったのである。
あとがき
5 1/√(με)とes/emの関係
マクスウェルが1/√(εμ)の速さを推論するとき、参考にしたのはes/emの比だった。それは速さの次元をもっていたからである。そして、1/√(εμ)とes/emは比例定数k1k2 k3を媒介して関連していたからである。
1/√(εμ)は[k11/2k21/2k3-1LT-1 ]である。他方、es/emは[k1-1/2k2-1/2k3LT-1]である。
1/√(εμ)は速さの次元をもち、大きさk11/2k21/2k3-1である。es/emは速さの次元をもち、大きさk1-1/2k2-1/2k3である。
1/√(εμ)とes/emは同じ速さの次元をもつ。しかし、大きさは同じではない。1/√(εμ)の大きさはes/emの逆数em/esと同じになるのである。マクスウェルはes/emの比を参考にしたが、速さの次元と大きさを切り離して参考にしたのである。
木幡重雄はQ/Qm=cと考え(Q/Qmはes/emのことである)、次のように述べている。「この比の値は、本論文では種々の電流の単位で考察されているが、現代的単位に換算した結果はc=3.11×108 m/secとなる。当時の実験装置を考慮すると、このように光速に近い値が得られたということに感心せざるを得ない。」あるいは「WeberとKohlrauschは、同じ電気量を静電単位で測定した値esと電磁単位で測定した値emとの比を求め、その値が光速になることを知った。」
これはまちがっている。Q/Qmの値は1/cである。しかし、Q/Qm=1/cとすると、こんどは次元が合わなくなる。ちなみにcの文字は、ラテン語celeritas(speedの意味)に由来するという。
1/√(εμ)=es/em=c これは速さの次元としての等式である。
1/√(εμ)=em/es=c これは速さの大きさとしての等式である。
マクスウェルは1875年の「エーテル」という記事の中で、電磁波の伝搬速度について次のように述べている。
(引用はじめ)
この速度の計算のためのデータは、電磁気単位系を静電単位系と比較するために行なわれた種々の実験によって提供されている。
The data for making the calculation are furnished by the experiments made in order to compare the electromagnetic with the electrostatic system of units.
(引用おわり)
ここでは電磁気単位系(the electromagnetic system of units) が「比べる量」で、静電単位系(the electrostatic system of units)が「もとになる量」(基準)であることが明白である。マクスウェルはem/es=cとみていることがわかる。
1/√(εμ)=cを導くとき、マクスウェルは静電単位と電磁単位の比(es/em)をいわば止揚したのである。止めたのは大きさである。揚げたのは次元である。
マクスウェルは変位電流を仮定し、電気力線と磁力線を真空中に描いた。εとμ は複合され、電磁波として真空中を伝播する。電磁波は、同じように真空中を伝播する光と関連づけられる。1/√(εμ)=vは1/√(εμ)=cとなったのである。