対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

マクスウェルの間違い

2016-01-28 | εとμの複合
木幡重雄はes/em=cと考えていた(『電磁気の単位はこうして作られた』)。いいかえればes/emに速度の大きさと次元を見ていた。この間違いを指摘するために、「エーテル」(1875年)を取り上げた。そこでマクスウェルは速度の大きさをem/esに見ていた。しかしマクスウェルはem/esに速度の次元も見ていた可能性がある。いいかえればマクスウェルはem/es=cと考えていた可能性がある。

マクスウェルは、静電単位系の電気量は「長さの単位と力の単位の平方根に比例して変わる」([LF1/2])こと、他方、電磁単位系の電気量は「時間の単位と力の単位の平方根に比例して変わる」([TF1/2])ことを指摘した後、次のように述べているのである。
(引用はじめ)
したがって電磁単位の静電単位に対する比は、ある長さの、ある時間に対する比となり、言い換えれば、この比はある速度となる。そして長さ、時間、質量の単位として何を選んでも、この速度は同一の絶対的な値をとるはずのものである。
(引用おわり)エミリオ・セグレ著「古典物理学を創った人々」(「FNの高校物理」より孫引き)
電磁単位の静電単位に対する比em/esは静電単位が基準になっているから、 [TF1/2]÷[LF1/2]である。これは[T/L]で、「ある時間の、ある長さに対する比」となり、速度の次元[L/T]の逆数である。これはマクスウェルの指摘とは違っている。ここだけなのだろうか。それとも「エーテル」(1875年)とも連動しているのだろうか。もし連動しているとしたら、マクスウェルは、大きさと次元の違いに気づかないまま、em/es=cと考えていたことになる。