対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

cはQm/Qsだった。

2016-03-21 | εとμの複合
『電磁気の単位はこうして作られた』(木幡重雄/工学社/2003年)にc=Qs/Qmとあった(Qs静電単位、Qm電磁単位)。原典にそった展開なので重く受け止めていたが、自分なりに1/√(εμ)と単位の比の関連を見ていくと疑問が出てきた。Qs/Qmは速度の次元をもつが大きさは1/cだった。cの値を示すのはQm/Qsの方である。しかしこちらは速度の次元ではなかった。
ウェーバーとコールラウシュが測定したcはどちらだったのだろうか。
ありがたいことに、この論文(1856年の実験)はインターネットで公開されていた。ドイツ語もあるが、英訳が便利である(http://www.ifi.unicamp.br/~assis/Weber-Kohlrausch(2003).pdfの付録)。必要な個所だけ取りあげる。そこには次のように実験結果が示されている。
The mechanical measure of the current intensity is thus proportional
to magnetic as 1:155370×106
ここでmechanical measureは訳すと力学的単位だが、ウェーバーは静電単位ではなくこのタームを使っていたという。つまり、静電単位と電磁単位の比は1:155370×106であると結論している。数値は現在のものと違うが155370×106はc(現代の単位に換算すると3.11×108m/sec)のことである。また次の節には次のような記述がある。
In the preceding section, the proportional relation of the magnetic measure to the mechanical measure was found to be
155370×106:1
こちらは単位の順序を入れ替えて、電磁単位と静電単位の比を155370×106:1としている。つまり論文で示されているのは、Qs:Qm=1:c、Qm:Qs= c:1である。いいかえればcの値はQs/QmではなくQm/Qsである。つまりc=Qm/Qsである。しかもQm/Qsは速度の次元を持っている。c=Qs/Qmは間違っていた。

マクスウェルが参考にしたのもc=Qm/Qsである。マクスウェルは電磁波の速度1/√(εμ)とc=Qm/Qsの関連を洞察したのである。