対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

庭に来る鳥

2016-12-22 | 庭に来る鳥
2階の窓からながめると目につくのはメジロである。みかん、びわ、はなもも、ゆすらうめのあいだを飛びまわっている。機敏な動きである。かきの実を啄みにくる鳥はスズメをはじめとしていろいろいるが、絵になるのはヒヨドリとムクドリである。食べる実があり、遊んだり憩える枝があり、わが家の庭は鳥に重宝がられているのではないだろうか。
「来る」をひらがなで「くる」と書くと朝永振一郎氏の庭になる(『庭にくる鳥』みすず書房1976年)。武蔵野の庭にきた鳥は次のようなものだった。
ひよどり、むくどり、おなが、しじゅうがら、あおじ、かわらひわ、ひたき、うぐいす、めじろ、きじばと、すずめ。
このなかで、おなが、あおじ、かわらひわはここでは見たことがない。図鑑で見るとおながは特徴的で見ればわかりそうである。わが家の庭には来ていないのではないかと思う。
他の鳥は来ている。朝永家には来なかったカラスもときどきみかける。またツグミも来る。
朝永氏は庭にえさ台を作りリンゴを置いていた。食べにきた鳥が残したふんのなかの植物の種を鉢にまいて育てていた。次のようなものが生えてきたとある。
ツタ、アオキ、ネズミモチ、イヌツゲ、ビナンカズラ、ナツメ、オモト、シュロ、ツルバラ。
「庭にくる鳥」は3ページほどの短いものだが、これが本の題名になったのは収録された随筆が「えさ台に残された鳥の糞からぽつりぽつりと出てきた木の芽みたいなところもあるなあ、と思った」ことにあった。

鳥の糞のなかの植物の種は条件が整えば発芽する。それは21世紀の尾張の庭でも同じである。クスノキ、クロガネモチ、ナンキンハゼ。これらは鳥がよそから運んできて野生えしたものである。トウジュロ、ビワは、もともと庭にあった木から運ばれたものだろう。気づいたときには発芽してから1,2年経っていただろう。いま、ビワは本家と比べると幹はまだ細いが背は高くなってしまった。