対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

離心円に内在する楕円1

2017-09-07 | 楕円幻想
プトレマイオスのモデルは天動説なので周転円が不可欠である。しかし、天地を転倒して離心点に太陽を位置づけると、周転円は捨象できる。これが太陽中心系で見た離心円・等化点モデルである(山本義隆『世界の見方の転換』1)。これをプトレマイオスの離心円とする。ここに楕円が内在していることを見てみよう。
離心点F(太陽S)から惑星Pまでの距離を FP =rとする。また、中心Cから見た惑星Pと遠日点Aの角度∠PCA(離心アノマリア)をβとする。そして、半径をa、離心率をeとする。

△PFCで余弦定理より、
FP 2=r2
=a2+(ea) 2-2a・(ea)cos(π-β)
=a2+(ea) 2+2ea2cosβ
したがって、
FP =r
=√(a2+(ea) 2+2ea2cosβ)
=a(1+e2+2ecosβ) 1/2
離心率eは十分小さいので、べき展開して2次までとると(注)、次のようになる。
FP =r=a(1+ecosβ+e2/2・sin2β)
1次までの近似a(1+ecosβ)に楕円の式が表れている。2次の項だけ長いことがわかる。
β=0は遠日点でr=a(1+e)、βが大きくなるにつれ、離心円は楕円の軌道とは離れていく。そしてβ=90°で離心円と楕円の軌道の間隔は最大になる。そのときr=a(1+e2/2)である。さらにβが大きくなると間隔は小さくなり、β=180°のとき、近日点でr=a(1-e)となる。
離心円と楕円の軌道の間隔は最大になるβ=90°のときが、ケプラーが「眠りから目覚めた」ときである。ここに着目してみよう。


2次までの近似式について。
f(e)=(1+e2+2ecosβ) 1/2とする。
( )内はeの2次式である。
f(e)=(e2+2cosβe+1) 1/2
f'(e)
=1/2・(e2+2cosβe+1) -1/2・(2e+2cosβ)
=(e+cosβ)/√(e2+2cosβe+1)

f"(e)は商の微分。
f"(e)の分子、
1・√(e2+2cosβe+1) - (e+cosβ)・(e+cosβ)/ √(e2+2cosβe+1)
=(e2+2cosβe+1- (e+cosβ) 2)/√(e2+2cosβe+1)
=1-cos2β/√(e2+2cosβe+1)
=sin2β/√(e2+2cosβe+1)
f"(e)の分母、
e2+2cosβe+1
あわせると、
f"(e)
=sin2β/(e2+2cosβe+1) 3/2

したがって、e=0を代入すると、
f(0)=1
f'(0)=cosβ
f"(0)= sin2β
ゆえに、
f(e)= f(0)+f'(0)e+f"(0)e2/2!
=1+ecosβ+e2/2・sin2β
距離 FP は次のようになる。
FP =r=a(1+ecosβ+e2/2・sin2β)