図(注1)で数値を確認しておこう。
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離心円の半径は1である。三日月の幅EFは0.00429、離心距離BAは0.09265である。これらはティコ・ブラーエのデータである。これをもとに、火星と太陽の距離FAは、△FABに着目することによって求めることができる。
FA2=FB2+AB2
=(1-0.00429)2+0.092652
=1.00002
したがって、
FA=1.00001
ケプラーは「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」と述べている。平均的な長さを取る所とは、離心円上の点E。また、正割(注2)はEAであり、半径はEBである(直角三角形EBAに着目)。ケプラーが気づいたのは、火星はEではなくFにあり、火星-太陽間の距離として、正割EA(=1.00429)ではなく半径EB(=1)を用いれば、観測結果(FA=1.00001)の通りになることである。たしかに1.00001≒1である。
FAの距離は、EA=1.00429ではなく、EB=1。これがケプラーの洞察である。ティコの観測値はFA=1.00001だが、これを正確に半径の値1、強調していえば、1.00000と置く。この場合、ティコのデータに依存せず、FA=1.00000となる。観測値の1.00001の近似値ではなく、理論値の1.00000である。
楕円軌道が発見されるまでは、直角三角形FBAにおいて、未定なのはFAで、FB=1-0.00429、BA=0.09265はわかっていた。FAはデータから計算するものだった。しかし、楕円軌道の端緒が発見されたとき、未定なのはFBで、FA=1.00000、BA=0.09265はわかっている。こんどはFA=1.00000が起点となる。FBを求めてみよう。
直角三角形FBAで、FA=1、BA=0.09265である。
三平方の定理より、
FB2=12-0.092652
=1-0.008584
=0.991416
したがって、
FB
=√0.991416
=0.99570
したがって、三日月の幅の値EFは、
EF=1-0.99570
=0.00430
切り取られるべき三日月の幅は0.00429だったが、実際に切り取られた幅の値は0.00430である。
わずかだが、違いはあったというべきだろう。
0.00001の差とは、100メートルに対して1ミリの差である。違いはあるが、同じというべきだろうか。
数値を使って三日月の幅を見てきたが、こんどは離心率eのまま、三日月の幅を検討してみよう。
(注1)
この図は、『世界の見方の転換』3で提示されている図「ケプラーの第1法則(楕円軌道)の発見」に離心円上の点E、Kと太陽Aを結んだ線分を付け加えたものである。(「楕円軌道の発見」5,6など参照)
(注2)
「正割」の値はティコのデータとは無関係である。正割は余弦の逆数である。ケプラーは∠BEAが5°18´である△BEAに着目していた。そして、まったく偶然に5°18´という角度の正割の値を調べてみる。すると、半径EB=1に対して、斜辺EAは1.00429になった。正割EA=1.00429である。1.00429-1=0.00429で、三日月の幅の値と対応するではないか。ここで、ケプラーは新たな光を見たのだと思う。
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離心円の半径は1である。三日月の幅EFは0.00429、離心距離BAは0.09265である。これらはティコ・ブラーエのデータである。これをもとに、火星と太陽の距離FAは、△FABに着目することによって求めることができる。
FA2=FB2+AB2
=(1-0.00429)2+0.092652
=1.00002
したがって、
FA=1.00001
ケプラーは「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」と述べている。平均的な長さを取る所とは、離心円上の点E。また、正割(注2)はEAであり、半径はEBである(直角三角形EBAに着目)。ケプラーが気づいたのは、火星はEではなくFにあり、火星-太陽間の距離として、正割EA(=1.00429)ではなく半径EB(=1)を用いれば、観測結果(FA=1.00001)の通りになることである。たしかに1.00001≒1である。
FAの距離は、EA=1.00429ではなく、EB=1。これがケプラーの洞察である。ティコの観測値はFA=1.00001だが、これを正確に半径の値1、強調していえば、1.00000と置く。この場合、ティコのデータに依存せず、FA=1.00000となる。観測値の1.00001の近似値ではなく、理論値の1.00000である。
楕円軌道が発見されるまでは、直角三角形FBAにおいて、未定なのはFAで、FB=1-0.00429、BA=0.09265はわかっていた。FAはデータから計算するものだった。しかし、楕円軌道の端緒が発見されたとき、未定なのはFBで、FA=1.00000、BA=0.09265はわかっている。こんどはFA=1.00000が起点となる。FBを求めてみよう。
直角三角形FBAで、FA=1、BA=0.09265である。
三平方の定理より、
FB2=12-0.092652
=1-0.008584
=0.991416
したがって、
FB
=√0.991416
=0.99570
したがって、三日月の幅の値EFは、
EF=1-0.99570
=0.00430
切り取られるべき三日月の幅は0.00429だったが、実際に切り取られた幅の値は0.00430である。
わずかだが、違いはあったというべきだろう。
0.00001の差とは、100メートルに対して1ミリの差である。違いはあるが、同じというべきだろうか。
数値を使って三日月の幅を見てきたが、こんどは離心率eのまま、三日月の幅を検討してみよう。
(注1)
この図は、『世界の見方の転換』3で提示されている図「ケプラーの第1法則(楕円軌道)の発見」に離心円上の点E、Kと太陽Aを結んだ線分を付け加えたものである。(「楕円軌道の発見」5,6など参照)
(注2)
「正割」の値はティコのデータとは無関係である。正割は余弦の逆数である。ケプラーは∠BEAが5°18´である△BEAに着目していた。そして、まったく偶然に5°18´という角度の正割の値を調べてみる。すると、半径EB=1に対して、斜辺EAは1.00429になった。正割EA=1.00429である。1.00429-1=0.00429で、三日月の幅の値と対応するではないか。ここで、ケプラーは新たな光を見たのだと思う。