対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

Zを捨てMを選んだ理由2

2018-02-06 | 楕円幻想
都築正信は、点Zは点Fの一般化であり、点Zをはじめに選択したのは当然だったといっている(「ケプラーの火星楕円軌道について」)。この考えは、エイトンが次のように述べていること対応する。「βが90度のとき惑星は実際に離心円の半径上にあるのだから、他の位置にあるときも半径上にあるとするのが自然である」(「ケプラーによる楕円軌道の発見」、『円から楕円へ』第3章)。
そして、強調しておけば、ケプラーもこのように考えていたのである。

しかし、点Zを点Fの一般化と捉えるのは誤っている。点Zは点Fの一般化ではなく一面化というべきだろう。点Fは2つの側面を持っていた。半径EB上にあるとともに、長軸線に下した垂線EB上にもあったのである。

ケプラーはβが90°のとき、正割EAの代わりに半径EBを用いることによって、火星と太陽の距離と方向AFを決定した。点Fは半径上にあるのか、垂線上にあるのか問われないままに、位置が正確に決定されたのである。このとき、ケプラーは、点Fは半径上にあると考えた。そして、この考えは20世紀のエイトンにも、21世紀の都築正信にも継承されたのである。

点Fは特異な点である。半径EBと垂線EBが重なった線上にあった。しかし、一般的な離心円上の点Kにおいて、半径と垂線は分離する。半径KBと垂線KLである。火星は半径上にあるのか、垂線上にあるのか。ここではじめて判断を求められたのである。
点Zは点Fの一般化ではない。点Fは点Zと点Mを内在していた。端緒から一般化されることによって、点Fは点Zと点Mに分離したのである。点Zは点Fの一面化であり、点Fの虚像である。点Zは豊頬形を描き、ティコのデータと食い違いことによって、否定される。点Mが実像で、楕円を描き、観測結果と一致する。ケプラーの方法論からすれば、2つしか選択肢がなかったのである。点Zは捨てられ、点Mが選択される。ここに火星の方向(角度)は垂線が決定していることが明確になったのである。
これが、ケプラーが無意識のうちに行った選択である。Mの選択はケプラーの方法論に起因するもので、秤動や近傍なしで導くことができるものである。

点Fは半径と垂線の2つの線上にあった。半径(直径距離)は距離を、垂線は方向を決定した。ただ、方向や軌道の形からいえば、点Fは、半径上ではなく垂線上にあったというべきだろう。目覚めの端緒では半径だけが意識され、方向を決定する垂線は背後に隠れていた。
要約しよう。点Mが点Fの一般化だったのである。火星は、半径(直径距離)によって距離を測りながら、方向を垂線上に定める。それは離心円上のすべての点で行われる。そして垂線を一定の比に分けながら、楕円軌道を描いたのである。