パースと違ったアブダクションの可能性とは、パースの順序と逆の推論である。テーブルの白い豆が、多数の袋の中のある1つの袋からとり出されたことに最初に気づくという想定である。つまり、2「白い豆が1つの袋からとり出されたこと」に気づき、これを前提に組み入れ(テーブルの白い豆は大前提、2は小前提とする)、1「白い豆だけが入った袋があること」を結論として推論する。
パースの説明に重ねてみよう。
「わたしがある部屋に入ってみると、そこにいろいろな違う種類の豆の入った多数の袋があったとする。テーブルの上には手一杯の白い豆がある。そこでちょっと注意してみると、それらの多数の袋のなかの1つの袋から手一杯の白い豆がとり出されたことに気づく。わたしはただちに、ありそうなこととして、あるいはおおよその見当として、その袋のなかの豆はすべて白いだろうと推論する。この種の推論も仮説をつくること(making a hypothesis)と呼ばれる。」
(1)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(2)これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(3)ゆえに、この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)。
下線の上が推論の前提(大前提と小前提)、下が結論である。命題の後の( )内は演繹での位置づけである。このアブダクションは演繹での結論(結果)と小前提(事例)から大前提(規則)を導きだす推論になっている。
この推論は「帰納」と同じ第3格(注1)になっている。媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)は次のように並ぶ。M(これらの豆)、S(この袋の豆)、P(白い)。
M――P
M――S
∴ S――P
ただし、帰納では2つの前提(大と小)はいずれも確実だが、ここ(アブダクション)では大前提だけが確実で、小前提は不確実な想像された前提である。
2つの前提(大と小)の前後はパースの帰納(注2)と逆になっている。ここで「これらの豆は白い」(テーブルの上の白い豆)を大前提とするのは、インダクションとしての帰納とアブダクションとしての帰納を区別するためである。また出発点としてのE「経験的に見出された自然過程の一般的性質」との対応を想定していることもある。
(注1)
パースのアブダクションは第2格である。
(1)この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)、
(2)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(3)ゆえに、これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)。
媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)が、次のように並んでいる。M(白い)、S(これらの豆)、P(この袋の豆)。
P――M
S――M
∴ S――P
ちなみに、ディダクション(演繹)は第1格である。
(1)この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)、
(2) これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(3)ゆえに、これらの豆は白い(結論・結果Result)。
媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)は次のように並ぶ。M(この袋の豆)、S(これらの豆)、P(白い)。
M――P
S――M
∴ S――P
これは確実な推論である。しかし、第1格だけでなく、第2格や第3格にも推論としての存在理由を認め、探究の論理学を提起するところにパースの試みがあった。(上山春平『弁証法の系譜』参照)
(注2)
パースの帰納は次のようである。
(1)これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(2)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(3)ゆえに、この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)。
これはアリストテレスの定義「帰納とは小前提と結論から大前提を導きだす推論である」に対応させたように思われる。(『世界の名著48』参照)
パースの説明に重ねてみよう。
「わたしがある部屋に入ってみると、そこにいろいろな違う種類の豆の入った多数の袋があったとする。テーブルの上には手一杯の白い豆がある。そこでちょっと注意してみると、それらの多数の袋のなかの1つの袋から手一杯の白い豆がとり出されたことに気づく。わたしはただちに、ありそうなこととして、あるいはおおよその見当として、その袋のなかの豆はすべて白いだろうと推論する。この種の推論も仮説をつくること(making a hypothesis)と呼ばれる。」
(1)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(2)これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(3)ゆえに、この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)。
下線の上が推論の前提(大前提と小前提)、下が結論である。命題の後の( )内は演繹での位置づけである。このアブダクションは演繹での結論(結果)と小前提(事例)から大前提(規則)を導きだす推論になっている。
この推論は「帰納」と同じ第3格(注1)になっている。媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)は次のように並ぶ。M(これらの豆)、S(この袋の豆)、P(白い)。
M――P
M――S
∴ S――P
ただし、帰納では2つの前提(大と小)はいずれも確実だが、ここ(アブダクション)では大前提だけが確実で、小前提は不確実な想像された前提である。
2つの前提(大と小)の前後はパースの帰納(注2)と逆になっている。ここで「これらの豆は白い」(テーブルの上の白い豆)を大前提とするのは、インダクションとしての帰納とアブダクションとしての帰納を区別するためである。また出発点としてのE「経験的に見出された自然過程の一般的性質」との対応を想定していることもある。
(注1)
パースのアブダクションは第2格である。
(1)この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)、
(2)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(3)ゆえに、これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)。
媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)が、次のように並んでいる。M(白い)、S(これらの豆)、P(この袋の豆)。
P――M
S――M
∴ S――P
ちなみに、ディダクション(演繹)は第1格である。
(1)この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)、
(2) これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(3)ゆえに、これらの豆は白い(結論・結果Result)。
媒名辞Mと小名辞S(結論の主語)と大名辞P(結論の述語)は次のように並ぶ。M(この袋の豆)、S(これらの豆)、P(白い)。
M――P
S――M
∴ S――P
これは確実な推論である。しかし、第1格だけでなく、第2格や第3格にも推論としての存在理由を認め、探究の論理学を提起するところにパースの試みがあった。(上山春平『弁証法の系譜』参照)
(注2)
パースの帰納は次のようである。
(1)これらの豆はこの袋の豆である(小前提・事例Case)、
(2)これらの豆は白い(結論・結果Result)、
(3)ゆえに、この袋の豆はすべて白い(大前提・規則Rule)。
これはアリストテレスの定義「帰納とは小前提と結論から大前提を導きだす推論である」に対応させたように思われる。(『世界の名著48』参照)