対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

火星とバイソシエーション

2018-07-04 | 楕円幻想
ケストラーの創造活動の理論――バイソシエーション(bisociation)を知ったのは『ホロン革命』においてで、1980年代の半ばだった。それは複素過程論(『もうひとつのパスカルの原理』)の基礎の一つになったし、いまの「ひらがな弁証法」(複合論)に引き継がれている。このように思っていた。10年ほど前に、『ヨハネス・ケプラー』(小尾信弥/木村博訳、河出書房新社、1977)を読み直していて、すでに70年代にケストラーの創造活動の理論と出会っていたことに気づいて驚いたことがあった。今そこを探してみると、第6章 法則の発表 にある。引用しておこう。
(引用はじめ)
惑星軌道の問題は、純粋に幾何学的な理論の枠に救いようもなくはまり込んでしまい、動きがとれなくなっていた。それを枠から引き離すことができないと知ったケプラーは、それを引きちぎって物理学の分野に移し変えたのである。ひとつの問題を、それの周囲・前後との伝統的な関係から取りはずし、新たな関係の中にそれを置くというこの手続き、いわばその問題を別の色眼鏡を通して見るということ、このことがまさに創造作用の本質であるという思いが、これまで常に私にはあった。それは、問題の再評価につながるばかりではなく、それ以前には無関係であった二つの理論を融合することによってもたらされる、より広範な結果からの総合へとつながることもしばしばある。われわれの場合で言えば、火星の軌道は、物理学と宇宙論という二つの形式的には分離した領域を結合する輪となったのである。
(引用おわり)