対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

ベイコンの上向・下向法

2018-10-02 | ノート
堀江忠男は市井三郎の帰納論を継承している。そしてベイコンの帰納法を「ベイコンの上向・下向法」と名づけている。それは『ノヴム・オルガヌム』の次の個所に着目したものである。「さまざまな個別的なものからひき出された法則の新しい光に照らして、ふたたび新しいもろもろの個別的なものへの路が指示されねばならぬ。……なぜならわれわれの道は平地に横たわるのではなく上昇(上向)と下降(下向)を交互にし、まず法則へ上昇すれば次いで実践へ下降するからである。」(103)。「理論化と実践との交互的くり返し」(市井)をマルクスの下向・上向法と対応させた命名である。
堀江の帰納論を確認しておこう。
(引用はじめ)『弁証法経済学批判』(早稲田大学出版部、1980)
ベイコンの「真の帰納法」は、常識的に定義されている帰納法とちがって、(1)問題の発想 (2)帰納による仮説の設定 (3)演繹による仮説からの帰結の推理 (4)事実に照らしての検証、という現代的な科学方法論、予測的知識獲得の武器の原型をすでに与えているものと解釈すべきであろう。
(引用おわり)
ここにはアブダクションはないが、パースの探究の論理学と重なっている。