ケプラーは離心円上のEからKへ視線を移す。ケプラーは、K点で、E点で起こったのと同じことが起こるだろうと考えた。「正割ENの代りに半径EHを用いると観測結果NBのとおりとなる」。
エイトンの指摘は短いものである。「それ以外の位置では、KNのこの投影KTは1+ecosβ(離心円の半径1、離心率eのとき、引用者注)である。」(エイトン)
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円周距離KNから順を追って見ていこう。KNがENに対応する。KNを、Kを通る離心円の直径の方向に∠HKNで投影するとKTとなる。KTがEHに対応する。これが直径距離である。
直角三角形KNTにおいて、KT/KNは余弦cos(∠HKN)だが、逆方向に見れば、KN/KTは正割sec(∠HKN)である。KNは正割(斜辺)にあたる。直角三角形ENHの「正割(斜辺)ENの代りに半径(底辺)EHを用いる」と同じように、ケプラーはK点でも、直角三角形KNTの「正割(斜辺)KNの代わりに直径距離(底辺)KTを用いている」といえよう。
KT=KH+HTで、離心円の半径1、離心率e、β=∠AHKとすれば、KT=1+ecosβとなる。これが真の距離NMとなる。(注)
KT=1+ecosβは「直径距離」の一般式である。
β(∠AHK、離心アノマリア)の大きさによって直径距離は変化する。β=0°のときcosβ=1でKT=1+eである。ここが最大値で、徐々に短くなっていく。β=90°のときはcosβ=0となってKT=1となる。これは半径EHと対応する。さらにβが大きくなるとcosβは負の値となって、さらに直径距離は短くなっていき、β=180°で最短KT=1-eとなる。
K点での直径距離KTとE点での直径距離EHは1+ecosβで繋がっている。円周距離(EN、KN)の代わりに直径距離(EH、KT)を用いると真の距離を表す。これがエイトンの「直径距離の法則」である。「偶然の観測から、距離を求めるもうひとつの方法が見つかった。彼が気づいたのは、βが90度のときには(図11)、太陽から惑星への距離NBはEH、すなわち離心円の直径へのENの投影に等しいということであった。それ以外の位置では、KNのこの投影KTは1+ecosβである。ケプラーはこれを直径距離の法則と呼んでいる。」
ケプラーが一般的な結論を下したときに、岸本良彦は訳注を付けている。それを取り上げ、視覚的均差、直径距離、第56章の意義などを確認しておこう。
(つづく)
(注)しかし、第56章ではNMとは決定できない。N(太陽)からの距離が、KT(直径距離)とわかっただけで、観測結果に合うNMの終点Mの位置はわかっていないからである(方向が未定)。NZの可能性もあった。
ここがE点とは違う所である。E点では切り取る三日月形の幅は決まっているので、B点も決定している。NBは始点も終点も分かっていて、EH(半径、直径距離)を観測結果NBと直接比べることができた。しかし、K点では終点はわかっていない。
エイトンの指摘は短いものである。「それ以外の位置では、KNのこの投影KTは1+ecosβ(離心円の半径1、離心率eのとき、引用者注)である。」(エイトン)
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円周距離KNから順を追って見ていこう。KNがENに対応する。KNを、Kを通る離心円の直径の方向に∠HKNで投影するとKTとなる。KTがEHに対応する。これが直径距離である。
直角三角形KNTにおいて、KT/KNは余弦cos(∠HKN)だが、逆方向に見れば、KN/KTは正割sec(∠HKN)である。KNは正割(斜辺)にあたる。直角三角形ENHの「正割(斜辺)ENの代りに半径(底辺)EHを用いる」と同じように、ケプラーはK点でも、直角三角形KNTの「正割(斜辺)KNの代わりに直径距離(底辺)KTを用いている」といえよう。
KT=KH+HTで、離心円の半径1、離心率e、β=∠AHKとすれば、KT=1+ecosβとなる。これが真の距離NMとなる。(注)
KT=1+ecosβは「直径距離」の一般式である。
β(∠AHK、離心アノマリア)の大きさによって直径距離は変化する。β=0°のときcosβ=1でKT=1+eである。ここが最大値で、徐々に短くなっていく。β=90°のときはcosβ=0となってKT=1となる。これは半径EHと対応する。さらにβが大きくなるとcosβは負の値となって、さらに直径距離は短くなっていき、β=180°で最短KT=1-eとなる。
K点での直径距離KTとE点での直径距離EHは1+ecosβで繋がっている。円周距離(EN、KN)の代わりに直径距離(EH、KT)を用いると真の距離を表す。これがエイトンの「直径距離の法則」である。「偶然の観測から、距離を求めるもうひとつの方法が見つかった。彼が気づいたのは、βが90度のときには(図11)、太陽から惑星への距離NBはEH、すなわち離心円の直径へのENの投影に等しいということであった。それ以外の位置では、KNのこの投影KTは1+ecosβである。ケプラーはこれを直径距離の法則と呼んでいる。」
ケプラーが一般的な結論を下したときに、岸本良彦は訳注を付けている。それを取り上げ、視覚的均差、直径距離、第56章の意義などを確認しておこう。
(つづく)
(注)しかし、第56章ではNMとは決定できない。N(太陽)からの距離が、KT(直径距離)とわかっただけで、観測結果に合うNMの終点Mの位置はわかっていないからである(方向が未定)。NZの可能性もあった。
ここがE点とは違う所である。E点では切り取る三日月形の幅は決まっているので、B点も決定している。NBは始点も終点も分かっていて、EH(半径、直径距離)を観測結果NBと直接比べることができた。しかし、K点では終点はわかっていない。