対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

自己表出はアブダクションである7

2024-04-03 | ノート
表出論のブートストラップモデル

3)の段階で、言語は現実的な対象との一義的な関係を持たなくなった。有節音声は今、目の前に見ている海であるとともに、またどこか他の海を象徴するようになる。現実の海はそれぞれ違いがある対象だが、類として同じとみる特性が出現する。その一方で目の前の海を具体化するには、類としての〈海〉から差別化することば(指示)が必要となった(海→海の原→蒼き海の原→さざなみのたつ蒼き海の原→…)。
吉本隆明は言語のこれらの特性(「類としての同一性と個性としての差別性」)を言語の対自と対他の側面、いいかえれば自己表出と指示表出に対応させた。

そして、対象の類概念の広がりに言語の拡大を見ている。
(引用はじめ)
「有節音声は自己表出されたときに現実的な対象との一義的な結びつきをはなれ言語としての条件を完備した。表出された有節音声はある水準の類概念をあらわすとともに自己表出はつみかさねられて意識の構造をつよめ、それはまた逆に類概念のうえにまたちがった類概念をうみだすことができるようになる。おそらく長い年月のあいだこの過程はつづくのである。
(引用おわり)
そして次のような図を提示している。

この図が『言語の本質』で提示されていたブートストラッピングサイクルに対応すると考える。

次に、自己表出がアブダクションかどうか見てみよう。