柄谷行人からときどき刺激をもらっている。九鬼周造の「偶然性の問題」に関する関心は、『探究Ⅱ』がきっかけだった。柄谷が「偶然性の内面化」の手前で立ち止まるのに対して、一歩進んでみようと思ったのである。
「偶然性の内面化」と弁証法
こんど『世界史の実験』(岩波新書、2019)を読んでいて、ヘーゲル哲学に対する簡潔な批判的指摘に感心した。
「偶然性の内面化」と弁証法
こんど『世界史の実験』(岩波新書、2019)を読んでいて、ヘーゲル哲学に対する簡潔な批判的指摘に感心した。
ヘーゲルの観念論的な哲学は、精神による「生産」活動をとらえたものですが、ここには他者との「交換」という契機が欠落しています。(中略)ヘーゲル哲学を真に「転倒」するためには、生産ではなく、交換という観点が必要なのです。わたしは「論理的なものの三側面」(『小論理学』)を問題にしてきた。この規定は「対立する一項の内在的否定による進展」(松村一人)と要約できるものである。これに対して、「対話」の契機を導入して「論理的なものの三側面」を組みかえようとしてきた。この試みは、柄谷の指摘する「生産」ではなく「交換」という観点としても見直すことができるように思う。
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