対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

「論理的なもの」の表出論4

2020-11-17 | 自己表出と指示表出
(「論理的なもの」と複素平面)

 「論理的なもの」の表出論の特徴は複素数をモデルとしていることである。複素数はa+bi(実部と虚部)という構造をもっている。これまで「論理的なもの」の2つの側面(自己表出と指示表出)を実部と虚部にそれぞれ対応させてきた。すなわち、
  「論理的なもの」=「自己表出」+「指示表出」i
と考えてきた。
 これまで自己表出を実部に、指示表出を虚部に対応させてきたのは、すでに把握されている「論理的なもの」を前提としていたからである。「論理的なもの」の内部においては理性の推論が実質を担っており、外部(認識対象)と関係する悟性は「想像されたもの」と位置づけるのが、自然と思われたからである。(この「悟性」は変容する可能性がある。)
 しかし、これから新しく把握しようとする「論理的なもの」においては、こんどは逆に、出発点となる悟性が実質で、「論理的なもの」の内部の理性の推論は「想像的なもの」と位置づける方が妥当だと思われる。つまり、実部に指示表出を対応させ、自己表出に虚部を対応させる方が自然と思われる。つまり、
 「論理的なもの」=「指示表出」+「自己表出」i
と考えるのである。
 これは「論理的なもの」を前提としないときの対応だが、2つの「論理的なもの」(AとA’)から1つの「論理的なもの」(B)をつくる過程においても、新たな1つの「論理的なもの」は、途中から生まれてくるのではなく、最初から形成され始めていると考えれば、
 「論理的なもの」=「指示表出」+「自己表出」i
という対応の方が根源的ではないかと思う。
 指示表出は実部と対応する。自己表出は虚部と対応する。ガウスの複素平面の実軸は水平軸であり、虚軸は垂直軸である。アインシュタインの思考モデル(1952年)に投影した「論理的なもの」の背景には複素平面があるといえよう。

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