『望遠鏡以前の天文学』(恒星社厚生閣、2008)10章はルネサンスの天文学である。著者はN・S・スワドロー(シカゴ大学)で、『世界の見方の転換』とほぼ同じ時期が扱われている。ケプラーの面積法則の説明が簡潔で大変参考になった。「P2自体が小さな扇形P2SP2の底辺だとすれば、辺に垂直なその高さは中心Mを通らなければならない」。この表現が印象に残った(記号は下の図参照)。微小な扇形(離心点を頂点を持つ扇形)の高さは円周距離ではなく直径距離であることが明確になった。あいまいだった面積法則が腑に落ちた。これで『新天文学』訳者注のカスパーに関連したもの、また『世界の見方の転換』付記C-6火星軌道の決定3、直径距離と面積法則もよく理解できるようになった。
スワドローはケプラーの「目覚め」を次のようにとらえていた。
(引用はじめ)
ケプラーは面積と距離が円では大きすぎ、卵形では小さすぎること、観測で得られた距離がその間の半分ほどになること、そして弓形の最大幅PmP’mが858の約半分、すなわち429となるべきであることが分かった。しかし、これが何を意味するのかは明らかではなかった。そして弓形となる原因について悩んでいた時、E=90°の時の視覚補正(5°18′)のセカントが100429であること、すなわち図67にあるように、角SPmMのセカント(SPmの距離)が100429であることにたまたま気づいた。彼によれば、それは眠りから醒め、新たな光を見たかのようであった。惑星の正しい距離が100429なのではなく、R=100000(弓形の正しい幅より小さい)であると推測したのである。(山本啓二訳)

(引用おわり)
これは56章のケプラーの「目覚め」であり、納得できるものである。
「視覚補正」は、これまでの「視覚的均差」である。本には(5;18°)と表記してあったが、なじみの5°18′に改めた。
また、(弓形の正しい幅より小さい)という注記はこの種の本で初めて見た。正しい距離が円周距離100429ではなく直径距離100000であるとすると、出発点の弓形の幅は429ではなくこれより少し小さくなることを意味しているだろう。どのくらいかといえば、
(100429-100000)×(100000/100429)=427
切り取る弓形の幅は100メートルに対して43センチほどだが、小さくなる幅は100メートルに対して2ミリほどである。
正しい幅429よりも正割100429が重要である。それが円周距離100429ではなく直径距離100000を喚起したことがさらに重要である。円周距離ではなく直径距離、これがケプラーの目覚めの真相である。それは面積法則の把握にも楕円軌道への道にも共通しているのである。
これに対して、弓形の幅429を固定的に考え、円周距離と直径距離の関係に触れられないのが、山本義隆『世界の見方の転換』14楕円軌道への道である。

2つの線分が消えた理由をいくつか憶測してきたが、次のようにまとめておこう。。
切り取る三日月の幅429を固定的に捉えたため、視覚的均差の位置が離心円から楕円にずれてしまった。点Eではなく点Fが思考の起点となる。そのためケプラーの正割(△EAB)が不要になり、線分EAが消える。しかし、「正割」100429は否定できず、△FABの「正割」が取り上げられて、100429と100000(1.00429と1)の関係が思い描かれる。
FA=FBsec(5°18′)=(1-0.00429) (1+0.00429)a≒a=EB
スワドローの図でいえば、山本義隆は△PmSMではなく△P'mSMで「正割」を考えているのである。
2つの線分を消したのは何か意図があったのかもしれない。しかし、その図はケプラーの目覚めをまったく説明しないのである。
『世界の見方の転換』3の表紙は『新天文学』の図である。この図には2つの線分は描かれている。これは山本義隆の見方の転換を求めているのである。

(了)
スワドローはケプラーの「目覚め」を次のようにとらえていた。
(引用はじめ)
ケプラーは面積と距離が円では大きすぎ、卵形では小さすぎること、観測で得られた距離がその間の半分ほどになること、そして弓形の最大幅PmP’mが858の約半分、すなわち429となるべきであることが分かった。しかし、これが何を意味するのかは明らかではなかった。そして弓形となる原因について悩んでいた時、E=90°の時の視覚補正(5°18′)のセカントが100429であること、すなわち図67にあるように、角SPmMのセカント(SPmの距離)が100429であることにたまたま気づいた。彼によれば、それは眠りから醒め、新たな光を見たかのようであった。惑星の正しい距離が100429なのではなく、R=100000(弓形の正しい幅より小さい)であると推測したのである。(山本啓二訳)

(引用おわり)
これは56章のケプラーの「目覚め」であり、納得できるものである。
「視覚補正」は、これまでの「視覚的均差」である。本には(5;18°)と表記してあったが、なじみの5°18′に改めた。
また、(弓形の正しい幅より小さい)という注記はこの種の本で初めて見た。正しい距離が円周距離100429ではなく直径距離100000であるとすると、出発点の弓形の幅は429ではなくこれより少し小さくなることを意味しているだろう。どのくらいかといえば、
(100429-100000)×(100000/100429)=427
切り取る弓形の幅は100メートルに対して43センチほどだが、小さくなる幅は100メートルに対して2ミリほどである。
正しい幅429よりも正割100429が重要である。それが円周距離100429ではなく直径距離100000を喚起したことがさらに重要である。円周距離ではなく直径距離、これがケプラーの目覚めの真相である。それは面積法則の把握にも楕円軌道への道にも共通しているのである。
これに対して、弓形の幅429を固定的に考え、円周距離と直径距離の関係に触れられないのが、山本義隆『世界の見方の転換』14楕円軌道への道である。

2つの線分が消えた理由をいくつか憶測してきたが、次のようにまとめておこう。。
切り取る三日月の幅429を固定的に捉えたため、視覚的均差の位置が離心円から楕円にずれてしまった。点Eではなく点Fが思考の起点となる。そのためケプラーの正割(△EAB)が不要になり、線分EAが消える。しかし、「正割」100429は否定できず、△FABの「正割」が取り上げられて、100429と100000(1.00429と1)の関係が思い描かれる。
FA=FBsec(5°18′)=(1-0.00429) (1+0.00429)a≒a=EB
スワドローの図でいえば、山本義隆は△PmSMではなく△P'mSMで「正割」を考えているのである。
2つの線分を消したのは何か意図があったのかもしれない。しかし、その図はケプラーの目覚めをまったく説明しないのである。
『世界の見方の転換』3の表紙は『新天文学』の図である。この図には2つの線分は描かれている。これは山本義隆の見方の転換を求めているのである。

(了)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます