対話とモノローグ

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ケプラーの焦点

2018-02-13 | 楕円幻想
『光学』(「天文学の光学的部分」)には、焦点の定義と楕円の作図法などが書かれているという。山本義隆(『世界の見方の転換』3)によれば次のようである。
(引用はじめ)
ケプラーの1604年の『光学』第4章では、円錐の断面として円錐曲線が定義され、さらに「焦点(foci,focusの複数))として、その一方から出た光線がその曲線で反射されたときにもう一方に向かうような特別な点の対として定義され、命名されている。そして楕円の作図法として、二つの固定したピンにそのあいだより長い糸をかけて描く、よく知られた方法が記されている。
(引用おわり)
そして、次のようにある。「『光学』のこの箇所は、ヨーロッパの数学文献に「焦点」という言葉が導入された初めてのものとされる。」
これを読むと、楕円の2定点を焦点と名付けたのはケプラーのように思える(注)。

焦点には光学系の焦点と2次曲線の焦点がある。レンズの歴史は古いが、望遠鏡や視覚理論としての関心は17世紀の初頭に高まっている。レンズの「焦点」は、焦げる点として、自然発生的なものだったろう。これをケプラーは光が1点に集中することに着目して、2次曲線に転用したものと思われる。
楕円の2定点。1つの定点から出た光線は楕円の内側で反射して他の一点に集まる。放物線の1定点。放物線の軸に平行な光線は放物線の内側で反射して1定点に集まる。ここにレンズの焦点との関連を見て、2次曲線の定点を焦点と名付けたのだろう。
focusの語源はラテン語「炉(の焼点)」だという。ケプラーは楕円軌道を発見して、太陽が輝いている位置を焦点と名付けたことになる。とても深い命名だと思う。
2次曲線の「焦点」はギリシアの昔からあったのではなく、17世紀にケプラーによって名付けられた。それは楕円軌道の発見と対の出来事だったのである。

(注)
「楕円はそこからそれが描かれるところの二点を有し、それを私は”焦点”と言い慣わしている。」(1621年「コペルニクス天文学概要」)これもケプラーが名付けたことを示唆している。

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