対話とモノローグ

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2つの線分が消えた理由5

2021-12-14 | 楕円幻想
ケプラーの推論の続きを見てみよう。「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」。この端緒での関係を次のように一般化した。
(引用はじめ)
さらに第40章の図において、HAの代わりにHRを用い、VAの代わりにVR、EAの代わりにEBを取り、あらゆる個所でそのようにすると、離心円上の他の位置でも、この場合に平均的な長さを取る所で起こったのと同じことが起こるだろう、という一般的な結論を下した。
(引用おわり)
ここで第40章の図とは次のものである。

これはケプラーが面積法則(第2法則)を導いたときの図である。ここには楕円軌道が描かれていないので、ケプラーの推論が離心円上の個所を起点に行われていることを確認できるだろう。ケプラーの推論は円周距離→直径距離→観測結果の順で進む。
「円周距離」と「直径距離」は、端緒での「正割」と「半径」を一般化したものである。円周距離は離心円上の点と太陽との距離(例えばHA)、直径距離は、離心円上の点とその点を通る円の直径に太陽から下した垂線の交点を結んだ線分(例えばHR)である。

端緒と一般化の関係を見ておこう。

最大の視覚的均差∠AEBが5°18´のとき、△EABにおいて
EBsec5°18´=EA
が成り立っていて、EF:429、EA100429:EB100000:FA100000の関係を説明できた。
正割を余弦でいいかえれば、
   EAcos5°18´=EB=FA
これがケプラーの推論の端緒だった。EAに最大の視覚的均差の余弦(正割の逆数)を乗じたとき、結果は半径EBで、これが火星と太陽の距離FAに対応するのである。「平均的な長さを取る所で正割の代りに半径を用いると観測結果のとおりとなる」。

一般点K(離心アノマリアがβのとき)では次のようになる。K点での視覚的均差は∠AKBで、これをθとする。ここでは△KATに着目することになる。
KAcosθ=KTが火星と太陽の距離に対応するだろう。Aを中心に半径KTの円を描く。この弧の上に火星がある可能性がある(ZもMも候補である)。ここに角度の関係が付け加わる。真アノマリアαをみたす点M(垂線KL上にある)が火星の位置である。しかし、56章では確定していない。
離心円の一般的な点Kにおいて、直径距離の一般的な長さKTは、離心円の半径を1、離心率をe、視覚的均差をθとおくと、次のようになる。
   KAcosθ=KT=KB+BT=1+ecosβ
ここでβ=90°のときは、平均的な長さを取る所(∠EBH=90°)である。そこでは、θ=5°18´で、cosβ=0である。一般的な三角形△KATは端緒の三角形△EABにもどる。
   EAcos5°18´=EB=1
端緒と一般化は整合している。

ところが『世界の見方の転換』では整合していないのである。

つづく

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