『言語にとって美とはなにか』を読み直していて、「二枚の画布」の比喩が目にとまった。
言語発生の機構については、いわばちがった色の絵の具でぬられた二枚の画布にむきあっていた。そして色をひとつにぬりなおすこと、画布を一枚にただすことがふたつとももんだいとなった。混乱はそれぞれの言語観の個性的なちがいをこえた何かをふくんでいたのだ。
記憶にはなかったが、この比喩は、わたしが主張している弁証法そのものではないかと思った。さらに、吉本隆明が言語の自己表出と指示表出を導いていく過程を見直すと、複合論と正確に対応しているように思えてきた。いいかえれば、吉本隆明の「自己表出と指示表出」を、わたしの「自己表出と指示表出」から構成できるのではないかと思えてきたのである。
言語の自己表出と指示表出は、吉本隆明が、言語発生の関するランガーとマルクスの見解を選択し、混成し、統一した「論理的なもの」である。
この考えをまとめた。
目次は、次のようになっている。
はじめに
1 複合論の要点
1 認識の自己表出と指示表出
2 「論理的なもの」
3 「論理的なもの」の複素数モデル
4 弁証法
5 弁証法の通時的構造
6 弁証法の共時的な構造
7 ヘーゲル弁証法と複合論の対照
2 言語の表出論の形成について
1 選択 ランガーとマルクス
2 混成 自己表出と指示表出
3 統一 言語の表出
4 『定本言語にとって美とはなにか』の変更について
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