ケプラーの『新天文学』(岸本良彦訳)の第59章はアポロニウスの楕円の確認から始まっている。
(引用はじめ)
互いに反対側にある点を頂点として円に接する楕円を円の内に描き、円の中心と接点とを通る直径を引き、他の円周上の点からこの直径に垂線を下ろす。そうすると、これらの垂線はすべて楕円周によって同じ比に分割される。(中略)
すなわち、円をHEIとし、H、Iに円に内側から接する楕円をHFIとする。
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接点H、Iと中心Bを通る直径を引く。ついで、円周上の点K、Eから垂線KL、EBを下ろし、楕円周との交点をM、Fとする。そうするとEB対FBはKL対MLとなり、他の垂線もすべて同じ比を取る。(ケプラーが示している図の記号と対応させて引用、図は『世界の見方の転換3』(山本義隆著)より。)
(引用おわり)
離心円の半径を1、離心率をeとして、EB:FBとKL:MLが同じ比を取ることを確認しよう。(「ケプラーの火星楕円軌道について」(都築正信著)参照。)
まず、EB対FBの比を見ておこう。
FBは△AFBに着目して、
FB2
=
AF2-
AB2
=
EB2-
AB2
=1-e
2
∴
FB=√(1-e
2)
したがつて、
EB:
FB=1:√(1-e
2)
次にKL対MLの比を見てみよう。
KLは△BKLに着目して、
KL=sin
β
MLは△AMLに着目して、
ML2
=
AM2-
AL2
=
KT2-
AL2
=(1+
ecos
β)
2-(
e+cos
β)
2
=1+2
ecos
β+e
2cos
2β-(e
2+2
ecos
β+cos
2β)
=1+e
2cos
2β-e
2-cos
2β
=(1-e
2)-cos
2β(1-e
2)
=(1-e
2)(1-cos
2β)
=(1-e
2)sin
2β
∴
ML=√(1-e
2)sin
β
したがって、
KL:
ML=1:√(1-e
2)
あわせると、
EB:
FB=
KL:
ML=1:√(1-e
2)
したがって、離心円上の任意の点Kから長軸HIに垂線KLを下ろすとき、この垂線は点Mにおいて同じ比1:√(1-e
2)に分割される。火星の軌道HMFIは楕円である。