対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

指数と対数の起源6

2020-05-15 | 指数と対数
ネイピアの対数表は、正弦の値107sin θ(上の段)が刻みの小さな等比数列(初項107、<公比 r = (1− 1/107 )=0.9999999 の等比数列)の何番目に位置しているか(下の段)を表示したものである。

かけ算を計算したい2つの数をMとNとする。これを計算するには、それぞれの対応するlogarism(下の段)、mとnをたしたm+nに対応する上の段の数字を見て107倍すればよい。
107sin θMN(M×N)
logarismmnm+n

理由は次のようである。
M=107sin α=am=107rm
N=107sin β=an=107rn
とすると、
M×N
am×an
=107rm×107rn
=107・107rmrn
=107・107rm+n
=107am+n


指数と対数の起源5

2020-05-14 | 指数と対数
ジョン・ネイピア 対数誕生物語」(桜井進)と「対数の誕生・成長・発展」(成田收)を参考にしています。


ネイピアの対数表は、整数値に対してのものではなかった。当時、天文や航海の計算に使われていた三角関数(正弦)の値を計算できるようにするものだった。

次の図(桜井進「ジョン・ネイピア 対数誕生物語」より)を参考にして見ておこう。
  
ネイピアはまず、初項1000万・公比 r = (1− 1/10000000 ) = (1− 1/107 )=0.9999999 の等比数列{an}を考える。1に限りなく近い公比は刻みを小さくするためである。ネイピアは1分刻みの角度 θ に対し107sin θ (Sinus θ)が、等比数列の何項目にあたるかを計算して対応する表を作った。これがネイピアの対数表である。

ネイピアの等比数列において、初項は第0項である。これで等比数列の何項目かの順序数と公比をかけあわせる回数は一致する。この回数をネイピアはlogarithms(対数)と名付けた。これはlogos(比)とarithmos(数)を合わせたものである。公比をかけあわせた回数が logarithms(対数)の由来である(注1)。初項を第0項としたのは、これは1の対数を0とすることを意味した。logarithms(対数)は公比 0.9999999の肩の位置に配置されている。これは後の「べき指数」の位置である(注2)。

例として取り上げられている3173047(sin 18°30')は、
初項 a0=10000000(sin 90°)
第1項 a1=9999999
第2項 a2=9999998

から始まって、
第11478926項 a11478926=3173047
であることを示している。
膨大な計算が背後に感じられる。

当時は7桁×7桁の計算が求められていたことがわかる。

かけ算をたし算でやるやり方を確認しておこう。

(注1)(注2)後述


生理ラッカ(落下、落花、落果)

2020-05-13 | 庭の草木
通路に落下していた白い花びらを見て、生理落花と考えていたが、どうも違うように思えてきた。昨日は午前中2時間ほど草刈りをした。蜜柑の木の下もやった。夕方見ていると、白い花びらがたくさん落ちていた。通路は目立っていたが、そのほかにも落ちていたのである。今年は表の年で、たくさんの花が咲いている。その数を減らすために木が調節したものと思っていた。しかし、よく考えてみると、これは数の調節ではなく、受粉し受精したために、不要となった花びらが落下する現象と思えてきた。おおきくいえば、これも生理ラッカ(落下、落花)ではあろう。

これは出来立ての果実である。子房が色づいている。いずれ花びらはすべて落ち、果実が生長していく。木は自分の体力と相談しながら、果実の数を数調節していくだろう。これから生理落果が始まる。

指数と対数の起源4

2020-05-11 | 指数と対数
対数は、かけ算をたし算に変えて計算する方法として誕生した。その発想を簡単な数列で確かめておこう。
次のような上下に対応する数列を考えてみる。

12481632641282565121024
012345678910

この表はこんなふうに使う。16×64を計算するとき(上の段)、対応する数字4と6をたして4+6=10(下の段)、その10に対応する上の段の数字1024を答えにする。
これは次のように、積が和になる指数法則で説明できる。
16×64
=24×26
=24+6
=210
=1024

上の段に並んでいる数列は
20、21、22、23、24、25、26、…
だから、
下の段には、その冪(べき)指数が並んでいると思うだろう。もちろんそうなのだが、しかし、17世紀には指数表記はなかった。そのような状態で、冪(べき)指数を指し示めすものが「対数」だったのである(いわゆる指数と対数は同じものである)。つまり、上に並んでいる数列を x とすれば、下に並んでいる数列は log2 x なのである。別の言い方をすれば、上は「真数」が並び、下には「対数」が並んでいる。23=8と表記できないときに、log28 で3(指数)を表示したのである。

ふつうの高校生は 2log28=8 という式にとまどうだろうが(わたしもそうだった)、実際は「対数」の出発点にある式なのである。

ネイピアの対数に進もう。


指数と対数の起源3

2020-05-08 | 指数と対数
a ω=1+から次の式が導かれた。
  az=1+kz/1+k2z2/ 1・2+ k3z3/ 1・2・3+k4z4/1・2・3・4+···   (1)
   
この式においてz=1とおくと、底ak の間の関係に焦点が当たる。
  a=1+k/1+k2/ 1・2+ k3/ 1・2・3+k4/1・2・3・4+···    (2)  
k は底a に依存している。a=10(常用対数)ではだいたい k=2.30258ほどである。反対に底 ak に依存する。k=1としたとき(2)式は次のようになる。
  a=1+1/1+1/ 1・2+ 1/ 1・2・3+1/1・2・3・4+··· 
オイラーはこれを計算して、2.71828182845904523536028としている。そして、これを文字 eで表わすことを提起している(exponential(指数の)の eなのだろうか、それともEuler(オイラー)の eなのだろうか)。
  e=1+1/1+1/ 1・2+ 1/ 1・2・3+1/1・2・3・4+···      (3)
これは
  e=limn→(1+1/n) n
と括ることができる。e は自然対数(もしくは双曲線対数)の底を表わしている。これはネイピアの対数に潜んでいたものをはじめて顕在化したものである。強調していえば、ネイピア数はここにこのように出現した。

(1)式にもどろう。オイラーは z=1、k=1 を代入することによって、自然対数の底、ネイピア数 e を導いた。こんどは、k=1だけを代入して指数関数を導く。強調していえば、ここに指数関数が出現する。k=1 を代入することによって、ae に変わる。そして z は変数として現れる。(1)式は次のようになる。
  ez=1+z/1+z2/ 1・2+ z3/ 1・2・3+z4/1・2・3・4+···     (4) 
ここに「冪指数が変化量である冪」(オイラー)として指数関数が現れた。その級数表示は、次のように集約できる(注)。
  ez=limn→(1+z/n) n 

オイラーが冪から出発して、(3)式、ネイピア数(自然対数の底)を導き、(4)式、指数関数を提起する過程を見てきた。次に対数に移ろう。

(注)これはオイラーの表記では次のようである。
    ez=(1+z/i) i



  

ひさしぶりにCloud LaTexを使った

2020-05-07 | 日記
ひさしぶりにLaTexを使ってみようという気になった。最近、数式の入力が多く、見栄えを考えるとLaTexの魅力は大きいと思った。分数、平方根、極限、積分などHTMLでは限界がある。しかし、LaTexはハードルが高い。2年ほど前にコンピュータを新調したとき、インストールはやめて、Cloud LaTexを使うことにしたが、わからないことが多く、ほとんど使えなかった。

2年ぶりに訪れると、すんなり入れず、誰何された。入ってみると、当時のファイルは残っていた。よく理解していなかったところに、忘れているところがあり、途方に暮れてしまった。それでも試行錯誤していると、プロジェクトを選ぶと編集可能なファイルが出てくること、ターゲット設定をするとコンパイル可能なファイルを選択できることなどがわかってきた。しかし、たいていエラーを指摘され、思うような出力にならない。もっと修業が必要である。
しばらくはHTMLでやっていく。先日の記事の数式を比較をしておこう。

az=1+kz/1+k2z2/1・2+ k3z3/1・2・3+k4z4/1・2・3・4+···  
は、

である。
az=1+ n/1・kz/n + n(n-1)/1・2・k2z2/n2 + n(n-1)(n-2)/1・2・3・k3z3/n3 +n(n-1)(n-2)(n-3)/1・2・3・4・k4z4/n4 +··· 
は、

である。こちらは分数が2つある。区別するために、半角のドットと全角のドットを使ったのだが、下の数式が浮かんできただろうか。

指数と対数の起源2

2020-05-06 | 指数と対数
a ω= 1+ だから、nにどのような値を代入しても、
    a=(1+) n    (1)
となる。
ここで右辺を二項展開すると、
 a= 1+ n/1・ + n(n-1)/1・2・k2ω2 + n(n-1)(n-2)/ 1・2・3・ k3ω3+n(n-1)(n-2)(n-3)/1・2・3・4・k4ω4 +··    (2)

オイラーは、は有限な値 z を有するものとする。=z(有限値)である。ここで ω は無限小だから z が有限の値をとるためには、nは無限大でなければならない。=z より、ω は ω=z/nとなり「無限に大きい分母をもつ分数」である。わざわざ分数と記した理由はここにあったのではないだろうか。
(1)式に=z、ω=z/n を代入すると、次のようになる(注)。
    az=limn→(1+kz/n) n
これを展開すると、
 az=1+ n/1・kz/n + n(n-1)/1・2・k2z2/n2 + n(n-1)(n-2)/ 1・2・3・ k3z3/n3 +n(n-1)(n-2)(n-3)/1・2・3・4・k4z4/n4 +···   (3)
となる。

(2)と(3)を比べてみると、(2)では両辺に分散していた n が(3)では右辺に集まっている。(3)では、左辺は有限のまま留まるのに対して、右辺は無限に広がっていく。n→だから、 n(n-1)/n2 、n(n-1)(n-2)/ n3 、…はすべて1に収束するので、(3)式は次のようになる。

   az=1+kz/1+k2z2/ 1・2+ k3z3/ 1・2・3+k4z4/1・2・3・4+···  

右辺に着目すると、k は底 a に依存する定数、また z も定数である。すると、右辺は有限な数の連鎖が無限に続いていることになる。

(注)
オイラーはこのように表現しているわけではない。まず、極限の記号は使っていない。次にn ではなく、i を使っている。これは無限(infinity)の頭文字で、無限大数を表わしている。オイラーは
     az=(1+kz/i) i
と表記している。i は、n(limn→)を表わしている。


指数と対数の起源

2020-05-05 | 指数と対数
『オイラーの無限解析』(高瀬正仁訳、海鳴社、 2001年)7章は「指数量と対数の級数表示」だが、これまで理解できたといえる状態ではなかった。こんど「オイラーの公式、起承転結。」をまとめるさい、7章を見ていると、「消失する弧」(8章)と対比していえば、「生成する冪(べき)指数」に着目して級数表示をしている箇所が目に留まった。8章と同じ方法で級数表示をやっているように思えた。共通するのは無限小と無限大の積が有限な値を保つという処理の仕方である。それは有限のなかに無限を囲い込むという試みである。これが読み解くきっかけになった。

オイラーは a0 = 1から始めている。a > 1のとき、冪指数が0から無限小だけ増加したら、冪も1から無限小だけ増加すると設定している。
(引用はじめ)
まずa0 = 1。しかももしaが1より大きな数であれば、aの冪指数が増大するにつれて、それに伴って〔aの〕冪の値もまた増大していく。これより明らかになるように、もし冪指数が無限小だけ0を越えたなら、冪もまた無限小だけ1を凌駕する。そこでωは無限に小さい数、すなわち、どれほどでも小さくてしかも0とは異なる分数としよう。
(引用おわり)
そして、ψを無限に小さい数として、
     aω = 1+ψ
と設定している。ここから、無限小のψと無限小のωの関係について、等しい(ψ=ω)か大きい(ψ>ω)か小さい(ψ<ω)かのいずれかだから、底aに依存する数kを導入してψ=kωとおき、
     aω = 1+kω
としている。ここがネイピアの対数、常用対数表、ニュートンの双曲線の面積の級数表示から遡行してオイラーが立った場所である。いったい、このような無限に小さいωから、どのようにして指数や対数の級数表示が導かれるのだろうか。

(注)分数
引用文中の分数には、次のような註が付けてある。
「無限小数」の定義。わざわざ「分数」と明記されている理由はわからないが、任意の無限小数が考えられているとみてよいと思う。



オイラーの公式、起承転結。案内

2020-05-04 | オイラーの公式
「オイラーの公式、起承転結。」をHTMLで作成し、ホームページ「対話とアウフヘーベン」で見られるようにしました。CPでブログをご覧の方にお勧めします。

オイラーの公式、起承転結。

「はじめに」より

 10年ほど前(2009年)、わたしのもとに「Eulerの公式の導出いろいろ」というタイトルの論文(2008.2.2稿)が送られてきた。わたしはホームページに「オイラーの公式と複合論」(2005年)を公表していた。それに対する参考文献として送付されたものである。そこには次のような7つの導出方法がまとめられていた。

  1. Taylor展開を用いた導出
  2. 微分方程式を用いた導出ーその1
  3. 微分方程式を用いた導出ーその2
  4. de Moivreの公式を用いた導出
  5. 新関の導出
  6. Eulerの導出
  7. Eulerの発見法的な導出

 知っていたのは、1と7だけだった。わたしの論考は基本的に7. Eulerの発見法的な導出と同じもので、「無限解析」(『オイラーの無限解析』)に依拠した志賀浩二の『無限のなかの数学』を参考にしたものである。わたしは『オイラーの無限解析』ではじめて導かれたものと思っていたので、それ以前の導出を示す「グレイゼルの数学史Ⅲ」の記述は意外に思われた。矢野忠先生(と呼ばしてもらう、そのときはまったく知らない人だった。)はグレイゼルが言及している論文と「無限解析」の時間的前後関係を気にされていた。いいかえると、オイラーの公式の発見は6. Eulerの導出が先で、7. Eulerの発見法的な導出は後ではないかということだった。「グレイゼルの数学史Ⅲ」の記述は確かにそれを指示していた。6. Eulerの導出は、先生が「グレイゼルの数学史Ⅲ」の記述にもとづいてオイラーの発見を推論したものである。それは自由調和振動の微分方程式の特殊解が推論の核になっていて、「無限解析」(『オイラーの無限解析』)とはまったく違っていた。これについて意見を求められていたのである。

 いまにして思えば、そのときは、6. Eulerの導出をよく理解できていなかった。『オイラーの無限解析』の導出だけに固執していた。5年ほど前に「オイラーの公式と弁証法」(2016年)をまとめたときも、6. Eulerの導出についてはまったく考慮していない。

 ところが、今年(2020年)になって、「数学・物理通信」(10巻2号、2020.3.31)に「微分方程式と三角関数」(矢野忠)が載り、興味をもった。オイラーの公式が喚起されて、「Eulerの公式の導出いろいろ」が「数学・物理通信」に掲載されているのではないかと思い、探してみた。すると、4巻2号(2014年9月)にあった。改めて読んでみると、6. Eulerの導出の意味がわかるような気がした。オイラーはたしかに異なったアプローチをしている。6. Eulerの導出と7. Eulerの発見法的な導出をつなげば、オイラーの公式の発見の過程に迫れるのではないかと思われた。

オイラーの公式、起承転結。
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