北よりの風が吹いている。季節が夏から秋に変わるとき、日本列島には
秋雨前線が停滞する。これは南にある高温多湿な太平洋高気圧と、
北の大陸にある高気圧の間にできる前線である。
初夏に停滞する梅雨前線が北上すると、日本列島は夏を迎えるが、
秋雨前線は季節の移ろいとともに次第に南下する。そして10月頃になると、
沖縄も太平洋高気圧ではなく、大陸の高気圧に覆われるようになる。
すると、それまでの南東季節風ではなく、大陸の高気圧からの風が吹くようになってくる。
この初めに吹き始める北風のことを沖縄では「新北風」と書いて「ミーニシ」
と呼んでいる。
ちょうど本土では木枯らしが吹き始めて、テレビのニュースで「木枯らし1号」
の話題が出るころ。
ミーニシは乾燥した空気で構成されている。
太平洋高気圧由来の高温多湿な南東季節風と比べ、カラッとしているので
過ごしやすい。寒露の時期に重なるので、渡り鳥のサシバもこの風を利用して
渡ってくる。
しかし、今年はいつもとは違うようだ。
吹いている北よりの風は大陸高気圧の影響を受けた秋雨前線からの風ではなく、
かなり湿気を帯びている。これは近海で発生している熱帯性低気圧、
いわゆる台風の卵の影響で送られてくる風である。
空の雲はちぎれながらかなりのスピードで流れて行く。
本来、ミーニシは台風の季節の終了を告げる風であるが、
熱低の風は大きな台風の予兆でもある。