ケベックリタイヤ日記

ケベックでリタイア暮らし。ながらえば憂しとみた世も今は忘れた。毎日悦びの種をみつけてぽりぽりかじりたい。

冬陽

2018-01-11 05:57:01 | 暮す
 窓際に 車椅子よせ 冬陽浴び

去年の12月から公立のホスピスで週一回のみボランテイア始めた。殊勝な動機からでなく、ほんの少しでも社会と接触する大事さを感じたから。ポポットといって一人暮らしの老人の為に一食300円でつくりお宅まで届けるボランテイアもあるが、ホスピスは家から歩いて20分、近いという理由でこちらにした。散歩も兼ねて。義父は85才でいまだにボランテイアしてる。義母も活動はできないがチャリテイーなどには参加してる。皆さんおっしゃるには、ボランテイアは自分のためとのこと。車椅子押すときは未来の自分を乗せて押してる気分とか。

175人の患者を抱える公的機関であるホスピスは毎週2-3人が最期を迎え、翌日には新しい患者さんが入居する。待機患者さんが多いとのことでいつも満室。

初日はショックで胸いっぱい。案内した方が「皆さん、初日はトラウマなのよ」と教えてくれた。程度の差こそあれ80パーセントが認知症とのことで、わけのわからないことを言う患者さんとの応対など見事なもの。各部屋には(8畳間ぐらいだろうか)、あたかも自宅にいるかのように、壁に様々な家族の写真や思い出(結婚式や旅行)の品が飾ってあり、洗面、お手洗いが備えられている。6年前に建設され、どの部屋も明るく陽光に溢れ清潔で、ほとんどの患者さんが車椅子を窓際に寄せうたたねしていた。おむつを取り替えるワゴンが通ったときは胸が痛んだ。

アニメーターと言って患者さん達のために音楽会を開いたり等、レクレーションを担当する専門家もいる。こういった施設建設維持のために税金がお給料の半分だろうと、公務員とてボーナスがなかろうと、退職金がなかろうと、消費税が15パーセントだろうと、ケベックは貧乏と言われようと、ケベックで親族による介護殺人も介護自殺もこれまで聞いたことがない。

ボランテイアの方たちジョークいっぱい。エレベーターに車椅子乗せるときは「ただいまバスは満員です、増発が決定するまでしばらくのご辛抱」と、モントリオールのバス運行増発とひっかけたりして皆で大笑い。

年を重ねることは悪くない。見方や考え方が変わってきてまた新たな地平が開ける。今が人生で一番幸せを感じてる。夫婦ともども持病があり、お薬や治療を続けているが、歩けるし、目も見える、耳も聴こえる。こうした平穏無事な生活が有難く思え、それがいつまでも続くものではないと知るがゆえに、一日で夕陽の美しさに思わずはっと見とれる一瞬でもあれば今日もしあわせと、なぜか中島らもみたいな心境。

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