大学を卒業してから俺はずっとブラブラしていた。
家は代々続いた由緒ある華道の家元である。
家を継げばいいじゃいかと思うかもしれないが兄が継いでいるし俺にはどうも才能がない。
親父はブラブラしてないで早く職につけと言う。
だが、母親は「時がくればこの子は自分にあった道を選びますよ」と親父をなだめる。
俺は「時」って言うのはどういうときなんだろうと思いながらやっぱり毎日をブラブラとしてすごした。
俺1人ブラブラしてたって傾く家でもなし、それ以上は両親も何も言わなくなった。
そんなある日。俺はテレビを寝転がって見ていた。テレビでは伝統の技なんていう特集をしていた。
手書きの友禅の工房が出てきた。
俺はなんだか画面に吸い込まれるように起き上がった。
「これだ!」俺は叫んでいた。
なんだかわからないが俺の職業だと感じた。いても立ってもいられなくなり両親に「やりたい仕事が出来た。家を出る」と告げた。
親父は腰を抜かしていたが、母親はゆったりと微笑んで「頑張ってね」と言った。
テレビにうつっていた工房を必死で探し、そこをたずねた。
そこは父親と娘二人でやっている工房だった。
「弟子にしてください」と頼みこむが、父親の方が「弟子はとらないんだよ。うちは代々、一族の者だけが継ぐことになっている。うちの技は一族の者にしか何故か伝わらない。代々受け継がれた才能と言うのがまぎれもなくあるのだよ」と言った。
俺はそれでも引き下がらなかった。全然、何もわからないのに何故こんなに必死になるのかわからないが・・・。
「そこをなんとかお願いします」と頼みこんで顔をあげたときに娘の方と目が合った。
娘はぽっと赤くなり父親に言った。
「お父さん、置いてあげて見たら」と。
俺は自分で言うのもなんだが結構イケメンの部類に入ると思う。
「ありがとう」と娘に向かって微笑んだ。また、娘は今度は首まで赤くなった。
という事で俺はその工房で働くことになった。
そして、働いて初めてわかった事だけど俺にはまったくと言っていいほど才能はなかった。何故、あんなに弟子になりたいなんて思ったのか自分でも不思議である。
でもそうわかった時、俺は娘と恋に落ちていた。娘に惚れたと言うより俺はその才能にほれ込んでしまっていた。そして娘の方が俺にぞっこんだった。
父親の方は案外喜んでくれた。俺には絵の才能はなかったが経営の方の才能は「そこそこ」あった。
何せ小さな工房なのでそこそこの才能があればやっていける。二人はその方面にはまったくの無頓着だったので俺が入った事により経営は今まで以上安定してきた。
実家では婿に入るというので親父は少し反対したが、またもや母親が説得してくれた。
そして俺はその娘と結婚する事になった。
妻にはすごい才能がありそのうちに義父の腕を超えるまでになっていった。
俺は妻の仕事を調節し、2人に足りない経理的な面をサポートしていった。とは言っても実際に商品をうむのは妻なので私の生活は非常にゆったりとしたものだった。
それでも2人の娘にも恵まれ生活も安定していた。妻の方にも不満はなかたっと思う。
お互いに幸せだった。
ただ、上の娘は妻のあとを継ぐように舅も妻も教え込むがまったくと言っていいほど才能がなかった。
そのかわり下の娘は誰が教えることでもないのに勝手に工房の仕事を覚えどんどん上達していった。
そんな娘二人は成長して行ったのだが・・・
上の娘は短大卒業後、就職もせずブラブラとすごす毎日だった。なんだか昔の自分を見ているような気分になり、毎日小言を言い続けた。
下の娘はその才能を発揮し、今ではその若い感覚で妻を抜く勢いである。
可哀想なことに上の娘は妻の方の一族の血を受け継がなかったようだ。
そんなある日、上の娘はふらっと出ていったかと思うと1人の青年を連れて帰ってきた。
「私、この人と結婚します」と。
聞けばその青年はある音楽一家の1人息子で今注目の若手のバイオリン奏者だと言う。
上の娘は言った。
「ある日、テレビを見てたらこの人が映って私もなんだかバイオリンを弾いて見たくなってこの人のところに押しかけて行ったの」
押しかけられたほうはさぞびっくりしただろうが、娘は家を継ぐ才能はなかったが、親の口から言うのもなんだがすごい美貌の持ち主である。
この青年はひと目で娘の美貌に目を奪われたのだろう。
ただ、娘はまったく音楽などをやった事もなく、バイオリンなんて弾いたこともない。
この縁談は我家も結構由緒正しい家柄なのですんなりと進んだ。
上の娘は俺の血を引いている。道を歩きながら考えた。
足元にあったタンポポの綿毛を踏んだ。
すると種が風に吹かれ飛んで行った。
ふと思う。
妻の一族は代々その才能を受け継いできたのだと言う。そうするともしかすると俺の一族はこうやってよりよい生活を送れるように生きる場所を探し、時期が来たら飛んで行くのではないかと。タンポポの綿毛のように。
俺の母親の微笑を思いだした。母親もまたかなりの美貌の持ち主で、父と結婚してからは幸せで優雅な生活を送ってきた。
上の娘は幸せに生きるだろう。なんだかそんな気がした。
これも俺の一族の才能なのだ。
心配なのは下の娘である。妻の才能を継いで工房の後継者ではあるが、残念ながら我が一族の血は受け継がなかったようだ。上の娘に比べ容貌がかなり見劣りする。
ふと、母親に連絡をとってみようかと思った。親族の中で俺のようなのはいなのかと・・・。
でも、無理かもしれない。あの飛んでいる綿毛のように我が一族は自分でえらんで飛んで行ってしまうのだから。
飛んでいって自分によりよい環境で根をおろし、そしてまた自分の子孫を飛ばす。こんな一族だってあってもいいではないか。
家は代々続いた由緒ある華道の家元である。
家を継げばいいじゃいかと思うかもしれないが兄が継いでいるし俺にはどうも才能がない。
親父はブラブラしてないで早く職につけと言う。
だが、母親は「時がくればこの子は自分にあった道を選びますよ」と親父をなだめる。
俺は「時」って言うのはどういうときなんだろうと思いながらやっぱり毎日をブラブラとしてすごした。
俺1人ブラブラしてたって傾く家でもなし、それ以上は両親も何も言わなくなった。
そんなある日。俺はテレビを寝転がって見ていた。テレビでは伝統の技なんていう特集をしていた。
手書きの友禅の工房が出てきた。
俺はなんだか画面に吸い込まれるように起き上がった。
「これだ!」俺は叫んでいた。
なんだかわからないが俺の職業だと感じた。いても立ってもいられなくなり両親に「やりたい仕事が出来た。家を出る」と告げた。
親父は腰を抜かしていたが、母親はゆったりと微笑んで「頑張ってね」と言った。
テレビにうつっていた工房を必死で探し、そこをたずねた。
そこは父親と娘二人でやっている工房だった。
「弟子にしてください」と頼みこむが、父親の方が「弟子はとらないんだよ。うちは代々、一族の者だけが継ぐことになっている。うちの技は一族の者にしか何故か伝わらない。代々受け継がれた才能と言うのがまぎれもなくあるのだよ」と言った。
俺はそれでも引き下がらなかった。全然、何もわからないのに何故こんなに必死になるのかわからないが・・・。
「そこをなんとかお願いします」と頼みこんで顔をあげたときに娘の方と目が合った。
娘はぽっと赤くなり父親に言った。
「お父さん、置いてあげて見たら」と。
俺は自分で言うのもなんだが結構イケメンの部類に入ると思う。
「ありがとう」と娘に向かって微笑んだ。また、娘は今度は首まで赤くなった。
という事で俺はその工房で働くことになった。
そして、働いて初めてわかった事だけど俺にはまったくと言っていいほど才能はなかった。何故、あんなに弟子になりたいなんて思ったのか自分でも不思議である。
でもそうわかった時、俺は娘と恋に落ちていた。娘に惚れたと言うより俺はその才能にほれ込んでしまっていた。そして娘の方が俺にぞっこんだった。
父親の方は案外喜んでくれた。俺には絵の才能はなかったが経営の方の才能は「そこそこ」あった。
何せ小さな工房なのでそこそこの才能があればやっていける。二人はその方面にはまったくの無頓着だったので俺が入った事により経営は今まで以上安定してきた。
実家では婿に入るというので親父は少し反対したが、またもや母親が説得してくれた。
そして俺はその娘と結婚する事になった。
妻にはすごい才能がありそのうちに義父の腕を超えるまでになっていった。
俺は妻の仕事を調節し、2人に足りない経理的な面をサポートしていった。とは言っても実際に商品をうむのは妻なので私の生活は非常にゆったりとしたものだった。
それでも2人の娘にも恵まれ生活も安定していた。妻の方にも不満はなかたっと思う。
お互いに幸せだった。
ただ、上の娘は妻のあとを継ぐように舅も妻も教え込むがまったくと言っていいほど才能がなかった。
そのかわり下の娘は誰が教えることでもないのに勝手に工房の仕事を覚えどんどん上達していった。
そんな娘二人は成長して行ったのだが・・・
上の娘は短大卒業後、就職もせずブラブラとすごす毎日だった。なんだか昔の自分を見ているような気分になり、毎日小言を言い続けた。
下の娘はその才能を発揮し、今ではその若い感覚で妻を抜く勢いである。
可哀想なことに上の娘は妻の方の一族の血を受け継がなかったようだ。
そんなある日、上の娘はふらっと出ていったかと思うと1人の青年を連れて帰ってきた。
「私、この人と結婚します」と。
聞けばその青年はある音楽一家の1人息子で今注目の若手のバイオリン奏者だと言う。
上の娘は言った。
「ある日、テレビを見てたらこの人が映って私もなんだかバイオリンを弾いて見たくなってこの人のところに押しかけて行ったの」
押しかけられたほうはさぞびっくりしただろうが、娘は家を継ぐ才能はなかったが、親の口から言うのもなんだがすごい美貌の持ち主である。
この青年はひと目で娘の美貌に目を奪われたのだろう。
ただ、娘はまったく音楽などをやった事もなく、バイオリンなんて弾いたこともない。
この縁談は我家も結構由緒正しい家柄なのですんなりと進んだ。
上の娘は俺の血を引いている。道を歩きながら考えた。
足元にあったタンポポの綿毛を踏んだ。
すると種が風に吹かれ飛んで行った。
ふと思う。
妻の一族は代々その才能を受け継いできたのだと言う。そうするともしかすると俺の一族はこうやってよりよい生活を送れるように生きる場所を探し、時期が来たら飛んで行くのではないかと。タンポポの綿毛のように。
俺の母親の微笑を思いだした。母親もまたかなりの美貌の持ち主で、父と結婚してからは幸せで優雅な生活を送ってきた。
上の娘は幸せに生きるだろう。なんだかそんな気がした。
これも俺の一族の才能なのだ。
心配なのは下の娘である。妻の才能を継いで工房の後継者ではあるが、残念ながら我が一族の血は受け継がなかったようだ。上の娘に比べ容貌がかなり見劣りする。
ふと、母親に連絡をとってみようかと思った。親族の中で俺のようなのはいなのかと・・・。
でも、無理かもしれない。あの飛んでいる綿毛のように我が一族は自分でえらんで飛んで行ってしまうのだから。
飛んでいって自分によりよい環境で根をおろし、そしてまた自分の子孫を飛ばす。こんな一族だってあってもいいではないか。