8月27日(木)午後2時半 総武線平井駅を下りた。
不確かな記憶では10年以上は経っているだろう。
南口から歩き出したが、加速度的に増すボケが道順を間違える。
仕方ない駅前交番に戻り、手帳の住所録を示して
平井7丁目の道順を聞いた。
若い警察官が丁寧に教えてくれる。
入り組んだ道なので大通りまで道案内をする。
優しげなお巡りさんが、私の短パンとテニスシューズ
背中にはショルダー型バッグをチラリと見て訊ねた。
「歩くと結構時間がかりますよ」
「道路上で危険なことが最近起きています」
私は立ち止まり、やおら背中から鞄を下ろし
道端でファスナーを広げた。
ファイルを取り出しお巡りさんに見せた。
「これを製作しに、工場に行くのです」
警官は「おお!是は良いですね」
「私の出身地でも違いはありますが同じような物を作ってます」
「地域社会の安全にはとても良いことです」
お巡りさんは笑顔で交番に戻って行った。
2年前 迷い込んだ住宅街で警察官に睨みつけられたことを思い出した。
歩き出したが時間がかかりそうなので
通りかかったタクシーに乗車した。
目的地に着いたところで、息子が自転車で横道を入って行くのが見えた。
息子は柳橋から自転車でやってきたのだ。
旧中川沿い横道を入った
通称 旗竿住宅である。
息子は自転車で周囲をウロウロしている。
初めて来るので工場があると思っている。
出かける前に息子が言った。
「キチンとした服装を用意していない」
「大丈夫 気にするな」
細い道のどん詰まりを左折して
川土手横の2階建ての玄関で
名前を名乗った。
玄関前には、工具と裁断機が置いてある。
暫くすると、ランニングシャツで眼鏡の老人が出てきた。
「やあ~久しぶり 互いに元気で良かった」
玄関前で息子を紹介して
デザイン画を見せて説明する。
最末端の成型加工の職人さんとの
やり取りは、電話 FAXはダメ
メール PCによるデータ渡しもNGなのだ。
全て、手書きと色付け画を元に打ち合わせするのだ。
打ち合わせは10分で済んだ。
工場ではなく一階は畳敷き部屋で、夫婦とパートのオバサンで作業する。
2階は住まい。
川端に製作したばかりの硬質塩ビ加工のパンフレット立てが
無造作に並べてあった。
超有名銀行の案内パンフ立て。
4段階を通ってクライアントに納品される。
下町だが静かでのどかな中川沿いを歩いた。
運転手が「ボラとハゼ、セイゴが釣れる」と教えてくれた。
息子は自転車で戻った。
私は徒歩で帰ることにした。
下町は街並みがゴチャゴチャして分かりにくい。
しかし、東京の灯台 スカイツリーに向かって歩く。
下町の道路を左右見ながら進むと
チンチンと電車線路の遮断機の音がする。
突然 商店と、しもた屋が混在する道に線路があったのだ。
東武亀戸線 路線距離3.4キロ 2両編成
都心になんともローカル線があるのだ。
十間通りは、居酒屋放浪記に登場するような店が多くある。
15時半 スカイツリーが見えてきた。
四つ目通りを歩き錦糸町駅に着いた。
魚寅で、シラスとホヤを買って
国道14号を歩き両国橋を渡り
16時半柳橋事務所着。
翌日 9時 平井の職人から見積価格の連絡きた。
息子は、メッセージボードの製作価格に驚いた。
「驚異的安さだ」と唸った。
徽章バッジ、成型会社が見積もり提示した価格の
およそ三分の一なのだ。
中国で製作するよりも安い。
息子に現場を見せたかった。
カッコ良いスーツを纏い
快適なオフィスでPC画面と睨めっこして
メールで指示して何も生まれない。
三現主義を見せなければいけない。