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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

AIと科学的社会主義③ 知能の解明をめざす

2024-09-24 05:13:16 | 政治・社会問題について
AIと科学的社会主義③ 知能の解明をめざす

経済研究者 友寄英隆さん

人工知能(AI)の研究・開発は、医学や生命科学の分野にも、大きな影響をもたらしつつあります。
日本の人工知能学会が総力をあげて編集した『人工知能学大事典』(2017年)では、AIと脳科学との関係について次のように解説しています。
「人工知能の研究は、人間の知能を人工物として実現することを目的とするが、それだけでなく、それを通じて知能の働きを解明することを目指す研究分野でもある」
実際に、近年の急速なAIの技術的な進歩、たとえば生成AIのような大規模言語モデルの開発は、人間の脳のニューロン(神経細胞)を模した深層学習によって急速に発展しました。



共立出版(2017年)

量子脳の可能性
AIと心の関係については、さまざまな研究や論争がありますが、ここでは、20年のノーベル物理学賞を受賞したロジャー・ペンローズ博士の提唱している量子脳理論にふれておきましょう。
ペンローズ博士は、AIについて物理学の視点から論じた『皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則』(原著:1989年)を発表しています。そのなかで、人間の脳の神経細胞が生成する意識は無数の量子によるものなので、量子論でしか説明できない、そのため現在の電子コンピューターのレベルでは人間の心は実現できないと主張しています。逆に言えば、量子コンピューターが実現したら「量子脳」の可能性が生まれるということになります。
広い意味の人間の精神的活動には、「知」だけでなく、《知・情・意》の「情」すなわち《喜怒哀楽》のようなさまざまな感情の働きも含んでいます。また《知・情・意》のなかの「意」は、人間の自律的な意思決定のことを指しています。
さらに、人間の脳による精神的活動、心の動きは、目、耳、鼻、舌、皮膚などの感覚器官、いわゆる五官が外界と接触することによって成り立っています。また、それらの認知活動は、手や足などの身体全体の活動と切り離すことができません。
その意味では、AIの研究にとっては、人間の知能の研究だけでなく、身体のあらゆる機能を研究する医学や生理学の研究も必要です。生命科学や生物学、さらに心理学、認知科学、情報科学、スポーツ科学などとも結びついています。


人類史の発展と疫学転換による寿命の延伸
社会制度疫学転換(死亡率の変化)寿命(年)
原始社会第1の疫学転換
感染症蔓延(まんえん)による死亡率上昇
20~40
古代社会
封建社会第2の疫学転換
感染症制圧による死亡率低下
30~50
資本制社会
第3の疫学転換
循環器系疾患制圧による死亡率低下
50~80
将来第4の疫学転換
がん制圧による死亡率低下
80~120
未来社会
自然との物質代謝
AIの利用・共生
第5の疫学転換
老化の遅延・減速(可能性)
120~?
堀内四郎論文(2001年)などを参考に著者作成


平均寿命120歳?
疫学とは、疾病の原因や流行、健康状態や寿命の条件を探究する医学の一分野です。コロナパンデミックとのたたかいのなかで、あらためて注目されています。
疫学の研究によると、人類の平均寿命は、原始社会の20~40歳から歴史発展とともに延伸し、資本主義時代には50~80歳代にまでなり、さらに将来の疫学転換の第5段階では120歳を超える可能性も展望されています。
人類の寿命の延伸の条件は、なによりもまず、地球環境の危機を打開して、人間と自然の物質代謝を正常に回復することです。そのうえで、AIなどの科学・技術の発展を真に人類全体の幸せのために利用できるようにすることが前提になります。そのためには、資本主義という階級対立、国家対立の時代を超えて、人類が共産主義・社会主義へむかって新たな時代を切り開いていかねばなりません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月19日付掲載


疫学とは、疾病の原因や流行、健康状態や寿命の条件を探究する医学の一分野です。コロナパンデミックとのたたかいのなかで、あらためて注目されています。
疫学の研究によると、人類の平均寿命は、原始社会の20~40歳から歴史発展とともに延伸し、資本主義時代には50~80歳代にまでなり、さらに将来の疫学転換の第5段階では120歳を超える可能性も展望。
人類の寿命の延伸の条件は、なによりもまず、地球環境の危機を打開して、人間と自然の物質代謝を正常に回復すること。そのうえで、AIなどの科学・技術の発展を真に人類全体の幸せのために利用できるようにすることが前提。そのためには、資本主義という階級対立、国家対立の時代を超えて、人類が共産主義・社会主義へむかって新たな時代を切り開いていかねばなりません。

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1 コメント

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マルテンサイト千年グローバル (サムライ鉄の道リスペクト)
2024-09-24 12:42:41
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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