資本主義の病巣 君臨するアマゾン⑥ おむつで赤字1億ドル
「アマゾンされる」(be Amazoned)ネット通販大手アマゾンの企業名を動詞にした造語が米国のビジネス界で使われています。新規参入した他社に自社の顧客と利益を根こそぎ奪われていく、という意味です。アマゾンの売上高の爆発的な伸びは小売業界全体を恐怖と混乱の渦に巻き込んでいます。
株式を公開した1997年度、アマゾンの売上高は1・48億ドル(1ドル=110円で163億円)でした。10年後の2007年度には100倍の148億ドル(1兆6280億円)へ。20年後の17年度には1202倍の1779億ドル(19兆5690億円)へ膨れ上がりました(グラフ)。17年度には米国だけで1061億ドル(11兆6710億円)を売り上げています。
何でも売る店
アマゾンはオンライン書店として1995年に開業しました。実店舗を持たずにインターネットで本を売る店です。取り扱う商品は書籍だけでした。
その後、雑貨、家電、アパレル、玩具、生鮮食品などに次つぎ参入し、「エブリシング・ストア」(何でも売る店)に急成長。あおりを受けて、既存の小売企業が減収や赤字にあえぐようになりました。世界最大の玩具小売企業トイザラスが17年9月に破たんした要因の一つもアマゾンの安売り攻勢だといわれます。「デス・バイ・アマゾン」(アマゾンによる死)という呼び名も生まれました。
日銀調査統計局の日銀レビューは物価に波及する「アマゾン・エフェクト(効果)」を分析しています。ネット通販の急拡大が「スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっている」というのです。(河田皓史・平野竜一郎両氏「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」)
ネット通販の利用が広がる要因は二つあるとレビューは指摘します。利便性と低価格です。実店舗に出向かず24時間いつでも買い物ができる上、場合によっては同じ商品を実店舗より割安に買えるということです。「(背景に)実店舗を持たないことによる各種コスト削減効果がある」
しかし、ネット通販には宅配コストが加わります。配送料込みで商品を実店舗より割安にして、利益が出るものでしょう。
千葉県市川市にあるアマゾンの物流センター
強引に値下げ
アマゾンの最高経営責任者(CEO)ジェフ・ベゾス氏の支援を得て書かれた伝記『ジェフ・ベゾス果てなき野望』(ブラッド・ストーン著)が価格設定の内幕を明かしています。ベビー用品のネット通販で業績を伸ばした新興企業クイッドシーをアマゾンが買収したときのことです。
会社の売却を拒んだクイッドシーにアマゾンは価格競争を仕掛け、ベビー用品価格を最大30%下げました。アマゾン・マムという新サービスで追い打ちをかけ、割安な紙おむつをさらに30%値引きしました。アマゾン側は「3カ月で1億ドル以上の赤字を紙おむつだけで出す計算」でした。成長が鈍化したクイッドシーは10年11月にアマゾンへの売却に追い込まれました。
利益を度外視して値引き攻勢をかけ、赤字を垂れ流すこともいとわない。アマゾンの低価格の背後には市場支配を目的とした強引な値下げ戦略があるのです。業界内での淘汰(とうた)が進んで「一部企業の寡占度が大きく高まれば、インターネット通販企業の価格設定行動が変化する可能性もある」と日銀レビューは指摘します。
アマゾンの廉売のしわ寄せはあらゆる方面に及んでいます。一例が物流センターの労働条件です。前出の伝記にはアマゾンが「不必要な費用だとしてエアコンは設置しなかった」経緯が書かれています。気温が38度以上になったときだけ扇風機を置いたといいます。熱中症で病院に搬送される労働者が続出したのは、本拠地米国でも同じだったのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月3日付掲載
最初はオンライン書店だけだったけど、次々と業者を買収して販売分野を広げていく。買収のためには金に糸目をつけない。
その点は「楽天」と共通した点があるかもしれませんね。
「アマゾンされる」(be Amazoned)ネット通販大手アマゾンの企業名を動詞にした造語が米国のビジネス界で使われています。新規参入した他社に自社の顧客と利益を根こそぎ奪われていく、という意味です。アマゾンの売上高の爆発的な伸びは小売業界全体を恐怖と混乱の渦に巻き込んでいます。
株式を公開した1997年度、アマゾンの売上高は1・48億ドル(1ドル=110円で163億円)でした。10年後の2007年度には100倍の148億ドル(1兆6280億円)へ。20年後の17年度には1202倍の1779億ドル(19兆5690億円)へ膨れ上がりました(グラフ)。17年度には米国だけで1061億ドル(11兆6710億円)を売り上げています。
何でも売る店
アマゾンはオンライン書店として1995年に開業しました。実店舗を持たずにインターネットで本を売る店です。取り扱う商品は書籍だけでした。
その後、雑貨、家電、アパレル、玩具、生鮮食品などに次つぎ参入し、「エブリシング・ストア」(何でも売る店)に急成長。あおりを受けて、既存の小売企業が減収や赤字にあえぐようになりました。世界最大の玩具小売企業トイザラスが17年9月に破たんした要因の一つもアマゾンの安売り攻勢だといわれます。「デス・バイ・アマゾン」(アマゾンによる死)という呼び名も生まれました。
日銀調査統計局の日銀レビューは物価に波及する「アマゾン・エフェクト(効果)」を分析しています。ネット通販の急拡大が「スーパーなど既存の小売企業が直面する競争環境を厳しいものにし、値下げ圧力にもつながっている」というのです。(河田皓史・平野竜一郎両氏「インターネット通販の拡大が物価に与える影響」)
ネット通販の利用が広がる要因は二つあるとレビューは指摘します。利便性と低価格です。実店舗に出向かず24時間いつでも買い物ができる上、場合によっては同じ商品を実店舗より割安に買えるということです。「(背景に)実店舗を持たないことによる各種コスト削減効果がある」
しかし、ネット通販には宅配コストが加わります。配送料込みで商品を実店舗より割安にして、利益が出るものでしょう。
千葉県市川市にあるアマゾンの物流センター
強引に値下げ
アマゾンの最高経営責任者(CEO)ジェフ・ベゾス氏の支援を得て書かれた伝記『ジェフ・ベゾス果てなき野望』(ブラッド・ストーン著)が価格設定の内幕を明かしています。ベビー用品のネット通販で業績を伸ばした新興企業クイッドシーをアマゾンが買収したときのことです。
会社の売却を拒んだクイッドシーにアマゾンは価格競争を仕掛け、ベビー用品価格を最大30%下げました。アマゾン・マムという新サービスで追い打ちをかけ、割安な紙おむつをさらに30%値引きしました。アマゾン側は「3カ月で1億ドル以上の赤字を紙おむつだけで出す計算」でした。成長が鈍化したクイッドシーは10年11月にアマゾンへの売却に追い込まれました。
利益を度外視して値引き攻勢をかけ、赤字を垂れ流すこともいとわない。アマゾンの低価格の背後には市場支配を目的とした強引な値下げ戦略があるのです。業界内での淘汰(とうた)が進んで「一部企業の寡占度が大きく高まれば、インターネット通販企業の価格設定行動が変化する可能性もある」と日銀レビューは指摘します。
アマゾンの廉売のしわ寄せはあらゆる方面に及んでいます。一例が物流センターの労働条件です。前出の伝記にはアマゾンが「不必要な費用だとしてエアコンは設置しなかった」経緯が書かれています。気温が38度以上になったときだけ扇風機を置いたといいます。熱中症で病院に搬送される労働者が続出したのは、本拠地米国でも同じだったのです。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月3日付掲載
最初はオンライン書店だけだったけど、次々と業者を買収して販売分野を広げていく。買収のためには金に糸目をつけない。
その点は「楽天」と共通した点があるかもしれませんね。
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