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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保改定60年 第一部④ 第5条 日本防衛義務なし

2020-01-21 08:05:27 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第一部④ 第5条 日本防衛義務なし
「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対して、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動する」。こう規定した日米安保条約第5条は、日本が攻撃を受けた場合、米軍が自衛隊とともに反撃するという定説の根拠になっています。
外務省は第5条について、「米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である」と解説していますが、本当に日本を「防衛」するのか。
村田良平元外務事務次官は、「米国の日本防衛義務は、条約の主眼ではない」(『村田良平回想録』)と述べ、外務省の解釈と真っ向から反する見解を示しています。

否定する当事者
さらに、▼「『日本の防衛は日米安保により米国が担っている』と考える日本人が今なお存在する」が、「在日米軍基地は日本防衛のためにあるのではなく、米国中心の世界秩序(平和)の維持存続のためにある」(冨澤暉・陸自元幕僚長安全保障懇話会会誌、2009年7月)▼「誤解を恐れずに言うと、在日米軍はもう日本を守っていない」(久間章生元防衛相、『安保戦略改造論』)―といった見解が公然と出されています。
そもそも、第5条には文言上、米軍の「義務」は何ら明示されていません。米軍は安保条約・日米地位協定に基づいて作戦行動の自由を全面的に確保されており、日本を足掛かりに、地球規模の出撃を繰り返していることを、外交・軍事の当事者は熟知しているのです。日本が米軍に作戦上の「義務」を課すことは不可能です。
海兵隊など米軍に深い人脈を持つ軍事社会学者の北村淳氏は、こう解説します。
まず、「『自国の憲法上の規定及び手続に従って』という文言には、合衆国憲法に規定されることがうたわれています。対日軍事支援は政府や軍の意向だけで決定されず、最終的には連邦議会が決定するのです」。実際、合衆国憲法1条8節11項に、連邦議会の「宣戦布告権」が規定されています。
その上で、「中国による尖閣諸島や宮古島占領といった事態での本格的な軍事介入は米中戦争勃発につながるもので、議会がゴーサインを出す可能性は限りなくゼロに近い」と言います。



演習場内に投入され、展開する米海兵隊員=2017年3月10日、群馬・相馬原演習場

戦闘以外の支援
さらに、北村氏はこう指摘します。「『自衛隊は盾(後方支援)、米軍は矛(打撃力)』という役割分担が定着しており、多くの国民は『万が一の場合は世界最強の米軍が守ってくれる』と考えているが、軍事常識からいえば、第5条にある『日米共通の危険に対処する行動』には、偵察情報の提供、武器弾薬燃料の補給、軍事顧問団による作戦指導、その他多くの『戦闘以外の軍事的支援活動』が含まれています。かりに米国が日本に援軍を派遣して外敵と交戦することを『防衛義務』というならば、安保条約は米国に『義務』を課しているとはいえない」
安保条約第5条は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」が発生した場合、日米が共同行動をとるとしています。他方、北大西洋条約など、米国の他の条約では、当事国および米国のいずれも「共同行動」の適用範囲に含んでいます。他の軍事同盟は国連憲章第51条に基づく集団的自衛権の行使を前提としていますが、日本は憲法の制約上、集団的自衛権の全面的な行使ができないため、こうした規定になっています。
このため、日米安保は「片務的」「ただ乗り」との批判が米側から繰り返されてきました。その代表例が、トランプ米大統領です。


米国に“不公平”なのか
発言の真意は
「(日米安保は)不公平だ」「日本が攻められたときに米国はたたかわなければならない。しかし、米国が攻められたときに日本はたたかわなくてもいい。だから変えなくてはいけない」(2019年6月29日、大阪市での記者会見)
トランプ氏はそれ以前にも同様の発言を繰り返しており、「日米安保条約の破棄」まで言及しました。もちろん、同氏の真意は別のところにあります。「安保破棄、米軍撤退」で日本をどう喝し、米軍駐留経費のさらなる増額や米国製武器の大量購入、憲法9条改悪による自衛隊の役割分担の拡大などをのませることです。
実際、一連の発言を前後して、米メディアでは「米軍駐留経費総額の1・5倍」「思いやり予算の4~5倍化」といった、とてつもない負担要求が椙次いで報じられました。
そもそも、日米安保体制は米国にとって「不公平」どころか、①資産評価額で世界一の高価な米軍基地②他の同盟国と比べて突出した駐留経費負担③米植民地的な特権が付与された日米地位協定―など、世界で最も米軍に有利なものです。また、朝鮮戦争やベトナム戦争、対ソ「冷戦」などは、いずれも日本なしには実行できませんでした。在日米軍基地は、米国の軍事戦略上、身銭を切ってでも手放したくない最重要拠点なのです。
在日米軍は「日本防衛」とは無縁の、地球規模の遠征部隊です。しかし、日本政府は安保条約5条で米国の「対日防衛義務」が発生していると信じ、しかも、「米本土防衛」ができないという“負い目”があります。トランプ政権はまさに、そこを突いて日本政府をゆすり、たかろうとしているのです。



写真は上から順に、トランプ米大統領、航空自衛隊のステルス戦闘機F35A、安倍首相

共同作戦態勢
安保条約5条の本質は、米国の「対日防衛義務」ではありません。米軍と自衛隊の従属関係を深める日米共同作戦態勢=米軍とともに「戦争する国」づくりの深化にあります。
1960年の安保改定以降、日本の軍事費は急増し、自衛隊の強化と日米共同訓練の深化が進みます。78年、初めて策定された日米軍事協力の指針(ガイドライン)で、日本への武力攻撃が発生した際の役割分担に、朝鮮半島や台湾といった「極東有事」での共同作戦の研究が盛り込まれました。97年の改定では、地理的な限定のない「周辺事態」で自衛隊が米軍の支援を行う仕組みがつくられ、実質的な安保条約の大改定となりました。
この間、日本は米国のベトナム戦争やアフガニスタン、イラク戦争の出撃基地となり、自衛隊もインド洋やイラク派兵で米国の戦争に加担。「地球規模の同盟」となりました。
さらに、2015年の新ガイドライン策定と安保法制の成立で、集団的自衛権の“限定的”行使など、あらゆる事態で「切れ目なく」米軍を支援し、世界中で米国の起こす戦争に自衛隊が参戦する道がつくられました。地球全体から、宇宙・サイバー・電磁波といった新領域にまで“戦場”を拡大しています。
1970年代から90年代まで現場で安保の現場にいた林吉永・元航空自衛隊空将補は、憲法と自衛隊との両立に腐心してきたものの、ことごとく踏みにじられ、「まさになし崩しの連続だった」と振り返っています。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年1月20日付掲載


「日本が攻撃された時にアメリカは闘う義務があるが、アメリカが攻撃された時に日本は闘う義務がない」と言います。
でも実態は、アメリカが起こす戦争(アフガン、イラク戦争など)に程度の差はあれ自衛隊が協力するところにあります。


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