感染防ぐ病院内検査を 国の全額負担で全国に 東神戸病院院長 遠山治彦さんに聞く
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、医療機関や介護施設でのクラスター発生が後を絶ちません。神戸市の東神戸病院(166床、全日本民医連加盟)でも4月に発生、収束に全力をあげています。遠山治彦院長は痛恨の経験を踏まえ、「クラスターを防ぐためには、病院職員への頻回定期的なPCR検査で感染を早期に発見することが欠かせない」と訴えます。同院長に聞きました。
(内藤真己子)
とおやま・はるひこ 1961年香川県生まれ。神戸大学医学部卒。2017年から現職。
4月上旬、A病棟(仮称)で働く職員1人が発熱、翌日のPCR検査で陽性と分かりました。同じ病棟の患者・職員全員の約70人にPCR検査をしていくと、感染が患者さん7人に広がっていました。当院で入院患者の感染は初めてです。
10日後、別のB病棟(同)の入院患者さんが発熱しました。検査すると陽性でした。やはり同病棟の患者・職員全員に検査し、患者6人と職員3人が陽性と分かりました。二つの病棟間で職員や患者の接触はなく感染ルートは別だと考えられます。
病院職員のPCR検査で検体を採取する遠山院長=神戸市の東神戸病院(同病院提供)
3、4日に1回検査を続け、これまでに入院患者16人、職員8人の感染が確認されました。変異株検査を受けた人はすべて変異株です。当院はコロナ病床を届け出ていません。しかし病床逼迫(ひっぱく)で専門病院に転院していただくことができず、自院で治療しています。残念ながら4人の患者さんがお亡くなりになりました。無念でなりません。
最初に発症した人はA病棟がスタッフ、B病棟は患者さんでした。しかしB病棟の患者さんは長く入院中で、面会も制限しています。初めに発症した人が感染源とは言い切れません。
B病棟で陽性になったスタッフは全員が無症状でした。このウイルスは無症状者からも感染します。無症状感染者が一定割合で存在するなか、検査で見つけなければ、無症状者からの感染が当然起こります。
医療者は感染防御に注意を払っていても業務でウイルスに暴露する時間が長い。また感染力が強い変異株の市中感染が広がっており、日常生活でだれでも感染する可能性があります。
ですからいま重点的に、医療機関で頻回定期的な検査をやるのが非常に重要です。無症状者から入ってくることを考えると、最低1週間に1回以上の検査は絶対必要ではないでしょうか。1日でも早く感染者を捕まえることができれば感染拡大を防ぐことができます。
コロナ対応病棟で働く看護師=神戸市の東神戸病院(同病院提供)
自治体によっては医療機関も社会的検査の対象にしているところがあると聞きます。しかし神戸市は対象にしておらず、当院も検査できていませんでした。自治体によって差があるのはおかしい。全額国の負担によって、すみやかに全国で実施していただきたい。
医療機関でクラスターが起きると地域医療に影響します。当院も一般病床の一つを閉じてコロナ患者に対応しており、新規入院はすべて止めています。外来も縮小し、救急搬送の受け入れも、往診している患者さん以外は断っています。地域医療を守る観点からも検査は必要です。
クラスターが起きれば入院や診療を縮小せざるを得ず、医療機関は大幅な減収になります。国が対策を怠ってきたのにおかしな話です。国は減収補償をしっかり行うべきです。感染を収束させるために必要な検査費用は、必ずすべて、診療報酬および行政検査として認めていただきたい。
安心して社会的検査が受けられるよう、職員に陽性者が発見されて事業を縮小せざるを得なくなった場合の減収補償も、しっかり行ってほしいと考えます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月10日付掲載
医療者は感染防御に注意を払っていても業務でウイルスに暴露する時間が長い。また感染力が強い変異株の市中感染が広がっており、日常生活でだれでも感染する可能性。
無症状者から入ってくることを考えると、最低1週間に1回以上の検査は絶対必要。感染者を早く見つけると、感染拡大を抑えられる。
クラスター発生による医療や入院の縮小への減収補償。感染を収束させるための検査は診療報酬または行政検査で。
職員の陽性者発生で業務縮小の場合の減収補償も。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、医療機関や介護施設でのクラスター発生が後を絶ちません。神戸市の東神戸病院(166床、全日本民医連加盟)でも4月に発生、収束に全力をあげています。遠山治彦院長は痛恨の経験を踏まえ、「クラスターを防ぐためには、病院職員への頻回定期的なPCR検査で感染を早期に発見することが欠かせない」と訴えます。同院長に聞きました。
(内藤真己子)
とおやま・はるひこ 1961年香川県生まれ。神戸大学医学部卒。2017年から現職。
4月上旬、A病棟(仮称)で働く職員1人が発熱、翌日のPCR検査で陽性と分かりました。同じ病棟の患者・職員全員の約70人にPCR検査をしていくと、感染が患者さん7人に広がっていました。当院で入院患者の感染は初めてです。
10日後、別のB病棟(同)の入院患者さんが発熱しました。検査すると陽性でした。やはり同病棟の患者・職員全員に検査し、患者6人と職員3人が陽性と分かりました。二つの病棟間で職員や患者の接触はなく感染ルートは別だと考えられます。
病院職員のPCR検査で検体を採取する遠山院長=神戸市の東神戸病院(同病院提供)
3、4日に1回検査を続け、これまでに入院患者16人、職員8人の感染が確認されました。変異株検査を受けた人はすべて変異株です。当院はコロナ病床を届け出ていません。しかし病床逼迫(ひっぱく)で専門病院に転院していただくことができず、自院で治療しています。残念ながら4人の患者さんがお亡くなりになりました。無念でなりません。
最初に発症した人はA病棟がスタッフ、B病棟は患者さんでした。しかしB病棟の患者さんは長く入院中で、面会も制限しています。初めに発症した人が感染源とは言い切れません。
B病棟で陽性になったスタッフは全員が無症状でした。このウイルスは無症状者からも感染します。無症状感染者が一定割合で存在するなか、検査で見つけなければ、無症状者からの感染が当然起こります。
医療者は感染防御に注意を払っていても業務でウイルスに暴露する時間が長い。また感染力が強い変異株の市中感染が広がっており、日常生活でだれでも感染する可能性があります。
ですからいま重点的に、医療機関で頻回定期的な検査をやるのが非常に重要です。無症状者から入ってくることを考えると、最低1週間に1回以上の検査は絶対必要ではないでしょうか。1日でも早く感染者を捕まえることができれば感染拡大を防ぐことができます。
コロナ対応病棟で働く看護師=神戸市の東神戸病院(同病院提供)
自治体によっては医療機関も社会的検査の対象にしているところがあると聞きます。しかし神戸市は対象にしておらず、当院も検査できていませんでした。自治体によって差があるのはおかしい。全額国の負担によって、すみやかに全国で実施していただきたい。
医療機関でクラスターが起きると地域医療に影響します。当院も一般病床の一つを閉じてコロナ患者に対応しており、新規入院はすべて止めています。外来も縮小し、救急搬送の受け入れも、往診している患者さん以外は断っています。地域医療を守る観点からも検査は必要です。
クラスターが起きれば入院や診療を縮小せざるを得ず、医療機関は大幅な減収になります。国が対策を怠ってきたのにおかしな話です。国は減収補償をしっかり行うべきです。感染を収束させるために必要な検査費用は、必ずすべて、診療報酬および行政検査として認めていただきたい。
安心して社会的検査が受けられるよう、職員に陽性者が発見されて事業を縮小せざるを得なくなった場合の減収補償も、しっかり行ってほしいと考えます。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年5月10日付掲載
医療者は感染防御に注意を払っていても業務でウイルスに暴露する時間が長い。また感染力が強い変異株の市中感染が広がっており、日常生活でだれでも感染する可能性。
無症状者から入ってくることを考えると、最低1週間に1回以上の検査は絶対必要。感染者を早く見つけると、感染拡大を抑えられる。
クラスター発生による医療や入院の縮小への減収補償。感染を収束させるための検査は診療報酬または行政検査で。
職員の陽性者発生で業務縮小の場合の減収補償も。
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