シリーズ 原発の深層 第一部・原発マネー②&③ カラ工事の疑惑&一億ずつ頂いた
カラ工事の疑惑も
8月17日。ある訴訟に対する判決が福井地方裁判所でありました。訴訟は、県の事業に不正工事が含まれていたとして、福井県の西川一誠知事を相手どり、本人、元知事、工事関係者らに損害賠償を支払わせるよう求めたものです。
「本件訴えをいずれも却下する」。わずか20秒間の判決の言い渡しでした。原告の松本浩氏(72)=元教員、小浜市=は、静かに受け止めていました。
訴えの対象は、同県高浜町内の脇坂公園を造成するため県が行った「ふれあいの浜辺事業」。脇坂公園から北に2計の地点には関西電力の高浜原子力発電所があります。同原発は1974年から稼働しています。
「ふれあいの浜辺事業」の総事業費は45億円です。財源は県の一般会計でまかなわれましたが、国から原発立地自治体へ給付される電源3法交付金が含まれています。
訴え門前払い
同事業の残土は、高浜町の安土地区で公有水面の埋め立てに使われました。埋め立て工事は、同町の事業で、費用は約36億円。借入金の返済には、電源3法交付金と、県から交付される核燃料税をあてにしています。
福井地裁の却下理由は、松本氏らの訴えが、監査に必要な期間を過ぎて行われたものであるというものでした。訴えの内容には踏み込まない、いわゆる「門前払い」の判決です。
「国から県に支出される60億円の核燃料サイクル交付金をあてにしたものではないのか。45億円の『ふれあいの浜辺事業』のうち、私が調べたところ実態のないカラ工事が18カ所にわたり、その金額は推計16億円にものぼる。そのうちの十数億円が県の裏金になったのではないか」。松本氏らは、控訴することを決めました。
高浜町での不透明なカネの流れは、今に始まったことではありません。
覚書公開せず
78年のことです。高浜原発3、4号機の増設を計画していた関電は、町や漁業協同組合に建設協力金を出しました。金額は9億円。当時、町当局は町内の漁協へ3億円を超える金額を支出したと説明しました。しかし、町側は関電と交わした覚書の提示などの書類を公開しませんでした。
ところが、問題になったのは9億円だけではありませんでした。
「当時、助役をしていた森山栄治氏が落とした手帳には、関電から受け取った金額は9億円ではなく24億円と書いてあった」
町議会関係者は原発マネーをめぐる闇の存在を語りました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月2日付掲載
「一億ずつ頂いた」
原子力発電所が集中立地する福井県は、合計15基もの原子炉を抱えています。国から支給される電源3法交付金は年間約100億円(2009年度)に及びます。
ある日の県議会の後、日本共産党の佐藤正雄県議は自民党県議から、こう話しかけられました。
「私らには原発技術のことは分からない。どうやって、原発行政を判断するのかといえば、それは地域振興だ。地域振興がOKなら、原発もOKなんだよ」
実際、原発マネーは地域振興に役立ったでしょうか。
日本原子力発電(原電)の敦賀原発や日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」が立地する敦賀市の場合、電源3法交付金は1974年度~2010年度の累計で462億7000万円に上ります。
製造業は廃れ
敦賀市の山本貴美子(きよこ)日本共産党市議はいいます。「市は、交付金依存のハコモノ行政を続けてきました。一方で、地場産業の育成に力を入れず、ものづくりは廃れてきました」。79年から09年にかけて、市の製造業は、事業所数が半減したのです。
原発マネーに依存する人たちの考え方も、荒廃していきました。
麻痺する感覚
福井県に隣接する石川県の志賀町(しかまち)で88年12月、志賀原発1号機の建設が始まりました。その5年前の83年1月26日、同町で、当時の敦賀市長、高木孝一氏が原発の「先輩」として演説しました。
「原子力発電所は、一瞬を争う事故というのはないそうです。そのかわり、100年たってカタワ(障害者を侮辱した言葉)が生まれてくるやら、50年後に産んだ子どもが全部カタワになるやら、それは分かりませんよ。分かりませんけど、今の段階ではおやりになった方がよい、いつまでも心配する時代ではない」
原発マネーは、その推進者たちの人権感覚だけでなく、金銭感覚も麻痺させます。
高木氏は、この演説でこういうことも語っていました。
同市の気比(けひ)神社の修復費用を捻出するため、次の日に、北陸電力へ行って「1億円だけ寄付してくれ」と求めると明かしました。その上で、次のように述べました。
「この間、東京で動燃(現・日本原子力研究開発機構)、原電の二つをまわりまして1億ずつ、そりゃもう『分かりました』ということで、いただいて帰ったんです。こうして寄付してもらうわけなんです」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月3日付掲載
気比神社の修復費捻出のために北陸電力詣でをするってことって実際にやっているんですね。
100年、50年たって障がい者(放射能被害)が表れても、「それは知ったこっちゃない」って政治家の道義的姿勢が問われるんじゃないでしょうか。
本当に許されない事ですね。
カラ工事の疑惑も
8月17日。ある訴訟に対する判決が福井地方裁判所でありました。訴訟は、県の事業に不正工事が含まれていたとして、福井県の西川一誠知事を相手どり、本人、元知事、工事関係者らに損害賠償を支払わせるよう求めたものです。
「本件訴えをいずれも却下する」。わずか20秒間の判決の言い渡しでした。原告の松本浩氏(72)=元教員、小浜市=は、静かに受け止めていました。
訴えの対象は、同県高浜町内の脇坂公園を造成するため県が行った「ふれあいの浜辺事業」。脇坂公園から北に2計の地点には関西電力の高浜原子力発電所があります。同原発は1974年から稼働しています。
「ふれあいの浜辺事業」の総事業費は45億円です。財源は県の一般会計でまかなわれましたが、国から原発立地自治体へ給付される電源3法交付金が含まれています。
訴え門前払い
同事業の残土は、高浜町の安土地区で公有水面の埋め立てに使われました。埋め立て工事は、同町の事業で、費用は約36億円。借入金の返済には、電源3法交付金と、県から交付される核燃料税をあてにしています。
福井地裁の却下理由は、松本氏らの訴えが、監査に必要な期間を過ぎて行われたものであるというものでした。訴えの内容には踏み込まない、いわゆる「門前払い」の判決です。
「国から県に支出される60億円の核燃料サイクル交付金をあてにしたものではないのか。45億円の『ふれあいの浜辺事業』のうち、私が調べたところ実態のないカラ工事が18カ所にわたり、その金額は推計16億円にものぼる。そのうちの十数億円が県の裏金になったのではないか」。松本氏らは、控訴することを決めました。
高浜町での不透明なカネの流れは、今に始まったことではありません。
覚書公開せず
78年のことです。高浜原発3、4号機の増設を計画していた関電は、町や漁業協同組合に建設協力金を出しました。金額は9億円。当時、町当局は町内の漁協へ3億円を超える金額を支出したと説明しました。しかし、町側は関電と交わした覚書の提示などの書類を公開しませんでした。
ところが、問題になったのは9億円だけではありませんでした。
「当時、助役をしていた森山栄治氏が落とした手帳には、関電から受け取った金額は9億円ではなく24億円と書いてあった」
町議会関係者は原発マネーをめぐる闇の存在を語りました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月2日付掲載
「一億ずつ頂いた」
原子力発電所が集中立地する福井県は、合計15基もの原子炉を抱えています。国から支給される電源3法交付金は年間約100億円(2009年度)に及びます。
ある日の県議会の後、日本共産党の佐藤正雄県議は自民党県議から、こう話しかけられました。
「私らには原発技術のことは分からない。どうやって、原発行政を判断するのかといえば、それは地域振興だ。地域振興がOKなら、原発もOKなんだよ」
実際、原発マネーは地域振興に役立ったでしょうか。
日本原子力発電(原電)の敦賀原発や日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」が立地する敦賀市の場合、電源3法交付金は1974年度~2010年度の累計で462億7000万円に上ります。
製造業は廃れ
敦賀市の山本貴美子(きよこ)日本共産党市議はいいます。「市は、交付金依存のハコモノ行政を続けてきました。一方で、地場産業の育成に力を入れず、ものづくりは廃れてきました」。79年から09年にかけて、市の製造業は、事業所数が半減したのです。
原発マネーに依存する人たちの考え方も、荒廃していきました。
麻痺する感覚
福井県に隣接する石川県の志賀町(しかまち)で88年12月、志賀原発1号機の建設が始まりました。その5年前の83年1月26日、同町で、当時の敦賀市長、高木孝一氏が原発の「先輩」として演説しました。
「原子力発電所は、一瞬を争う事故というのはないそうです。そのかわり、100年たってカタワ(障害者を侮辱した言葉)が生まれてくるやら、50年後に産んだ子どもが全部カタワになるやら、それは分かりませんよ。分かりませんけど、今の段階ではおやりになった方がよい、いつまでも心配する時代ではない」
原発マネーは、その推進者たちの人権感覚だけでなく、金銭感覚も麻痺させます。
高木氏は、この演説でこういうことも語っていました。
同市の気比(けひ)神社の修復費用を捻出するため、次の日に、北陸電力へ行って「1億円だけ寄付してくれ」と求めると明かしました。その上で、次のように述べました。
「この間、東京で動燃(現・日本原子力研究開発機構)、原電の二つをまわりまして1億ずつ、そりゃもう『分かりました』ということで、いただいて帰ったんです。こうして寄付してもらうわけなんです」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年9月3日付掲載
気比神社の修復費捻出のために北陸電力詣でをするってことって実際にやっているんですね。
100年、50年たって障がい者(放射能被害)が表れても、「それは知ったこっちゃない」って政治家の道義的姿勢が問われるんじゃないでしょうか。
本当に許されない事ですね。